アニメ「劇場版サイコパス PROVIDENCE」はもう鑑賞されましたでしょうか。


個人的には、シリーズ中もっとも激しかった印象があります。




やはり、シーズン3の冒頭から、なぜ常守朱が収監されているのか、そのミッシングリンクが繋がった感じがして、めちゃくちゃスッキリしました。


映画本編の気になるところはいくつかありますが、冲方丁さんの脚本は基本的に難しいので、何回か観ないといけませんね…😅


今回は、サイコパスの基本的な部分について、気になっていることをまとめてみました。



1.魂の判定とは?


以下は、サイコパスの公式サイトに掲載されているイントロダクションの抜粋です。



あらゆる心理傾向が全て記録・管理される中、個人の魂の判定基準となったこの計測値を人々は「サイコパス(PSYCHO-PASS)」の俗称で呼び習わした。


」という用語を使っていますが、そもそも魂の定義ってなんでしょうか。


少し調べてみました。


“ 生きものの体の中に宿って、心の働きをつかさどると考えられるもの。古来、肉体を離れても存在し、不滅のものと信じられてきた。”

コトバンクより抜粋

https://kotobank.jp/word/魂-505768


少し分かりにくいので、ほかの言葉に置き換えることが出来ないか、考えてみました。


精神や心理というワードを使う場合もあるようですが、それだけでは不十分のような気がします。


ものの分別ができない幼児を潜在犯として判定するケースがあることから、先天性および後天性という概念を含めたほうが良いと考えます。


性格(Character)

個人の持つ特定の特徴や傾向、行動パターン、態度などを指す。

遺伝的、生物学的な要素に基づいて形成される先天的なもので、後天的な人格に影響を与えうる。

基本的に不変だが、時間とともに変化することもある。


人格(Personality)

個人の行動や思考、感情、価値観などを包括的に表現するもの。

先天的な性格を含む広範な要素であり、個人の特性や特徴の統合体として捉えられる。

環境や経験による影響を受けもので、後天的に形成される。


魂という概念の代用にはならないと思いますが、この2つの概念を総合的に測定することが出来れば、サイコパス判定に近しいものになるような気がします。



2.判定根拠とは?


作中では、サイコパス判定の結果(アウトプット)として、犯罪係数職業適性結婚相手のマッチング、などに活用されています。


犯罪係数は、まだ犯罪を犯す前に逮捕されたり、潜在犯として更生施設に収監されたり、数値によってはドミネーターにより執行対象となり、その場で処刑されることもあります。


犯罪は起こってからでないと動けない、という警察機能の課題がクリアされていますが、もし判定が間違っていたり精度が低かったりしたら、たまったものではありません。


シビュラの処理内容はブラックボックスとして、犯罪係数を目的変数とした場合、その根拠となる説明変数とは、いったいどのくらい必要になるのでしょうか。



例えば、健康状態を判定するために必要な検査項目と結果項目は、実に多種多様です。


その測定手法と判定基準は、科学的根拠にもとづいた客観性と信頼性の高い仕組みが確立していると言えます。


当然、犯罪係数を判定するためには、健康状態だけでは不十分でしょう。


精神状態心理状態を形成する要素のほうが、犯罪係数の説明変数としては適しています。


しかし、Webでよく見かけるような、占いレベルでは困ります。


内田クレペリン検査YG(谷田部ギルフォード)性格検査など、企業の採用試験などで長年に渡り利用されているものは、ある程度信頼性を評価されていると言えます。


健康状態は、診断結果によっては命に関わるため、正確性や客観性が求められ、現在に至っていると思います。


それに対して、精神や心理状態の検査結果は、すぐさま命に関わるものではありません。


しかし、サイコパス判定による犯罪係数は、その数値によっては命に関わるため、健康診断と同様に、客観的かつ正確な判定ができる測定方法の確立が必要になるのではないでしょうか。


犯罪係数ひとつとってみても、その判定に必要な説明変数は膨大になることは分かりますが、具体的にそれらが何で、どのくらいの情報量になるのかは、まったく想像できません。


内田クレペリン検査とYG検査について詳しく知りたい人はこちらをどうぞ。


内田クレペリン検査


YG性格検査





3.非接触で判定可能?


街頭スキャナドミネーターは、測定する機能まであるかどうか詳しくは分かりませんが、少なくとも検知するサイマティックスキャンという機能を持っています。


その特徴の一つとして重要なのは、非接触という点です。


すなわち、外観から読み取れる範囲の情報で、犯罪係数などを判定していることを意味しています。




現代において、血液検査や遺伝子検査は、結果が出るまでには相応の期間を要します。


適性検査は検査手法にもよりますが、通常30~60分、長いものでは90分かかる場合もあります。


前述のとおり、サイコパス判定には膨大な量の説明変数が必要と思われます。


そのうえで、不特定多数、初対面、事前検査無しという条件でも、瞬時に“ 魂の判定”を行える能力を持っているのです。


設定上は、脳内チップの埋め込みや、ナノセンサーの血液注入などは施されていないようです。


犯罪係数を測定するために、非接触かつ瞬時に膨大な情報を読み取ることは到底不可能な気がします。




4.生体力場って何?


非接触によるサイマティックスキャンの課題を、一気に解決してくれそうなワードが「生体力場」です。


オーラのようなものと理解しています。


HUNTER × HUNTERの「念」は個人ごとに性質が異なる



ドラゴンボールの場合は「闘気」の強さを表現



近しい概念として、エーテル体という呼ばれるものもあるようですが、話が長くなりそうなのでここでは割愛します。


興味がある人は調べてみてください。

参考:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/エーテル体



生体力場が性格や人格を表すものだとして、それを読み取り、測定することが出来るようになるかもしれません。


いよいよ、ファンタジー要素が強くなってきましたが、私たちの普段の生活の中でも、実は近しいことを感じることがあります。


あの人は優しそう

あの人絶対ヤバい人だよ

あの人は真面目そうだ

あの人は貫禄があるよね


何故そう感じるのか、言葉で説明することはできませんが、人それぞれが持っている雰囲気から感じとっていると言えるのではないでしょうか。


「類は類を呼ぶ」とも言いますし、同じ波長を持つ人間同士が引かれあったりするのも、同じようなものかもしれません。


例えば、殺人鬼は自分と同じ種類の人間が分かる、などと聞いたことがあると思います。


シビュラシステムが潜在犯を判定できる理由として、このような人間が本来持っている感覚が機能しているのかもしれません。



余談ですが、ドラゴンボールに登場するスカウターは戦闘力に特化していますが、サイマティックスキャンの概念そのものではないでしょうか。


サイコパスよりも何年も前に、こういうアイデアを思いつくのは、さすが鳥山明先生です。





5.本当に年齢は関係ない?


シーズン1に登場する、執行官の縢秀星(かがり しゅうせい)は、5歳の時、サイコパス判定により潜在犯認定されたことを自ら語っています。




善悪やものの分別のない幼児でも、潜在犯として断定されてしまうことに違和感がありました。


もしくは、縢の精神的発達が早かったからかもしれない、とも思いました。


しかし、先天的な性格に対してもサイコパス判定されてしまうなら、年齢は関係ありません。


産まれたての赤ちゃんですら、潜在犯認定されてしまう可能性がある、ということになります。


年齢だけでなく、人種や性別、育った環境に関係なく、ある意味公平に、無慈悲に判定されてしまうことを意味します。



6.二重人格者はどうか?


シーズン2に登場する鹿矛囲桐斗(かむい きりと)は、脳の多体移植により、シビュラに検知すらされていませんでした。


最終的に、シビュラは鹿矛囲桐斗のような存在を認知・判定するため、自ら変貌させることで集団的サイコパスを判定する事が出来るようになります。





この事例で少し分かりにくかったのは、サイコパス判定に影響を及ぼすのは、臓器移植による肉体的な要素によるものなのか、それとも複数の人格が内在している精神的な要素によるものなのか、という点です。


完全に肉体的なものを排除し、二重人格のような場合にシビュラはどのように判定するのか興味があります。


善悪の人格が、一人の人間に内在し入れ替わる場合、どちらが本当の人格かという問題もありますが、いずれにしてもどのような結論を出すのか気になります。


人格が入れ替わると、突然、犯罪係数が300オーバーに跳ね上がったり、逆にいきなり100以下になったり、執行官を混乱させる場面を想像してしまいます。




7.本当に肉体は関係ない?


肉体は健康状態だけでなく、精神や心理状態に影響を及ぼす重要な要素だと考えます。


心臓移植の手術を受けた人が、食事や音楽の趣味がもとの心臓の持ち主(臓器提供者)の好みに変わったという話を聞いたことがあると思います。


臓器移植で性格が変わる?細胞記憶の実例



健康や身体の状態もふくめて、生体力場として表れ、サイコパス判定されると理解しています。



シーズン1に登場する泉宮寺豊久(せんぐうじ とよひさ)は、脳以外は機械の身体、すなわち全身義体のサイボーグです。




このあたりの設定は、PSYCHO-PASSと同じ制作会社であるProduction I.G.の「攻殻機動隊」と共通概念を意識させてくれるところが面白いと感じます。


結果的に、泉宮寺はドミネーターによって執行されましたが、生身の部分は脳だけです。


脳さえあれば、サイコパス判定が可能、ということになります。



一方で、ドローンなど人間以外の相手に対して、ドミネーターのデコンポーザーモードで分子分解するシーンが何度かあります。




相手が機械なので生体力場の検知は出来ません。


この場合、シビュラはどのように判定し、デコンポーザーの使用を許可にしているのか分かりません。


こんな危険なモードは、監視官や執行官が任意で使えるわけがありません。


もしくは、デコンポーザーは人間に対しては使用出来ない、という機能制限があるのかもしれません。


ドミネーターについて、現在の公式サイトに詳しく掲載されていなかったので、以下のサイトを参考にさせていただきました。


サイコパス「ドミネーター」の形態変化やモードの種類を解説!


はじめしゃちょーによるレビュー