部屋の障子の向こうから聞こえたその「しわがれ声」の主は、聞き覚えのある
「部屋長」のような気がした。
「???」
しばしの沈黙の後、思い切って「失礼しまぁす」と言って、障子戸を静かに開けた。
蚊取線香の煙と匂いが充満した「蚊帳」の奥に、肩幅の広い男が背中を丸めて
座り、身体をゆっくり前後に揺らしている。
「あ、あのぅ、○○先生は・・・・?」
「部屋長」のように見えるその男は、こちらに背を向けたまま、右手で「蚊帳」の中
に入れというように合図して来た。。。
Snoopyは一瞬、躊躇したが、(えぇ~い、ままよ!)とばかり、意を決して「蚊帳」の
裾を捲くり上げた。
その時、奥の「水屋」の方で、「ゴトゴト」という物音がして、一陣の生温かい「風」が
吹き込むと、「線香」の煙が自分の方に吹き寄せて来た。Snoopyは思わず目を伏せ
「ゴホゴホ!」 と、咳き込んでしまった。
(この時の「煙」は、蚊取線香のものではなかったのかも知れない・・・・?)
ゆっくりと「顔」を上げると、何時の間にか「蚊帳」の中には誰も居ない。。。
何だか、いやな展開になって来たな、とSnoopy思った。
ふぃに、天井から吊り下げられた電球の灯りが消えた。
「マ、マジかよ!!」 そう思う間もなく、何処からか、啜り泣くような「声」
が聞こえて来た・・・・
早くこの場から逃れようとして、立ち上がろうとしたが、「膝」がガクガクして力が
入らない。背中に「悪寒」が走り抜け、腕に鳥肌が立って行く。
Snoopyの身体は「金縛り」にあったように動かなくなってしまった。。。
・・・・「本物」の「怪談」が始まりそうであった・・・・
掲載写真はみなっちの海日記より