『僕の一日なんておよそ所在ないものである。本を読んだり散歩をしたりしているうちに、日が暮れてしまう。それでも散歩の途中で、野菊の咲いているのを見かけたりすると、ほっとして重荷の下りたような気持ちになる。その可憐な風情が僕に、「お前も生きて行け。」と囁いてくれるのである。』


小山清『落穂拾い』より


ともすれば誰とも言葉を交わさずに一日を終えてしまう『僕』と、その周囲の人々の、特別ではない日々の暮らしの風景。
素朴で善良で、何だかホッとするお話でした。
小山先生の作品を他にも幾つか拝読したのですが、仄かな灯りのようなお話を書かれる方なのですね。
たまたま書店で手に取ったのですが、良い出会いでした。


今回作ったのは、ほうれん草入りの味噌煮込み月見うどん、焼き芋、式部菜と菊のサラダ。

作中に登場する買い物リストを見て、これは味噌味の月見うどんかなと。

家庭で石焼き芋は無謀だったので、お芋はアルミホイルで巻いてオーブンで焼きました。 

それと、このお話に素朴な彩りを添える古本屋の少女のイメージから、式部菜を。
掘り出し物を見付けるとかえって落ち着かず、贈り物に耳掻きと爪切りを選ぶ彼女なら、果物やお菓子よりは色の豊かな野菜かな、と。
加えて野菊とはいきませんでしたが、まわりに菊の花びらを散らしてみました。