先日見た出来事。


小さい男の子を連れた母親と、パンチパーマのおばあさんが駅のホームで話していた。

会話内容からして、息子夫婦のところに姑が久しぶりに尋ねてきたらしい。

子供は照れているのか母親のかげに隠れ、ドラゴンボールの悟空のぬいぐるみをいじってばかりで、おばあさんが話しかけても恥ずかしそうにするだけだった。

そしたらおばあさん、何を思ったか突然シャドウボクシングみたいな動きをしつつ、子供のまわりを軽快に回りながら、

「オッス!オラババア!よろしくな!」

と叫んだ。
その瞬間、私の横でベンチに座っていたリーマンが勢いよく鼻からコーヒーを吹き、目の前に置いてあったおばあさんのトランクをコーヒーと鼻水まみれにした。

信号無視


交通量の少ない交差点で赤信号の横断歩道を渡ろうとしたら、園児を連れて散歩中の保母さん(結構かわいい)に、

「影響を与えるので、子供たちが見ている前で信号無視しないでください」

って言われたとき、ちょっと時間に追われるビジネスマンぶって子供たちに、

「ボク達、ルールを守ってるだけじゃこの世界は生きていけないんだぜ」

ってかっこつけて去ろうとしたら軽トラにひかれた。


取材班と老人


取材班がチベットの奥地、秘境中の秘境とされる地をジープで通りかかると、寝ころびながら地面に耳をつけている老人の姿があった。

「あれが今回取材にきた『大地と語る老人』に違いありません」

「ちょうどいい。すぐ撮影準備だ」

さっそく取材班はカメラを組み立てるや、老人にマイクを向けた。

「ご老人。何か聞こえるのでしょうか?」

やせこけた老人は黒く鋭く輝く瞳で彼等を見つめると、こう答えた。

「車じゃ。青い車に男がひとり、女が二人。アメリカ人じゃろう。西へ向かっておる。ナンバーは・・・」

取材班はざわめいた。

「信じられない!地面の音でそれだけ分かるなんて」

「神秘だ!これぞ、文明と共に失われてしまった人間の神秘の力なのでしょうか」

老人は続けた。

「・・・が、わしをひいていきよった。早く警察と救急車を呼んでくれ」