【きっかけ】
私が個人的に土井先生のファンなので、何か心が軽くなるのではないか、と読んでみた本です。
振り返ると、この本を読んだ時期は食事が全く作れなかったんですよね。
食材は一応買うのですが、
作ったところで美味しくない(と思っていた)し、
何より作った後の、シンクに広がるお皿、フライパンなどの片付けや洗い物が一番しんどかったし、
料理を作るという行為より、作った先にある状態や感情(美味しくない、片付けしんどい)によって動けませんでした。
結局食材もダメにしてしまうし、自己嫌悪の感情で心がいっぱいでしたね。
かといって外食でも全く満たされなかった時期でもあります。
いつも行くお店や自分好みの料理を選んでも、なんだか物足りないのです。
だから当時は「食事を美味しいと思えないまま、一生を終えるのだろうか」と絶望していました。
食べることが大好きな人間なので、生涯の喜びを失った気持ちでした。
そんなときに、この本を店頭で見かけました。
タイトルにある「利他」に個人的な思い出があったため「料理」との絡みも気になりましたし、
土井先生の本は読んでみたいなと思っていたこともあり、購入に至りました。
【結果】
ちょうど認知行動療法にトライしていた時期でもあるのですが、
この本を読んだことも後押しの一つとなり、
私は「料理」にもう一度チャレンジしてみようという気持ちになったのだと思います。
「料理」という行為を段階的に小さく分けることで、「料理」をすることへのハードルが下がり、
自分のペースではあるものの、いつの間にか自炊ができるようになっていました。
(いわゆるスモールステップですね。)
また、美味しく作れなかった日も、
次の日は全く違う味にリメイクしてしまうとか、次回は違うレシピを使ってみるとか、
前向きに失敗を捉えることができるようになっていました。
※以下内容のネタバレあり
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【感想メモ】(→青文字が私の感想です。)
「土井先生の料理への価値観」を「中島先生の政治学的観点」から紐解いているのかな、という印象を持ちました。
生同士の対談を書籍化したものということで、そのまま対談形式の文章でした。
話し言葉のまま掲載されているので、若干意図を読み取りづらい部分もありましたが、
硬い文章がつらつら書いてある本よりも、私はページを進めやすかったように思います。
ただ、この本の中の「利他」という位置付けがやや不明瞭に私は感じましたが、
「利他」について私の認識に多少偏りがあるのかもしれませんので、
「利他」の掘り下げは、また別の本を読んだときに進めたいと思います。
読んだ当時は、気になった文章や、気に入った表現をメモしている程度だったので、
とりあえず当時のメモを以下に掘り下げていきます。
■「仏師が仏を掘り出すこと」と料理は同じ
(仏を掘ってる、という感覚ではなく、木の中にもともといる仏様をただ掘り出しているだけ
料理も同じで、自然の中にもう美味しさ(=仏様)があるから、それを整える(=掘り出す)ことで何かしらの料理ができる
整える=洗って食べる、アクを抜く、下ごしらえをする等)
→この観点にハッとさせられました。
このような切り口があるとは思いもよらず、同時に自分の頭の硬さにも気づきました。
(また、私の料理が美味しくない理由にも気づいた気もします。笑)
■西洋料理は足し算、和食は引き算的な彫刻のようなもの
→言われてなるほど、和食が控え目な位置付けであることに納得しました。
そして「引き算的な彫刻のようなもの」という表現は、前述の「整える、掘り出す」ことと共通していますね。
■ハレの料理が日常にあろうとするから、料理がしんどくなる ケハレの料理が一汁一菜
→毎日ハレであろうとするつもりはなかったものの、
作るからには、何か豪華な感じというかキラキラしていたり、
美味しそうに見える等美しい方が良いものだ、という無意識のバイアスが自分にはあったように思います。
「一汁一菜」については土井先生の有名な別著書タイトルにも表現されていますが、
この言葉で「それでもいいのだ」と自分へ押しつけていた圧力が下がった気がします。
この部分は、SNS等で写真映えを意識しすぎて疲れてしまっている方にも響く言葉なのではないか、と思いました。
■レシピ自体が近代的で、政治学でいうところの設計主義
→政治学観点で分析されていて、面白い見方だなと思いました。
各分野は独立しているように見えてすべてつながっているものなのだな、と改めて認識しました。
■地球は自分
→このメモ、残念ながら何だったか全く思い出せないです。笑
かなり大袈裟な表現に見えますが、当時はビビッと来たのでしょうね。
地球で起きていることは自分事と捉える、ということかな?
本自体は売ってしまって手元にないので、今は詳細確認できませんが、
再読する機会があれば、ここの謎は確認したいと思います。
以上、本日はここまでです!
ありがとうございました!