今日は野暮用で街中に出た。


マックのコーヒー☕無料券があったので、
休憩に立ち寄った。


平日だが、春休みということもあり、背中に高名が入ったジャージを着た高校生、参考書を開き勉強をしている大学生とおぼしき若者で、店内は溢れていた。


私は一人だったから、端に座りたかったが、長い止まり木になっている座席の、真ん中3席しか空いていなかった。


私は仕方なく、その中の1席にハンカチを置いて場所を確保し、注文の列に並んだ。






私の席のちょうど向かい側では、男子学生が友達どうしで2人座って、食事をしていた。



その時、私の背後から声がした。

「○○先輩‼」




座っていたうちの1人が、声の主のほうを向き、

「おぉ‼●●じゃん‼」


と、嬉しそうに笑った。





後からやって来た男子学生は、3人組だったので、その先輩の向かい側に座ろうとしていたらしい。


だが、その席の1席は、私が場所をとっている。


その男子学生のところからは、当所、私の荷物が置いてあるのが見えなかったらしかった。



先輩の顔を見るなり、ころころと近づき嬉しそうに談笑する様子を見て、何となく、二人の関係性がわかった気がした。



向かい側の席に荷物が置いてあるのを見て、実にわかりやすく残念そうな顔をしながら、奥のボックス席に腰をおろす姿が、
私の目には可愛らしく映った。




私は注文の列から外れて、荷物を別の席に移動させた。



そして、

「向かい側、よかったらどうぞ。」


と、その彼に声をかけ、注文の列の最後尾に並び直した。





彼の、

「あ……え……。」


という、声ともいえぬような、何を言いたかったのかもわからぬような声を、背中で聞いた。


彼は私の顔すら見ようとしなかった。





その後、何事もなかったように、3人組の男子学生は私の空けた席に移り、向かい側の彼らの先輩と、おしゃべりしていた。






私のしたことを、彼がどのように理解したのかは知ったことではないが、ありがたくても、ありがたくなくても、相手のしてくれた厚意に対して、お礼のひとつも言えないのか。


そもそも、厚意という概念がないのだろうか。


今時の若者にとっては、先輩への礼節はわきまえるけれども、見知らぬ人間のすることは、ただ、自分の横を吹き抜ける風のようなものなのかもしれない。




そんなことを考えながら飲んだコーヒーは、少し寂しい気持ちが手伝ったせいか、いつもより苦味が強かった。



半分を残し、私はマックを後にした。







私も、まだまだ未熟者だが……。