『復興の魁は料理にあり
滋養第一の料理ははち巻にある』
『久しく忘れていた諧謔が、牟田の心に蘇って来た。すっかり焼払われた帝都の真ん中に小屋を建て、褌ひとつにはち巻をした男が住んでいようとは、思いもかけない事であった。殊にそれがたべもの屋だ。たくまないおかしさが、震災後の不景気な心の中にひそかに忍び込んで来た。』
水上滝太郎『銀座復興』より
関東大震災で被災し更地になった銀座で、なお前向きに生きる人々のお話。
滝太郎先生御自身も関東大震災を経験されており、実体験に基づいた震災に関わるお話を幾つか書かれています。この『銀座復興』もその内の一つです。
主人公の牟田は更地になった銀座を歩き、鉄骨ばかりが残った街で洗濯する女を見掛けます。それは震災後第一番に発見した住民でした。夢のように見ていると、亜鉛と葦簀で出来た小屋の中から一人の男が出て来る。
その男が貼り出した紙に書かれていたのが、
『復興の魁は料理にあり
滋養第一の料理ははち巻にある』
という文句。
荒れた銀座でほったて小屋から再開した料理屋を中心として、復興に向けて歩み出す物語です。
人間の強さ、逞しさを感じるお話。
そして『もろもろの多忙と退屈と繁昌と不景気と文化とごまかしと悪徳と、雑多なものを平気で呑み込んで、消化して、排泄した』銀座という街の、更地になった後の様子が誠実に描かれています。
なお、書かれた時期が時期なのでお国万歳な描写もあるのですが、そこはあくまでも「当時の描写」として受け取っております。
今回作ったのは、作中に出て来て客を楽しませているさしみ。それから玄米・葱・茗荷をすし酢で和えたものです。
さしみの難しさよ。
手早くセンス良く……難しい。
玄米は茹でて水気を切り、みじん切りにした葱と茗荷と混ぜ合わせ、すし酢で和えました。茹でた玄米はぷちぷちした食感。酢飯というより穀物サラダ寄りかもしれません。
割った玄米ぽんせんに玄米をのせて食べて戴きます。
瓦礫が少しずつ無くなって復興に向かうイメージ。