ヴィヴァルディ:《四季》 作品8の1~4

 ウエルナー・クロツィンガー/ソロ・ヴァイオリン
 カール・ミュンヒンガー指揮/シュトゥットガルト室内管弦楽団

ミリオンセラーとなったイ・ムジチ盤《四季》が世に出る前、既にクラシック・ファンの間で評判になっていたレコードである。これはステレオ盤で、ミュンヒンガー2回めの録音。最初の盤はモノラル録音であったが、いずれもベストセラーになったという。

私がこのレコードの存在を知ったのは独身時代、地方事業所の寮生活をしていた頃、隣部屋の先輩が「いいレコードだよ」と勧めて呉れた時であった。では、とレコード店に行くと発売されたばかりのイ・ムジチ/アーヨ盤が目に付き、何故かこれを買ってしまった。素晴らしいレコードだったので結果はよかったのだが、ミュンヒンガー盤が心のどこかに引っ掛り中々離れない。しかし気持に決着がついたのは随分後だ。東京本社転勤で、趣味の秋葉原通いが始まった頃、ロンドン名盤シリーズで再発売されて漸く買えた。自分にとっては因縁めいた盤なので、愛着があって時々引っ張り出しては聴いている。

演奏はイ・ムジチ盤とは対照的で、こういう言い方が許されるかどうか分らないが、イ・ムジチ盤の持つ自由闊達で流麗なイタリア・バロックの演奏スタイルではなく、几帳面で精妙な楽器の美しさを表現するドイツ・バロックそのものの演奏スタイルではないかと思う。どちらを好むかは嗜好の問題と思う。
イ・ムジチ盤を聴けば、素直に美しい旋律の流れにどっぷり浸かり、ミュンヒンガー盤を聴けば、音楽のち密さに驚き、その繊細な表現に魅了される。