こ、こ、ここの善哉はなんで、二、二、二杯ずつ持って来よるか知ってるか、知らんやろ。こら昔何とか大夫ちう浄瑠璃のお師匠はんがひらいた店でな、一杯山盛にするより、ちょっとずつ二杯にする方が沢山はいってるように見えるやろ、そこをうまいこと考えよったのや

一人より女夫の方がええいうことでっしゃろ』


『ぽんと襟を突き上げると肩が大きく揺れた。蝶子はめっきり肥えて、そこの座蒲団が尻にかくれるくらいであった


織田作之助『夫婦善哉』より


しっかり者の蝶子と甲斐性なしの柳吉、内縁夫婦の物語。
商いを始めては失敗し、成功したかと思えば亭主がやらかし、しかし挫けず次から次へと商売を転々とする。何度素で本に突っ込みを入れそうになったことか。面白かったです。

実在の地名やお店や数字を出すのは、「曖昧な思想や信ずるに足りない体系に代るものとして、これだけは信ずるに足る具体性だと思つてやつてゐるんですよ(『世相』より)」ということなのだそうな。




ひっそり作り直してみました。
二人の思い出である某老舗カレー屋さん風のライスカレー、一口サイズですが夫婦善哉はそのままに、実家の稼業の天婦羅、それに柳吉が煮ていた山椒昆布を添えてみました。
賑やかさがそれらしく見えたら良いなぁと思っております。