私は、辛さは苦手です。お寿司もできればさび抜きで(笑。
そんな、わさびの辛さについて考えてみたいと思います。

わさびの辛さ成分は、アリル芥子油(主成分:アリルイソチオシアネート)です。
庭などで採取してきたわさびは、そのまま噛んでも辛くありません。
すりおろすことで強い辛味がでます。

辛味成分は、わさびの細胞では、シニグリンという芥子油配糖体の形で含まれています。
シニグリンは辛くなく苦みがあります。

**********
配糖体は、生理作用のある成分(有機化合物)と糖が結合した形です。
辛味成分も配糖体の形で植物中に含まれています。
成分全体を配糖体、糖を除いた部分をアグリコンといいます。
**********

イメージ 1


これをすりおろすことによって、わさびの細胞が壊れます。
細胞が壊れると、水の存在下でミロシナーゼという酵素が働いて、
シニグリン(芥子油配糖体)が加水分解されて、
ツーンとした特有の辛味(アリル芥子油)と香りが生じます(図を参照)。

アリルイソチオシアネートは揮発性なので、
食べた瞬間口の中に広がります。それが鼻腔にぬけてツーンとします。
鼻腔内の三叉神経末端をアリルイソチオシアネートが刺激するのでツーンとします。

ダイコンも辛み成分を切り離す酵素を持つため、ダイコンとわさびを一緒におろすとより
辛みを増すことができます。

また、砂糖、塩を振ることによって浸透圧作用でわさびの細胞の中から辛味成分がより
引き出され、一層辛くなります。

******
浸透圧作用とは、簡単に言うと細胞の内と外の成分濃度を同じにしようとする働きです。
ここでは、細胞の外側と内側の濃度が違うため濃度を均一にしようと分子の移動がおこります。

例えば、細胞内の溶液と浸透圧が等しい食塩水を生理食塩水と呼びます。
赤血球を真水に入れると、赤血球内の濃度を薄めようと内部へ浸透した
水の圧力により赤血球が破壊されます。
点滴などで体内に水分を入れる際には、生理食塩水のように細胞内の溶液と
浸透圧が等しいものでなければなりません。
******

揮発したり、変化した辛味成分を復活することはできない。
しかし、レモン汁(ビタミンC)を加えて再度練ることにより、
未分解のシニグリンが新たに加水分解され辛味が発生します。
この理由は、調べていないのではっきりしたことは言えませんが、
酵素の力が再活性化されてシニグリンが再び分解されるのだと思います。

辛味を発生させるには、水の存在下で酵素を働かせる必要があります。
酵素は人の体温付近で最も活性があるため、水よりぬるま湯で溶いたりすると
より辛味を得られます。

わさびの効果としては、細菌の繁殖を抑制、寄生虫を麻痺させる効果があります。
また、抗菌・抗カビ剤として商品化されています。