前回は、EPAが心疾患の急性イベント(狭心症、心筋梗塞)の発症を抑える効果はないという文献を紹介しました。しかし、だからといってEPAが効果がないということではありません。EPAやオメガ3などの不飽和脂肪酸には抗炎症効果があることは証明されています。

例えばアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、当院でもよく用いています。全ての患者さんに対してではありませんが、十分な量を投与すればかなり皮膚の炎症を抑える効果があります。

アトピー性皮膚炎の標準的治療法

アトピー性皮膚炎に対しての標準的な治療法としてはステロイドの軟膏や内服、あるいは抗アレルギー剤があります。しかし、ステロイドの軟膏は長期間使用することでステロイド依存性になったり、ステロイド皮膚炎を起こしたりすることがあります。有効な治療法ではありますが、さまざまな副作用が懸念され、非常に悩ましいのも事実です。現場の先生も、できれば使用したくはないがそれ以外に有効な方法がないのでやむなく用いているというのが正直なところではないでしょうか。

そのためか、さまざまな民間療法があり、「温泉療法」や「脱ステロイド療法」「鍼灸・漢方治療」などが乱立していると言ってもいい状態です。なかには非常に怪しげな療法を宣伝しているところもあります。様々な治療法は、患者さんによってはそれなりに効果があるのでしょうが、そうでない場合は全く良くならなかったり、時には非常に悪化したりすることがあります。当院を受診された患者さんの中には、ある治療法で「地獄のような苦しみを味わった」という人もおられました。治療法の選択にはかなり慎重を期する必要があります。

アトピー性皮膚炎に効くサプリメント

そこで、今日はアトピー性皮膚炎に効くサプリメントをご紹介したいと思います。単に教科書的に載っているものではなくて、当院で多くの患者さんに使用し効果が確認されているものに限ります。

 

プロバイオティクスとは、簡単にいうと善玉菌のサプリメントで腸内フローラを整える働きがあります。アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患は腸内環境と密接な関係があり、まずは腸内環境を整えることがとても重要です。

「プロバイオティクス」を(括弧)で囲んでいるのには理由があります。確かに腸内環境を整えることはアトピー性皮膚炎の治療にはとても重要ですが、安易にプロバイオティクスを内服すると、「死滅反応(ダイオフ)」を起こす可能性があるのです。「死滅反応」とは、腸内環境を整える治療を行うことで、それまで腸内に増殖していた悪玉菌が死滅する時に起こる反応です。

悪玉菌が死滅すると、菌体の中に含まれていた毒素が腸管内に放出され、アトピー性皮膚炎の炎症が一気に悪化する危険性があるのです。必ず起こるわけではありませんが、皮膚の炎症が強い時には、いきなりプロバイオティクスを飲むのではなく、次に書いてあるサプリメントでまずは炎症を押さえておくことが大切です。

オメガ3、EPAやビタミンDは抗炎症サプリメントで皮膚の炎症を抑えてくれる作用があります。当院でも、十分な量を投与することによって、1−2ヶ月の間にかなり皮膚の炎症が改善することを経験しています。まずはこれらのサプリメントで皮膚の炎症を抑えてからプロバイオティクスを追加していくのが安全です。容量に気をつけさえすれば心配な副作用もないので、皮膚の炎症、かゆみなどの症状が強い方は一度試して見られるといいと思います。

アトピー性皮膚炎の根本的治療

オメガ3、EPAやビタミンDは皮膚の炎症を比較的短期間に抑えてくれる効果があります。しかし、それだけでは根本的治療にはなりません。あくまで、一時的に炎症を抑えるだけの対症療法です。

根本的に治そうとすると、きっちりと腸内環境を整え、アトピーの増悪因子である腸管カンジダ菌症や重金属の蓄積を治療していく必要があります。この治療は、先に述べた「死滅反応」のように、治療する時に一時的に症状が悪化するリスクがあります。経験を積んだ医師と相談しながら行うことが安全です。

 

当院におけるアトピー性皮膚炎の治療方針について(小西統合医療内科ホームページに飛びます)