午後4時。
右手でキーボードを叩きながら、私の膝の上にある理佐の頭を一定のペースで撫でる。
ちらっと左下に目をやると、理佐はいつの間にか眠っていた。
どおりで静かなわけだ。
綺麗な寝顔をしばらく眺める。
出かける様子もないのに、理佐の首には私が去年プレゼントしたチョーカーがついていた。
理佐の白い首にチョーカーの赤色がよく映えている。
赤を選んだ私、なかなかセンスあるなー、とか自画自賛する。
理佐が眠っているのを確認し、撫でるのを辞めて、両手を使って作業をし始めた。
出張から帰ってきたら、山ほど仕事が溜まっていた。
資料の統計くらい、誰か代わりにやっておいてくれればいいのになぁ。
いや、とりあえず集中、集中!と、自分に言い聞かせて黙々と作業を進めていると、突然左手に痛みが走った。
「痛っ」
見ると、理佐がこっちを睨んで私の腕を噛んでいた。
「痛いよ、理佐。」
「私の事ほっとくのが悪い。」
「でも両手使った方が早く終わるから、、、ね?」
「、、、でも結局長いじゃん。」
「夜までには終わるから。」
「、、、じゃあ、、夜期待してもいいの?」
「んー、わかった。いいよ。その代わり腕噛むの終わりにして。」
しょうがないなぁ、と言わんばかりの顔で腕を離される。
キーボードに手を伸ばすと、携帯が鳴った。
開くと、職場の後輩からのメールだった。
「だれから?」
「ひかる。」
「また、その子?」
「仕事の話だから。」
「私とその子、どっちが好き?」
「そりゃ理佐に決まってるでしょ。」
「ほんとに?」
「なんで疑うの」
「だって、出張の時同じ部屋に泊まったでしょ?」
「泊まったけど、何もしてないよ。」
「怪しい。」
「ホントだってば」
「でも、そのひかるちゃんって子は由依のこと好きかもしれないじゃん」
「それは無い。」
「なんでよ。ていうか、その子とイチャイチャしてたから仕事溜まったんじゃないの?」
「違うよ。、、、って痛っ!」
今度は首に痛みが走る。
「由依は私の彼女なんだからね」
「そうだよ、私は理佐が1番好きなんだから。でも、目立つところに跡つけないでね。」
「じゃあ、チューして。」
これが目当てか、、、。
理佐は、私とひかるの間には何も無いことを知っていながら、私を困らせようとしてわざとそういうことを言ってくる。
しかし、上目遣いで我儘を言う理佐に断れる訳もなく、理佐の後頭部を支えながら、唇を重ねた。
私の服の袖をぎゅっと握りながら、目を瞑って私を受け止める理佐が可愛くて仕方がない。
ずっとこうしていたいが、はっと仕事のことを思い出し、唇を離した。
「もう、終わり?」
頬を赤く染め、眉を八の字にして私を見つめてくる。
私もそんなチョロくないんだぞ。
「お仕事終わらせないと、、。メールの返信もしないとだし。」
「結局ひかるちゃんじゃん。」
ほっぺを膨らませている理佐。
「だからひかるとは何もないって。」
「いいもん。私だって他の人と遊ぶも〜ん。」
すると、理佐はおもむろに立ち上がり身支度を始めた。
「どこ行くの。」
理佐の口から出てきた住所は、近所の飲み屋街だった。
また私を困らせるために、危険なところに行こうとしているのだ。
「はぁ、、、。こんな時間からそんなところ行ったら悪い人に連れてかれちゃうよ。理佐可愛いから、いっぱい寄ってきちゃう。」
「由依が助けてくれるでしょ〜?」
「そんな、私だってスーパーヒーローじゃないんだから。どこでも助けに行けるわけじゃないんだからね。男なんて所詮、ヤリモク、、、、」
って、もう居ないし。
誰も居なくなった部屋を見渡し、ため息をつく。
まぁ、こっちの方が集中出来るか。
一旦彼女のことは頭の隅に置いて、再び仕事に取り掛かった。
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