『真昼である。特別急行列車は満員のまま全速力で馳けてゐた。沿線の小駅は石のやうに黙殺された。』
横光利一『頭ならびに腹』よりこの冒頭の一文に引き込まれ、自分にしては異例の早さで読み終わり、何度も読み返した作品です。
列車は『全速力で馳けてゐた』、小駅は『小石のやうに』『黙殺された』。ここまで鮮やかな比喩を見たのは初めてでした。それにこの疾走感。横光利一先生の作品では本作が一番好きです。
内容は、列車が事故で止まってしまい、そのまま直るのを待つかUターンする列車に乗るか、さてどうする。というお話です。どちらかというと文章の妙を楽しむ作品と思っております。
今回は『頭』と『腹』の対比を目指して作ってみました。
まずは腹。
肥大な紳士を差していると思うのですが、不思議な魅力を持った腹……としばし悩み、これはフォアグラかなと。存在自体に謎の説得力を感じる。
片面に小麦粉をまぶしてソテーしたのですが、外はカリッと中はふわふわに焼けました。
周りの豆類は彼に追随した乗客達のつもりです。
そして頭。
子僧というと青物かな、ということできゅうりのヘタに鉢巻ならぬ薄切りきゅうりを巻いてみました。
そして周囲に梅、桜、牡丹、桃を……梅は西瓜の牡丹に隠れてしまいました。
ソースはバルサミコソースと、バルサミコヨーグルトソースの二種類。
頭側には疾走感を、腹側には停滞をイメージして描いてみました。
果物とフォアグラ、結構合うのです。
バルサミコはそのどちらとも相性が良いのです。
歌劇のようなテンポが表現出来ないかなぁと試行錯誤してみました。