もうとってもおもしろくて、勉強になったので、ブログでも。
Globis 知見録
エステー会長 鈴木喬氏 「社長の仕事—危機の時代のリーダーシップ」
やはり稀代の経営者は信念や哲学、マーケティングセンスとユーモアを兼ね備えているなぁ
もう一発で大ファンになった。
[以下、本文より引用させて頂きます]
僕のところの商売は、まぁ、年がら年中危機ですな。政府なんか何も助けてくれない。アベノミクスなんか関係ない。だから打たれ強いというか、打たれ弱いやつは皆、いなくなっちゃったんですね(笑)。どうってことないです。多少のことが起ころうと命までは取られない。そんな感じでございます。
「ドライペット」。つくった当初は「空気から水をとってどうすんだ」と言われて、出荷よりも返品のほうが多かった。ぜんぜん売れなかったんです。でも今では水が貯まっていくのが確認できるから嬉しいと言われる。世の中、不思議なもんですな。
まぁ、なんでも言ってみるもんですな。皆さん、下のやつがなんと言ったって、社長はとにかく無理難題を言わないと駄目だ。無理難題を言わない社長というのはたいしたことがない。
63にしてやっと社長になって、そこから「全社員がらがらぽんだ。皆殺しだ」なんて言っていました。そんなことを言う人間だから、昔から皆に「あの野郎だけは社長にするな」と言われていたんです。
そもそも会社というのは何をするものなのか。「売上、利益、マーケットシェア、そして株価も高めて」って…、それだけではやってられませんわ。ちゃんちゃら可笑しい。まずは「固定客の創造と維持・拡大」ですよ。一見さんだけを相手に商売をいくら廻しても、そんなの回転ビジネスみたいなものです。かったるくてやってられない。
それよりも、まずは新製品を出して一見さんを虜にする。そうするとその人が「これがいいわ」と宣伝してくれます。
皆に反対されたり、世間様に「絶対に出来ない」と言われるようなことがあれば、それを絶対にやってみせる。役員会で全員に反対されたりすると、もう嬉しくなって進めるんです。逆に全員賛成なら止める。
どこにでも行って、土下座も厭いません。皆さん、これから独立して何かをやろうと思ったら、営業力がないと駄目。営業力のない社長なんて大抵ゴミみたいに弾かれちゃうね
社員にも「社長、今朝言ったことと3時間後に言ったことが違います」と言われるから、「そりゃそうだ。お前、俺に騙されるようだったら、世間に出たら全員から騙される。そんなじゃ、やっていけんぞ」と言うんですよ。
社員に無理難題を言う訳です。
「脱臭炭」のときも、「いいか、2年後に発売するぞ」と言いました。「炭で一番良いのはなんだ?」と聞いたら「紀州の備長炭です」と言うから、「ならそれをつくれ」と。ただ、「それだけなら誰にでも出来る。使っていくうちにだんだん気化して、最後は炭の形となるようにするんだ。最後に落ちて、“カランコロン”と備長炭の音がするようにしろ」と。無理難題ですが、こっちは知ったことじゃないからね(会場笑)。「2年経って出来ていなかったら君は要らないよ」と言ったら死に物狂いでつくっていました。
それで2年後に出来るんですな。よく考えずにものを言うことが大事です(会場笑)。
トップが考えていたら情が移って実行出来ません。社長は世間様の期待を一身に背負って、会社に戻ったら無理難題を押し付け、そして解決をしていく。こういうことをやらなきゃ駄目です。それが出来ないなら辞めたら良い。
たとえば「消臭力」。「力があるような姿形にするんだ。ごっついやつをつくれ」ってね。「よく効くやつをつくるんだよ」と。だから「(消臭効力は当社比で)200%」と書いてある(会場笑)。とにかくそういう風に言うんです。中身は誰かが考えますから。
「社長とは何か」、「社長業とは何か」。社長業とは、要するに火消しの棟梁みたいなものです。「火事はどこだい、牛込だい」って言って、半鐘鳴らしてすっ飛んで来るでしょ?そして最終防御ラインの屋根に昇って纏(まとい)を持つ。纏で火を払う訳です。となると、その人に先見力がないと火にまかれて死んじゃう。社長も同じで、先見力を持っていないと駄目。それで火消し人足の連中が龍吐水をかける訳ですよ。ただ、昔の龍吐水なんてちょろこいからね。人足連中が「面白くねえから手抜きして棟梁蒸し焼きにしてやるか」なんて考えるようになったらたまったもんじゃない。だからリーダーシップも必要です。「オヤジのためなら火の中・水の中」と言わせる人身掌握力がいる。
度胸が必要ですな。そもそも「止める」「切る」「撤退する」というような、嫌なことを決断するのが社長の商売ですよ。良いことは誰にでも出来る。そこを勘違いする人が多いね。
先日、ある会社社長に聞いたら、「支店長たちと毎晩一緒に、朝まで酒を飲んでる」と言うんですね。だから「そりゃ駄目だ」と。「そういうことをやるから次の日によたるんだ。朝会った部下に“お前気に入らねえから、今日からお家帰って寝ててくれ”ぐらいのことが言えなきゃ社長じゃないぜ」と僕は言いました。
じゃあ、そういうことを言えるようにするにはどうするか。遠交近攻です。私は新入社員を含む下の連中と付き合うんですよ。どこかのセクションに行けば、昼飯は必ず彼らと食べる。それで上の連中は皆「油断も隙もならねえ」と思って警戒します。そのぐらいビクビクさせると良いね。
震災直後は社員も皆、「社長、どうしましょう」という状態だった。こんなときはハッタリをかまさなきゃ。危機の時代のリーダーシップはハッタリでいくんです。
それで「こういうことはいくらでもあるんだ」と言いました。よく考えたら僕は10歳から働いているんだよね。戦争で家が焼け、家で営んでいた雑貨屋も無くなった。でも親父が生命力のある人で、焼け跡から1~2畳ぶんの掘っ立て小屋をつくった。で、一番下の弟だった僕も親父を手伝って戸板で露天商をやっていたんです。ポマードや石鹸やチリ紙を焼け野原で10歳から売っていました。こんなことをいうと怒られちゃうけれども、「あのときを思えばたいしたことない」と。あのときは日本中が焼けて三百数十万亡くなったのに、それでも日本は再建したんだから。
震災直後はそんな風にぶちかました。「駄目ならまた潰してゼロからやればいいんだ。皆はそのあいだ、どこかに務めてくれ。また呼ぶから」って。社員からすればたまったもんじゃないね。「え!?」っていう感じだったけれども、だいたいなんとかなるもんだ。なんとかするんだよ。
だけど、世の中は上手くしたもので、大抵は上手くいく。思い切り飛ばしてりゃ本当に上手くいくんだ。上手くしてみせるんだ。
NHKの特番で彼が社長を脅かしているのを見て、「あいつをとろう」と思いました。ただ、彼のことを調べてみると、もうどこかの外資に決まっていた。それで彼を一度蕎麦屋に呼び出したんです。何故蕎麦屋かというと、アテっていうか、オードブル一番少ないんだよ(会場笑)。で、そこで死ぬほど酒を飲ました。それで私も次の日死ぬかと思ったけど(会場笑)。
とにかく、「こいつをちょろまかしてやれ」と思ってね。「いいかお前、外資へ行ったら君の給料は2倍になるけど鈴木喬がいない。エステーに来たら鈴木喬はいるが給料は半分になる。どっちをとるのか」って。「もちろんエステーに行きます」ってことで(会場笑)
エステーのルールはサッカーと同じなんですよ。イエローカード2枚で退場。
「それならつくっちゃえ」と。全員に反対されましたが、私は昔から趣味で色々なものをつくっていたんです。見様見真似で鉱石ラジオから真空管ラジオから、なんでもつくっていました。ポマードも石鹸も全部、自分で作った。だからエレクトロニクス担当者を集めて、「そんなもの出来っこない」と皆が言っていましたが、「観念しろ!つくれ」ってね。
だから心意気というのはなかなか金にならないね。私は調子が良過ぎてどうも算盤玉を忘れてしまうけれども、「まあ、しょうがねえなあ」と。ただ、おかげさまで全体の売上は9%伸びました。工場がないから利益は吹っ飛んだけどね。どうやって売ったのか自分たちでもよく分からない。私は社員に「石でも木でも売れ」といつも言っているんだけど、皆、本当に石でも木でも売っちゃったんじゃないかと思って心配になる(会場笑)。
とにかく今は「空気をかえよう」ということで途方もないことをやっています。本当にマンガみたいなことをやっている。ただ、すぐ算盤玉が合わなくなるんですね。どうも、上手く行かないね。だけどしょうがない。企業は騒いでいないと、なにかこう、駄目になっちゃう。だから皆さんみたいに志を持ってやっています。
皆、俺んとこ来ない?給料は半値だけど(会場笑)。
とにかくそういうことで、日本の社会の空気まで変えたいというのが我々の志です。「淀んだ空気を全部変えてやる」ってね。まあ、今日のお話は“ほら吹き喬”のほら話ですから、皆、このあと、ちょっとは私のことを叩いてよ?以上!
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なんだろう、この爽快感。
表現できないエネルギーを頂ける感じは。
ゼロから事業をやっているんだから、
これくらい信念を持ってチャレンジしなきゃ。
近い未来必ずお会いする。
まだお会いしたこと無いけれど、
鈴木会長、(この記事を上げてくださったGLOBISの方々)、ありがとうございます!