囲碁は、黒と白の石を交互に置いて陣地を競う古来のボードゲームです。この囲碁が、人工知能(AI)にとって長年最大の難関とされてきました。その理由は、囲碁が他のゲームと比較して複雑であり、人間の直感的な判断が重要な役割を果たすためです。

### 囲碁AIの発展

1. 1960年代:初期の囲碁AI
   - この時期のAIは非常に弱く、初心者レベルにも到達していませんでした。
   - しかし、これが囲碁AI開発の出発点となりました。

2. 1980年代:モンテカルロ法の導入
   - 「モンテカルロ法」という新しいアプローチが導入されました。
   - これにより、AIは趣味レベルの人間プレイヤーと互角に戦えるようになりました。

3. 2000年代:プロレベルへの接近
   - コンピューター技術の進歩に伴い、AIの能力も飛躍的に向上しました。
   - この頃になると、プロ棋士に時折勝利するAIが登場し始めました。

4. 2015年:大きな転換点
   - Facebookが開発した「darkforest」がプロ棋士に勝利しました。
   - この出来事により、AIが人間のトップ棋士に勝利する可能性が現実味を帯びてきました。

### 囲碁がAIにとって難しい理由

1. 膨大な可能性
   - 囲碁は、チェスの1000倍以上の手順の可能性があります。
   - AIにとって、これほど多くの選択肢から最適な手を見つけ出すのは大変困難でした。

2. 局面評価の難しさ
   - チェスでは駒の価値が明確ですが、囲碁では石の配置の良し悪しを判断するのが難しいのです。
   - この抽象的な評価は、AIにとって大きな課題でした。

3. 大局観の必要性
   - 囲碁では、盤面の一部だけでなく全体のバランスを見る能力が重要です。
   - この「大局観」は人間の直感的判断に近く、AIには再現が難しいものでした。

4. 長期的戦略の重要性
   - 囲碁は、序盤の戦いが終盤まで影響を及ぼすことがあります。
   - 長期的な見通しを立てることは、AIにとって難しい課題でした。

これらの理由から、囲碁AIの開発は非常に困難を極めました。しかし、研究者たちは諦めませんでした。囲碁AIの開発は、単なるゲームAIの枠を超え、人間の思考プロセスに近い「考える力」をAIに与える可能性を秘めていたからです。