サルでもわかる!ラヲタならなおさらわかる!
『少年ぢゃんく』レシピ盗難事件
~99%の人が解ける超簡単な短編推理小説
(注) あったりまえですが、登場する個人、団体の全てはフィクションです…って、断るまでもないんだけどさ!!
『少年ぢゃんく』店主が仕掛ける『なぞかけ』は99%の人が解ける超簡単な短編推理小説となりました。そうなんです、ついに『少年ぢゃんく』の推理小説が完成したんですヨ!!
-はじめに-
『少年ぢゃんく』の店主こと当ブログの管理人です。
今日は皆さんに、私が『少年ぢゃんく』の店主となった時のことをお話させてください。
推理小説形式にも関わらず、ヒントを出しすぎているにもほどがあるこの作品、これでは誰にでも解けちゃうじゃないかと99%の方は思われることでしょう。
しかしその露骨なまでに提示されたヒントの数々は、それでも残り1%の方がこのトリックを暴けないと私が小馬鹿にしているからです。
さあ皆さん、残り1%に選ばれるという痛快な騙され感をご堪能ください。
ちなみに私の家族には1分で解かれちゃいましたけどね。
ところで・・・、冗談抜きにしてこれ入力するのに3時間もかけてます(書いた当時はかかりすぎって思いましたが、今読み直したら3時間で完成できれば上等でしょ? 実はその後、何度も書き換えているけどねw。読者がいてもいなくても、このシリーズをあと4作くらい書きたいです)ので、一人でも多くの方が悔しがってくれますと嬉しいです!
では、では。
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■■■ 『少年ぢゃんく』レシピ盗難事件 ■■■
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ラーメン屋になりたいと思ったことなど一度もなかった。
四月からは、製薬会社のエンジニアとして働いているはずだった。
あの日、親父が死んだことを知らせる電話がなかったならば・・・。
親父のラーメン店が人気店となったのは、突然のことだった。
きっかけは「Mんりすと」というラーメン店のブログ「う~めんism」だった。
「Mんりすと」は静岡県三島市にある日本一の誉れ高い超有名ラーメン店である。
そしてこのお店の巨漢店主のブログもまた有名な存在であり、業界に強い影響力を持っていた。
ユニークな文体と、少しの変態性を散りばめながら、時折すぱっとラーメンの本質を語るその記事を、多くのラーメンファンが夜な夜な熱い視線を注いでいた。
そんなブログにある日、親父の運命を大きく変える衝撃の記事がUPされた。
「少年ぢゃんくという店のスープの味に驚いた。Mんりすとのスープとまったく同じ味をしている。しかも誰にも気付かれたことのない隠し味までもがコピーされいてる。これは真似をしたというレベルではない。うちの店の厨房に忍び込みレシピ帳を盗みとって作ったラーメンに間違いない!」
・・・たぶんこれを読んだ多くの方は驚いたことだろう。
もちろん無実無根だ。
言いがかりにも程があるし、まして日本一と語られる店が、田舎の小さな店に対して言うことでもなかった。
しかし親父は、このあらぬ疑惑に対して真摯に、そして丁寧に無実を説明した。
そしてむしろMんりすとの作品と自分の作品が比較されたことを感謝し、同時にMんりすとの店主の才能を称えもした。
人を怨むことなどしない、心の広い、そして何よりも優しい人だった。
そんな親父の姿は、美談として全国に放送された。
それからが凄かった。
Mんりすとが認めた味を期待した客が全国から集まった。
店は見違えた。
そしてそこに集まった客の「美味しい」という声は、インターネットを通じてさらに全国に広がり、たちまち人気ラーメン店として注目される存在となっていった。
確かに親父の作るラーメンは美味かったと思う。
しかし俺も、親父も、妻や家族さえもが、親父のラーメンがここまで評価されるようになるとは思っていなかった。
そして親父のラーメンが評価された理由は味だけではなかったはずだ。
親父のラーメンには、何より親父の心がこもっていた。
『愛情』を感じるラーメンだったのだ。
それがお客の心を捕らえてやまなかった。
そして秘密の隠し味。
鶏×白湯風ラーメン・・・、多くの客から「トリパイタンふうラーメン」と呼ばれたそのラーメンのオイルには、鶏の油だけでなく、感情を突き動かすような特別なオイルが隠し味として仕込まれていた。
その高貴にして高揚的な香りに多くの客が虜となっていった・・・。
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トップに垂らした一滴の隠し味。これが植物系のひねりある味わいと、ハービーな色香を表現。 スープの味わいに大きな波形のうねりを加えます。 さらに味玉の黄身に絡めば、そこに新しい輝きが生まれます。 さらには何気に玉子を使用した麺を使用しているあたりも芸が細かい! とにもかくにもインパクトとひねりの強さが圧巻の風味を演出する問題作です。 たった数滴の隠し味ながら、その影響力は絶大。 これまで経験したことのない新しいラーメンの香気がこの作品に存在しているのです。
超絶フレーバー&余韻最長の、とってもエクストリームなラーメンすよ!! |
親父ができた人間であることに異論を唱える人はいないだろう。
誰にでも分け隔てなく、温かい心で接することができる人だった。
初めて来る客までもが、俺の父親を親父と呼んで慕った。
そのことは実の息子としてはどこか落ち着かない気分だったが、悪い気はしなかった。
そんな親父に比べると、お袋は随分と現金な女だ。
親父の商売人とは思えない程にお金よりも人を大切にする様子を見下し、顔を合わせば終始嫌味をぶつけていた。
しかし店が繁盛してからは別人・・・、まるで夫婦二人三脚で店を営んできたかのように、時に献身的な振る舞いで客の喝さいを浴びた。
あまりの変身ぶりに息子である俺までもが、お袋もついに親父に心を開いたのかと思った。
しかしそれは誤解だった。
あの日の電話がそれを証明した。
お袋が大事にしていたのは、親父ではなく店の売り上げだったのだと・・・。
お袋からの電話は残酷だ。
親父が事故で突然死したと言いながら、既に別のことを心配していた。
事故の話も早々に、俺にこの店を継げと説得し始めた。
さらには一ヶ月後にグルメ番組の収録があるから、それまでに同じ味のラーメンを出せるように準備しろという。
その番組で、店のフランチャイズ化計画を発表する予定だというのだ。
それにしても急な話だ。
何より事故直後という、このタイミングで言う話でもないだろう。
親父が死んだという事実よりも、大金を生み出す店の方を心配する母親・・・。
あまりに寂しい話だとは思うが、それでも血のつながった母親だ。不思議とそんな母親の期待にもこたえてやりたいという気持ちもあった。
しかし安易に店を継ぐことを覚悟した次の日からが地獄だった。
身内だけの葬儀を簡単に済ましてからは、親父のラーメンの味を再現するべく厨房にこもり、それこそ寝る間もないほど忙しかった。
見よう見まねの連続は、同時に失敗の連続でもあった。
しかしお袋はそんな俺を他所目に、一ヶ月後のテレビの番組の収録を通じて、店の復活イベントも行いたいという。
どうすればいいのか・・・、親父のラーメンの味は暗闇の中、特に肝心のスープの作り方が見えてこない。
作り方だけではない、出汁に何を使っていたかすらまるでわからない。
材料を購入した際にもらうはずの領収書・・・、不思議とそれらが全く見つからない。
俺は確信した。
親父の事故は、自殺だったのだと・・・。
金への執着が加速していくお袋を憂い、自殺したのではないかと・・・。
だからお袋に二度とラーメンを作らせまいと、全ての情報を処分してから死んだのだ。
愛情を生む自分のラーメンが、次第に金を生む道具に変わっていくことが許せなかったのだろう。
俺には無理だ・・・。
俺には親父のラーメンを再現することはできない・・・、そう思い始めた時、一本の電話が鳴った。
「もしもし、『少年ぢゃんく』さんですか?」
軽薄な声の主はグルメレポーターとして有名なヒラバタケという芸人だった。
一ヶ月後のグルメ番組の収録で、この店の味を紹介する予定になっているらしい。
確か、この店の近所出身の芸能人だったはずだ。
だから地元に帰るとちょっとしたヒーローだったりもする。
茶色のスーツに蝶ネクタイの出で立ちが思い出された。
今でこそ人気レストランの隠し味を『なぞかけ』で解き明かすというキャラクターが人気となったが、元々は地元のローカル番組で顔を売ってきた芸人だ。
まあ、このお店のリポーターとしては悪い人選ではないだろうし、店にとってはありがたい存在だ。
しかし地元でのリポートというプレッシャーがあったのだろうか?
あるいは慢心があったのか?
ヒラバタケは俺に信じられないことを相談してきた。
「番組で使う良い『なぞかけ』を準備したいんで、使っている出汁と噂の隠し味をちょっとだけ教えて欲しいんですヨ」
俺は呆れてしまった。
これがグルメを気取り、即席の『なぞかけ』を披露するとされてきた芸人の正体だ。
才能もないのに背伸びをしたがるヤラセリポーターだ。
「隠し味は、隠し味だろ。隠し味の秘密なんて誰にも教えられないよ!」
無粋に答え、俺は受話器を置いた。
無性にイライラした。
俺だって知りたいよ・・・、心の中でつぶやいた。
才能がないのは俺も一緒だ。
どうやったらあの香りと味わいを再現できるのだろうか・・・。
それからというもの、スープのことばかりが気になり、眠れない日が続いた。
記憶の中にある親父のラーメンを呼び起こそうとする。
食べたのは一度や二度のことではない。
しかし食べたことがあるといっても、その時にはそれが好みか好みでないか程度にしか味わってはいなかった。
そもそもラーメン自体がそれほど興味のある食べ物ではなかった。
そんな俺が、今やこの世界のプロになっている。
番組の収録まで残り一ヶ月・・・、その時までに結果を出さなければ大恥をかくことになる。
どうすればいいのか・・・。
その時突然、あることが思い出された。
この店が人気店となるきっかけとなったあのブログの記事・・・。
「少年ぢゃんくという店のスープの味に驚いた。Mんりすとのスープとまったく同じ味をしている。しかも誰にも気付かれたことのなかった隠し味までもがコピーされいてる。これは真似をしたというレベルではない。うちの店の厨房に忍び込みレシピ帳を盗み撮りして作ったラーメンに間違いない!」
・・・そうだ!
・・・そうだった!!
Mんりすとの厨房からレシピ帳を盗めば、すべてがわかるじゃないか!!
俺はその日の夜、居ても立ってもいられずMんりすとの厨房に忍び込んだ。
誰もいないことはわかっていた。
従業員の出入りは、その日の朝から入念にチェックした。
裏口から忍び込み、厨房に入る。
厨房の奥にぽつんと置かれた机の引き出しに手をかける。
その瞬間、全てが終わった。
けたたましいまでに電子音が響き渡り、部屋中の照明が点灯した。
慌てて逃げようとしたが、既に遅かった。
店舗脇の階段を抜けようとした時、二階から飛び降りるようにして現れた大柄の男が俺に襲いかかる。
身長2メートル、体重は150キロはあろうかという超巨漢、そしてどこかで見た顔・・・。
そうだ、あのブログの男だ!
男は俺の体を地面に叩きつけた。
頭を打ち、意識がもうろうとした。
Mんりすとの店主はその強い腕っ節で俺を完全に抑えつけると、二階にいる家族に向かって叫んだ。
「レシピ泥棒だ! 誰か警察に電話しろ!!」
頭がひどく痛い・・・。
気付いた時には朝だった。
遠くで騒ぎ声が聞こえた気がして目が覚めた。
あれからいったい何時間寝たのだろう。
厨房で仮眠をとるつもりが、すっかり寝込んでしまった。
ストレスが溜まって、少し飲みすぎる癖ができたのかもしれない。
床に転がるウイスキーのボトルが、目に入った。
火が心配になり、コンロの前に進む。
灰汁取りを忘れ、煮込まれ続けた寸胴からは、なぜかいつもより滑らかで美味しそうな鶏の香りが漂っていた。
何時だろうか? とりあえず時間を確認したくなった。
眠い目をこすりながらテレビをつけると、茶色のスーツの男が土下座をしながら大勢の記者に取り囲まれている。
フラッシュの点滅が寝起きの俺にはやけに煩い。
突然、体を起した茶色いスーツの男の上半身がアップになった。
特徴的な蝶ネクタイ、イメージカラーとも言える茶色のスーツ・・・。
この男・・・、どこかで見覚えがある・・・。
そうだ、この男っ!!
俺に電話をよこしたあいつ・・・、グルメリポーターのヒラバタケじゃないか!
こんなに多くの記者に囲まれたのは、グルメリポーター・・・、いや芸能人になってから初めてのことだ。
多くのカメラに囲まれることは長年の夢だったが、まさか窃盗未遂で逮捕という形で実現するとは・・・。
眠い目をこすりながら、朝から日本中がこの姿を見ているのか・・・。
俺は事務所に言われた通り、何度も何度も土下座をした。
いつか復帰したいと思うならしっかり謝罪しろとは、急に態度を大きくしたマネージャーの言葉だ。
しかし、どうせ二度と芸能界に復帰できることはないだろう。
いや、そもそもよくここまで、この世界に残ることができたと不思議に思うくらいだ。
才能がないことは自分が一番わかっていた。
『なぞかけ芸人』、あるいは『グルメ芸人』などという放送作家が作ったキャラクターには、限界を感じていた。
この仕事はもう十分だ。
地元に帰って、地に足のついた仕事がしたかった。
心にもない土下座を繰り返して謝罪の言葉を述べながらも、本当は全く違うことばかり考えていた。
さて、これから何の仕事をしようか・・・。
許されないことは承知だが、ラーメン屋という選択も悪くないように感じた。
大好きだった『少年ぢゃんく』の親父なら、こんな俺でもきっと許してくれそうな気がした・・・。
親父の愛情が染みわたったあのラーメンを、俺も作ってみたいと思った。
記者に囲まれるヒラバタケ・・・。
いったい何が起こったかを理解するのには、寝起きの頭でも時間はかからなかった。
画面の半分が見えないほどに、事件の内容を知らせるテロップが踊り続けていたからだ。
響く芸能記者たちの収集の利かなくなった怒声よりも、テロップは要点だけをわかりやすく伝えていた。
その時、店のチャイムが鳴った。
さらには店の電話、携帯電話が一斉に鳴り響き、さらに誰かが店のシャッターを叩く音が続いた・・・。
理由は予想できた。
しかし俺は、それらがまるで聞こえていないかのように、テレビを注視した。
事件の内容はこうだ。
ヒラバタケは、Mんりすとの厨房からレシピを盗もうとして捕まった。
動機は一ヶ月後に俺の店をリポートする際、スープの隠し味に自ら気づいたふりをするためだ。
この店と同じ味のスープだといわれるMんりすとに忍び込み、レシピを盗もうとして捕まったというのだ!!
なんてバカな・・・。
これで、あのグルメ番組も終了になることだろう。
俺も一ヶ月後の収録の心配はなくなったわけだ・・・。
この顛末を、天国の親父はどう思っているのだろうか?
俺の四月からの仕事はどうなる?
そして破り捨ててしまった製薬会社の内定通知書は、再発行できるのだろうか?
混乱していたのだろう。
そんなつまらないことまでもが次々と頭をよぎる。
そしてこんな時、普通の人たちはいったい何を思うんだろうかなどという意味のないことまで考え始めていた。
自分が今何をすべきか、何を考えるべきか、まるでわからなくなっていた。
だっせーっな、俺・・・。
腰を上げ、コンロの火を止める。
生き生きと踊っていたスープが、すっと静けさを取り戻す。
その様子に、少しだけ落ち着いた気がした。
テレビでは相変わらずヒラバタケが土下座を続けている。
今頃ヒラバタケは何を感じているんだろうか?
案外、俺と同じで、一ヶ月後の収録がなくなったことにホッとしているのかもしれない・・・、そんな笑えない話を想像してみた。
記者に囲まれ、多くのフラッシュをぶつけられながら、ふと考える。
こんな俺を、天国にいる『少年ぢゃんく』の親父はどう思っているのだろうかと・・・。
そして新しく店主となった親父さんの息子は何を感じているのだろうかと・・・。
案外、俺と同じで、一ヶ月後の収録がなくなったことにホッとしているのかもしれない・・・、そんな笑えない話を想像してみた。
-あとがき-
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
基本色の文字は私の言葉、そして茶色の文字はヒラバタケの言葉という、1%の方にとっては終盤までわかりにくい文章形態であったことをお詫びします。
それにしても、この事件からもう十年が経ちました。
『少年ぢゃんく』二代目店主・・・、それが今の私の肩書です。
最近では厨房をもっぱら弟子に任せ、私の仕事はお客さんからオーダーをとり、時にお客さんの好みのアレンジを提案し、食べていただいた作品の感想をうかがうことが中心となっています。
作り手の思い、お客さんの好み、時流といった三つの要素をバランスよく整え、それを作品として提供するのが、私の役割だと思っています。
完全予約制というスタイルで、ゆっくり食事をしていただくラーメン屋・・・、悪く言えば世界一仕事の遅いラーメン屋であることが、親父にはなかった私のスタイルです。
一見すると親父とは真逆のスタイルですが、そうではありません。
私なりに、自分の持てる愛情や感謝の気持ちを最もラーメンに、そしてお客様に提供できるスタイルを目指した結果がこれだったのです。
このお店の柱は、愛情にあります。
しかし基本の味は親父譲り・・・、いや親父と変わらぬ味になっているはずです。
実は、この事件には後日談があるのです・・・。
くしくもあの事件から一ヶ月後・・・、事件さえなければこの店のテレビ収録が行われていたその日に、ヒラバタケは仮釈放されました。
そして偶然にもその日、ある方が休業日にも関わらずこの店を訪問しました。
身長2メートル、体重150キロはあろうかという超巨漢のあの人です。
あの人は店に来るや否や一冊のレシピ帳を机に置き、大量の食材を持ち込みました。
そして一言も話をすることはなく、ただただスープの仕込みを始めました。
日本一と語られる職人の集中力、そして技術、その一つ一つの動作、呼吸までもが私にとっては刺激的であり、同時にラーメン屋としてとても勉強になるものでありました。
私は、わけもわからないまま必死でその様子をメモしました。
そして十時間後、ついに彼は一杯のラーメンを私に差し出します。
「このスープを飲んでください」
鶏をベースとしながらも、優しさに満ち、そして感情をくすぐる高貴な香り・・・。
私はゆっくりとそのスープを味わい、そしてこう答えました。
「親父のつくったラーメンの香り、そして親父のつくったラーメンの味がします」
あの人は、小さく頷きました。
「かつて私は、あなたの親父さんをレシピ泥棒と批判したことがあります。しかし実際には全くの誤解でした。それでもあなたの親父さんは無礼な私をも怨むこともせず、寛容な心でそれを許してくれました。親父さんには本当に申し訳ないことをしたと思っています。最後まで直接会って謝ることができなかったことを非常に後悔しています。今日は私のラーメンを食べていただきありがとうございました。そのレシピ帳は私にとってはもう昔の味です。常に新しい味に挑戦するのが私のやり方です。必要無ければ捨ててください。私はあなたの親父さんから人を怨まないこと、そして常に人に優しくあり続けるべきということを教えてもらいました。そのことは一杯のラーメンのレシピよりもずっと価値のあるものです」
「あ、ああ・・・・あっ・・・」
感情が高まり、そして目からは涙があふれました。
「ありがとうございます、ありがとうございます・・・」
私は肩を震わせながらその超巨漢の顔を見ることもできず、ただただ頭を下げたまま感謝の言葉をただひたすら繰り返しました。
人を怨まないこと、人に優しくあること・・・、親父はこの世を離れましたが、このラーメンを作り続ける限り、親父のメッセージはきっと誰かに伝えていける気がしました。
今日も『少年ぢゃんく』では、あの日教わったラーメンが作られています。
私にとっては初めての・・・、そして最初で最後の弟子が、夜明け前から入念にスープを仕込んでいます。
その弟子も、いつの間にかたくましい体つきとなり、そして表情もキリリと締まったように感じます。
今朝も私は眠い目をこすりながら、厨房の弟子に声をかけました。
「この仕事が板についてきたようだね」
一瞬、「フフフ・・・」という小さな笑い声が聞こえました。
「蝶ネクタイよりも、手拭いハチマキ長靴の方がすっかり似合うようになりましたヨ」
「それはいいね」
相変わらずの軽薄な声・・・、しかし言葉には重みを感じました。それでもつい冷やかしの言葉が出てしまうのは、私の悪い癖です。
「で、その心は?」
弟子は一瞬固い表情を見せましたが、すぐに笑顔を取り戻しました。
「『なぞかけ』はとっくに卒業しましたよ。かけるのは愛情だけです」
「じゃあ、愛情マシで頼むよ」
「それならご安心ください。『少年ぢゃんく』の暖簾では、愛情と優しさはいつもマシマシですヨ」
そう答えたヒラバタケの横顔が、少し親父に似てきたように思えました。
厨房には美しい琥珀色を宿した瓶が置かれています。
白トリュフオイル・・・、これが「鶏×白湯風ラーメン」の隠し味です。
「鶏×白湯風ラーメン」は「トリパイタンふうラーメン」と呼ばれてきましたが、その実は「白トリュフラーメン」だったのです。
そうです、「鶏×白」の「×」は「鶏」と「白」の文字を入れ替えて読めという意味の記号だったのです。
「鶏×白湯風ラーメン」は、「白鶏湯風ラーメン」・・・、これを続けて読めば「白トリュフラーメン」となるのです。
皆さんならすぐに気付いたであろうこのアナグラムと隠し味によって、私の人生も、ヒラバタケの人生も大きく変わってしまったようです。
もちろん、それはきっと良い方向に・・・。
そう思った瞬間、「鶏×白湯風ラーメン」のスープがもつ優しく、高貴な香りに視界が包みこまれたような気がしました。
それはまるで親父の笑顔のように優しく、温かく・・・。
そんなスープの香りに包まれながら、私は仕込みを行うヒラバタケに再び近づくと、一つの問いかけをしました。
「この店、しばらく君に任せるよ」
「えっ?」
それは思い付きにも似た、突然の告白でした。
「実は、この場所をしばらく留守にしようと思うんだ。大した理由なんてないんだよ。私がこの店を始めて明日でちょうど1年、ちょっとお店を変化させるには良い頃だと思ってね」
「そんなこと、いきなり言われても・・・」
「大丈夫、君一人でこの店は十分やっていけるはずだよ。それに私もしばらくしたら戻ってくるつもりだしね、ただ、それが3日後なのか、数ヵ月後なのか、今の私にはそれがわからないというだけなんだ。1年以上も同じことを繰り返しても飽きられないものをつくることってことは、とても難しいことだからね。いずれにしてもこれまでとは違う、ヒラバタケならではの味を出して貰いたいんだよ」
「じゃあ、ブログはどうするつもりなんですか? 『Mんりすと非公式ファンクラブブログ』にくるお客さんだって多いんですよ!?」
「ブログか・・・、そうだな、これだけ多くの人にお世話になっておきながらいきなりお休みってわけにもいかないかもな。そうだ、それなら君がこの店のブログを書けばいいじゃないか!」
「えっ、私が???」
「いいじゃないか、『少年ぢゃんく』のブログ・・・、これまで私が書いてきた『Mんりすと非公式ファンクラブ』とは味付けの違うレビューのブログを見せてくれよ。これまでは鶏×白湯風ラーメンのレシピを教えていただいたMんりすとさんの人気にあやかったブログタイトルだったから、変化することできっと読者の数は減るとは思う。しかし少ないお客さんだからこそ丁寧に対応するのがこのお店のコンセプトだったはずだろ? 新しいブログでの君の素直な表現を楽しみにしてくれる人もきっといると思うよ」
「本当に私が・・・、本当に私がこの店のブログを書いてもいいんですか?」
ヒラバタケの表情に、小さな笑みが浮かんで見えました。
これなら任せられるな・・・、私は安心して頷きました。
・・・と、いうわけで!!
皆様、これまで本当とぉーにありがとうございました!!
麺屋めとろぽりたんでは、本日も皆様のご来店をマシマシの愛情に数滴のトリュフオイルを加えてお待ちしています。
新たにお店を任されたヒラバタケが作る鶏×白湯風ラーメンの香りと味わいを是非お楽しみくださいませ。
なお、これまで多くの方にご訪問頂きました『めんりすと非公式ファンクラブ』は、数日か数ヶ月かの間、更新をお休みいたします(・・・といいつつ、こっそりとは更新したりしますw)。
開設1年まであと数分のところでお休みに入ることで、このブログはもうしばらくの間、聞く耳持たない永遠の0歳児でいられそうです。
ずるいでしょ(笑)。
そして明日からしばらくは当店の新しいブログ『少年ぢゃんく』にて、ラーメン情報を発信いたします。
もちろんお世話になったMんりすとさんのレビューも、これまで同様に頑張ります。
何より、読者の皆様にはそれを一番期待してもらっていますからね。
そして今後は、今まで書いてこなかったタイプのものにも挑戦できるかもしれません。
そして新ブログ開設にあたり、一つ誤解のないようにお願いしたいのは、この「移転」は「少年の家出」にすぎないということ。
きっと我が家である『Mんりすと非公式ファンクラブ』に戻ってくる日は遠くないはずですし(だって家出したって、すぐに飽きちゃうと思うからw)、家出してもなお「史上最ディープなMんりすとファンサイト」であろうとし続けることは間違いありません。
ブログタイトルに「Mんりすと」って入れないだけで、間違いなく訪問してくださる方が激減することと思いますが、その分コアに語っちゃえるかもしれませんよね。
今はドキドキよりもワクワクな気分なのであります。
それでは皆様、最後までお読み頂きありがとうございました。
最後の最後も、『Mんりすと非公式ファンクラブ』らしい空前絶後の長文レビューで締めさせていただきました。
だからアメーバブログ様、どうか文字数制限に引っ掛けずに、この文章を無事アップさせてくださいませ!!
では、次のブログはここだよ!!
めんりすと非公式ファンクラブの1年目の家出を、是非是非ご覧くださいませm(__)m
New Blog ⇒ http://ameblo.jp/sirodori/
※ 最後まで長文で御免ね。ちゃお♪

