JAMA cardiologyという医学雑誌の1月号に面白い記事が載っていました。サプリメントのあり方を考える上で面白いと思ったのでシェアしたいと思います。
オメガ3という脂肪酸には抗酸化力、抗炎症作用があることはわかっています。しかし、本当にオメガ3のサプリメントの有効性が臨床的に確認できるかどうかとなると別問題です。
オメガ3サプリメントは心血管イベントに栄養を与えるか?
この文献では、今まで発表された文献の中で「オメガ3サプリメントが狭心症や心筋梗塞などの心血管イベントの発症を減らすことができるかどうか」を検討した文献を10本集めてきて、77917人という大人数で統計的に検討し直したものです。このように複数の研究の結果を統合し、統計解析することを「メタアナリシス」と言われます。複数の研究を合わせることで、検討する母集団の人数が増えるため、わずかな統計学的な差異をピックアップできるというメリットがあります。
結論は、オメガ3サプリメントでは心血管イベントは予防できないということです。そして、心血管病を持っている人が予防的な意味でオメガ3サプリメントを内服することは推薦しないとなっています。
一般には「オメガ3のサプリメントは心臓や血管にいい。」というイメージで内服している人が多いのかもしれませんが、科学的には実証できなかったということです。
一方では、医薬品としてのオメガ3製剤(EPA製剤)には心血管イベントの発生率を低下させるというデータは多くみられます。オメガ3製剤が一般のサプリメントと何が違うのかといえば、科学的に比較検討され、臨床データーが積み上げられているという点です。
では、この違いはなんなのでしょうか?
今回、紹介した論文では「オメガ3サプリメント」の内服容量については具体的な記載がされていません。可能性の一つとしては、オメガ3が抗酸化、抗炎症効果を発揮するためにはある程度の高濃度の容量が必要である可能性があります。実際にオメガ3の作用は容量依存性がある(つまり、多く摂取するほど作用が強くなる)ことはわかっています。
つまり、オメガ3のサプリメントは体に良いことはわかっているけれど、動脈硬化を抑えるためにはある程度以上の容量を継続的に内服しないと意味がない可能性がある、ということです。
サプリメントの品質について
当院でも「ドクターズサプリメント」を患者さんの治療に多く使用していますが、どのようなサプリメントでも良い訳ではありません。「治療効果」を期待するのであれば、それなりの高容量を含んだ高品質のものを使用する必要があります。テレビで見たからという理由で目にしたサプリメントを安易に購入されることは絶対にお勧めしません。
一般の人にはサプリメントの質と言ってもなかなか判断することは難しいのかもしれません。しかし、自分の飲んでいるサプリメントがどのような品質のものであるかくらいは知っておく方がいいと思います。できれば医薬品と同等の品質が確認されたものをお勧めします。
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テレビの宣伝を見たからといってすぐに飛びつくのではなく、また逆に「サプリメントなんて」と頭ごなしに全てを否定するのでもなく、科学的な視点を持って客観的に見極める姿勢がとても大切だと思います。
当院での抗酸化、抗炎症治療
当院では心疾患のある患者さんに対しての抗炎症、抗酸化治療を行なっている数は多くありません。なぜなら保険診療である程度の治療が可能だからです。
ただ、例えばアトピー性皮膚炎などに対してはたくさんの患者さんに抗酸化、抗炎症治療は行なっています。実際に、アトピー性皮膚炎の患者さんにもオメガ3のサプリメントを投与することが多いですが、皮膚の炎症が治る方が多くおられます。
そのような場合、血液検査で「活性酸素」を測ると、抗酸化・抗炎症治療で「活性酸素」が低下することが確認できます。治療を行うことで、症状だけではなく検査値が改善するかどうかを確認することも重要です。
病院でアトピー性皮膚炎の治療を受けているけれど、なかなか症状が改善しない場合は、まずはオメガ3サプリメントを試して見られるのもいいと思います。