早いもので、もう12月ですねニコニコ

 

今年の映画鑑賞を振り返ってみて、

ぶっちぎりで強烈な印象を残した映画がありましたので

ご紹介したいと思います。

 

「イェルマ」(2017年)

(池袋シネ・リーブルで2019年1月リバイバル上映予定)

 

本作は、英国の傑作舞台を撮影して映画館のスクリーンで上映するというプロジェクト、

「ナショナル・シアター・ライブ」の2018年度のラインナップの一つです。

 

 

このプロジェクト、シェイクスピア原作など古典的なものが多く、
傑作揃いでほぼハズレがありません。

所用で立ち寄った日本橋で、なんの身構えもせずに観てしまったんです。

 

 

確かに、夫婦のあり方と、不妊問題に鋭く切り込んだ傑作でした。

が、あまりに凄すぎて、鑑賞後に夕食もとれず、

夫婦のことを必死になって考えてしまいましたよ・・・ガーンそれくらい強烈でした。

 

 

 

あらすじです。一組のカップルが結婚することから始まります。

妻は新聞記者で、キャリアウーマン。登場時の年齢は30代半ば。

夫はそこそこ成功しているビジネスマン、出張が多く多忙。おそらく妻より年上。

 

2人ともキャリアもパートナーも手に入れ、順風満帆に見えるのですが、

妻がそろそろ子供が欲しいと考え出したときから、歯車が狂い始めます。

興味がある方は、是非とも劇場で観てほしいのですが、

怖くて観に行けないという人向けに

以下は完全にネタバレです。

 


 

新婚で幸せいっぱいの夫婦はゆるーくタイミング法からスタートします。

夫が多忙でタイミングがなかなかとれず、妻は徐々にストレスを溜めだします。

 

妻の姉は夫が浮気したと愚痴っているのに、なぜか妊娠したり、

なぜか元カレが同じ職場に転職してきたり、夫の消極的な態度にイラついたり、

周りの環境も含め、暗雲が立ち込めだします。

 

中盤、妻の強い要望もあり、夫は腹をくくって不妊治療に全面協力することになります。

検査をうけますが、夫婦ともに異常は見つからず。

なのに、タイミングを何回繰り返しても授かりません。ついに体外受精に踏み切ります。

 

(多分ここにいたるまでに数年経過、妻はアラフォーと推測)

 


体外受精も色々ありますが、映画の中の表現を見る限り、

この夫婦が選択したのは薬やサプリメントをガンガン使用した高刺激法でした。

1回の採卵と培養で下手すると100~200万は飛ぶ、そんな世界。

それなのに、全く結果は出ません。

 

 

 

薬の副作用で体調不良になり、妻はベッドで寝たきりに。

精神的に追い詰められていきます。

それでも子供欲しさに不妊治療をやめられない妻、それを止められない夫。
 

 

 

妻は、以前元カレと交際中に妊娠したことがあったため、

彼となら子供ができたのに!とまで思い詰めてしまう始末。

精神的に完全に狂ってしまい、酒はバカバカ飲むわ、

フェスで見ず知らずの男性と関係を持って妊娠しようとするわ、

完全に言動がおかしくなっていきます。

 

 


最後、夫婦関係の破たんがやってきます。

不妊治療でお金を使い果たし、家は売却。夫は妻のもとを去るときに、言います。

 

「僕は君さえいてくれればよかったんだ!」

「居もしない子供のことばかり追いかけて・・・!」

 

このセリフが私にはもう辛くて辛くて。

夫は始めから、子供はいてもいなくても妻がいればいいというスタンスだった。

妻が子供を諦めて二人で生きていく選択ができれば、夫もキャリアも家もすべて失わずに済んだ。

でも、妻が子供が欲しいばかりに思い詰めてしまう気持ちも痛いほど理解できてしまう。

 

 

もう胸が痛すぎて、上演後はフラフラでしたよ。

この舞台の原作、なんと初演は1934年。こんな昔から不妊に悩んでいる人がいたのですね・・・

古い原作を掘り起こして、現代風にアレンジした演出家の手腕も素晴らしいですが、

妻役のビリー・ハイパーの鬼気迫る演技が凄かった。

 

 

映画を観た後に、ふと思い出したのは京都の龍安寺の蹲(つくばい)に刻まれた言葉。

「吾唯知足」われ、ただ足るを知る

 

ざっくりで言うと、欲しがりにならず満足する心を持ちなさいという意味。

実践するのはとてつもなく難しいんですけどね。

 

尻切れトンボになっちゃいましたが、今年度の締めくくりでマイナー映画のご紹介でした。