藤吉side
古ぼけたギターを抱えて、携帯とにらめっこをしていた。
書いてあるとおりに押さえてるつもりなんだけど、気持ち悪い音が鳴る。
次の音も、その次の音も、同じように不協和音がなり続ける。
何回見直しても、ちゃんと正しく押さえてるのに。
「どうしたの、それ」
換気扇の下でタバコをふかしていた由依が、襖の隙間から、こちらを覗いていた。
「リサイクルショップで3000円だったから買った。」
「へー、クラシックか。いいね」
「うん、?よくわかんないけど」
壁に寄りかかりながら、由依は白い煙を吐いた。
「あ、いいよ、気にしないで弾いて。私は夏鈴のこと見てたいだけだから。」
「ん。」
もう一度、Gと書かれたコードを押さえて弦を弾いてみたが、さっきと同じような音が鳴った。
「チューニングが違うんじゃない?」
「チューニング、、?」
「ちょっと6弦から順番に弾いてみて。」
言われた通りに、太い弦から順番に鳴らしていった。
「2弦がちがうね。」
由依はそう言うと、煙草を口に咥えて、私の横に座った。
「ちょっと貸してごらん。」
由依にギターを渡すと、由依は慣れた手つきで、弦を鳴らしながらペグを緩めていった。
「2弦はCじゃなくてB。1個高かったね。」
由依は私にギターを返すと、咥えていた煙草を口から外し、また煙を上に向かって吐いた。
さっきのGのコードを弾いてみると、綺麗な音が鳴った。
「綺麗な音鳴った!ありがと。」
由依は柔らかい笑顔で私を見ていた。
次の音も、その次の音も、綺麗に鳴った。
続けて弾こうとしたけど、指が思ったように速く動かなくて、躓いてしまう。
「押さえ方ってこれであってる?」
「ん?、、あー、もしかしたらそこは中指の方が次に繋げやすいかもね。」
「中指、、、、こう?」
「ああ、そっちじゃなくてね、、、」
由依はよいしょ、と言って立ち上がると、私の後ろに周って座った。
「ちょっと、これ持ってて」
と、吸いかけの煙草を渡された。
「ここ薬指で押さえちゃうと、下が押さえにくいでしょ?」
後ろから由依の手が伸びてきて、私の手を包み込んで、指を正しい位置に持っていった。
「中指で押さえると次の時にいちいち離さなくても指足すだけで済むよ。」
「なるほど。」
「なんの曲弾くの?」
「オーバードライブ」
「ジュディマリ?」
「うん。この曲が1番好き。」
「いい趣味してんね」
「、、、そう?」
嬉しかった。
また少し、由依に近づけた気がした。
肩に心地よい重みが乗る。
由依が私の肩に顎をのせてきた。
由依はドライに見られがちだけど、よく私の肩に顔をうずめたり、甘えん坊なところもある。
煙草の匂いが漂う。
「由依ってなんで煙草吸うの?」
「やめてほしい?」
「ううん。普通に気になった。」
「んー、美味しいから。」
「煙なのに?」
「煙自体が美味しいんじゃないんだよ笑」
「ふーん」
右手に持った由依の吸いかけの煙草。
興味本位で、口に当てて息を吸い込んだ。
「すぅっ、、、けほっけほっ」
喉の奥がイガイガするような、おいしいなんて到底思えなかった。
「あ、こら。」
手首を掴まれ、煙草を顔から離される。
「未成年なんだから。体に悪いからやめなさい。」
呆れたように、私の手をテーブルの上の灰皿まで引っ張り、火を消してしまった。
別にもっと吸いたかったわけじゃないけど、ちょっと悔しくて反発してみた。
「由依の体にもわるいでしょー。」
「私は大人だから吸いたきゃ吸っていいんですー。」
「それにおいしくなかった。」
「まだまだおこちゃまなんだよ。」
「おこちゃまじゃない、、、、。」
反発したつもりが、もっとからかわれてしまった。
拗ねていると、
「ほら、オーバードライブ弾けるようにするんでしょ。」
と、私の後ろから回した手で、コンコンとギターを叩いた。
またギターのネックで私の手と、由依の手が重なり合う。
私の右側から、私の左手を覗き込む由依。
「ここは中指ね。」
まだ私拗ねてるんだからね。
急に由依の方に顔を向けてみた。
「おぉ。、、、ん?」
由依は少し驚いていたものの、また直ぐに余裕そうな顔に戻った。
思ったよりも近くてちょっとドキッとしたけど、ここでオドオドしてしまったらまたからかわれるから、真っ直ぐ由依の目を見た。
「子供じゃない、、、。」
「わかったよ笑」
また余裕そうな表情。
「、、、、、ムカつく。」
由依の唇を奪った。
「!」
由依の唯一の弱点の耳を指で挟むと、由依は一瞬だけ肩をビクッと動かした。
でもそんなのほんの一瞬の話。
2人でギターを抱えたまま、少し煙たくなった部屋で二人の時間が過ぎていく。
分かってるよ。どうせこの後もリードされることぐらい。
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勢いで書きました。
感想お待ちしてます。
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