「整腸剤でお腹の調子が悪くなる」と聞くとみなさん、「あれ?」と思われるのではないでしょうか。本来はお腹の調子が悪い時に整腸剤が処方されるのですから。しかし、実際に普通の病院でもよく処方される「整腸剤」が予想外の作用があり、思わぬ副作用を起こすことがあるのです。
ミヤリ酸の働き
ミヤリ酸というのはご存知でしょうか?ミヤリ酸が分からなくても「ミヤBM」と聞くと「その薬なら飲んだことがある」という方も多いと思います。お腹の調子が悪くて病院を受診した時にも処方される頻度の多い「整腸剤」です。
酪酸菌の一種で、腸管内の悪玉菌に対抗して腸内環境を整える働きがあります。抗生物質や胃酸にも抵抗性を示し、通常は大量に内服しても副作用が起こらない安全なプロバイオティクスの一種類です。
死滅反応という「罠」
教科書的にはいいことずくめで、何も問題がないように思われるのですが、実際に臨床的に使用していると思わないことが起こる場合があります。「腸管内の悪玉菌に対抗して」というところが問題です。
悪玉菌を退治してくれるのはとてもありがたいのですが、悪玉菌が死滅する時に、菌体に溜まっている「毒素」を放出することがあります。その毒素の量が多いと体の調子が悪くなることがあるのです。これを「死滅反応(ダイオフ)」と言います。
それほど頻度が多くはありませんが、腸内環境を整える治療を行う場合に、2−3割の人は何らかの体調不良を感じることがあります。すこし、軟便傾向になったり、軽い腹痛が起こることがあります。通常は、そのまま継続して内服している間に症状も軽くなります。
しかし、100人に2−3人の割で、かなり体調が悪くなることがあります。例えば、疲労感が強くなり起き上がれなくなったり、他にアトピー性皮膚炎などがある場合は皮膚症状がかなり悪くなる場合もあります。通常は、内服を中止すると治まってくることが多いのですが、中には内服を中止してからもどんどんと症状が悪化する場合はあります。
普段は元気にしている人が、たまにお腹を壊した時に内服する程度ではこのような「死滅反応」が起こることはほとんどありません。しかし、腸内環境が悪く、体のバランスが崩れている人が、腸内環境や体のバランスを整える治療を行う場合には、「死滅反応」が起こる可能性は決して無視はできません。十分に注意する必要があります。
カンジダ菌の除菌を行うときも
当院を受診される方は、原因不明の慢性症状で困っておられる方がほとんどで、ネット情報を調べて自分なりにサプリメントを試している方が多いです。ネットで「カンジダ菌 除菌」と検索してみると、さまざまな情報が得ることができます。そして、ネットでの情報を元に、カンジダ菌の除菌用サプリメントを海外から個人輸入して飲まれているのです。
このような情報が簡単に得ることができるようになったことはとても素晴らしいことだと思います。ただ、もし、自分一人で除菌治療を行う場合には、先に書いたように「死滅反応」を起こすリスクがあるということを十分に理解しておく必要があります。そして、もし「これはひょっとしたら死滅反応かな?」と思う症状が出た場合には、「そのうちに治るだろう」と高をく括らないでください。自分の除菌治療の経験をブログなどに書いている人がいますが、体調不良を感じながらも、素人判断でずっと継続している人がいます。なかには死滅反応の症状が半年以上も続いていると平気で書いている人もいます。これはとても危険なことです。
除菌治療を行なって、すこしでも体調が悪くなった場合はすぐに除菌用のサプリメントを中止して、症状が治るのを待ってください。中止すれば症状は治まってくるはずです。そして、再開する場合は完全に症状が治まってから、除菌サプリメントの量を減らすか内服する回数を減らしてください。
このような記事を書くとまるで除菌治療を勧めているように思われるかもしれませんが、わたしは自己判断で除菌治療を行うことは絶対にオススメはしません。除菌治療について熟知した医師のもとでされることをオススメします。
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