カンゾウの花-3  



 部屋の障子の向こうから聞こえたその「しわがれ声」の主は、聞き覚えのある

部屋長」のような気がした。

 

 「???」

 

しばしの沈黙の後、思い切って「失礼しまぁす」と言って、障子戸を静かに開けた。


 蚊取線香の煙と匂いが充満した「蚊帳」の奥に、肩幅の広い男が背中を丸めて

座り、身体をゆっくり前後に揺らしている。


 「あ、あのぅ、○○先生は・・・・?」


 「部屋長」のように見えるその男は、こちらに背を向けたまま、右手で「蚊帳」の中

に入れというように合図して来た。。。


 Snoopyは一瞬、躊躇したが、えぇ~い、ままよ!)とばかり、意を決して「蚊帳」の

裾を捲くり上げた。


 その時、奥の「水屋」の方で、「ゴトゴト」という物音がして、一陣の生温かい「」が

吹き込むと、「線香」の煙が自分の方に吹き寄せて来た。Snoopyは思わず目を伏せ


 「ゴホゴホ!」 と、咳き込んでしまった。 

 (この時の「」は、蚊取線香のものではなかったのかも知れない・・・・?)

 

 ゆっくりと「」を上げると、何時の間にか「蚊帳」の中には誰も居ない。。。

 何だか、いやな展開になって来たな、とSnoopy思った。


 ふぃに、天井から吊り下げられた電球の灯りが消えた。


 「マ、マジかよ!!」 そう思う間もなく、何処からか、啜り泣くような

が聞こえて来た・・・・


 早くこの場から逃れようとして、立ち上がろうとしたが、「」がガクガクして力が

入らない。背中に「悪寒」が走り抜け、腕に鳥肌が立って行く。

 Snoopyの身体は「金縛り」にあったように動かなくなってしまった。。。


 

   

  ・・・・「本物」の「怪談」が始まりそうであった・・・・






            掲載写真はみなっちの海日記より