古い技術雑誌を引っ張り出しています。

「だましのワナ」について

面白い記事がありました。

人間はわずかな情報から

なるべく多くのことを知ろうとします。

脳にはそうした情報処理の仕組みが

埋め込まれています。

一を聞いて百を知った方が、

百を聞いて一を知るよりはるかに効率的です。

聞きかじりの話から、

すべてをわかったような気になる傾向を

「認知的節約」と呼び、

誰もがその傾向を保有しています。

あれこれ細かい事実をたくさん集め、

苦労を重ねた末に

わずかな結論を得る実験科学は、

その認知的節約の誘惑を

断ち切ることから始まります。

一方、

人間社会には認知的節約に基づく

俗論や虚構が渦巻いています。

それがある意味で人間の本質の発露である以上、

いつの世も絶えることなく幅を利かせています。

典型的なのが、

ヒトが最も恐れる天災と

病気に関する虚言、妄言です。

たとえば地震。

安政の大地震でも阪神大震災でも、

犬、猫、カラスの異常行動、

異様な雲や大気の発光現象など、

事後になって「そういえば」と判明する

前兆現象なるものが続々報告されます。

阪神地区に数百万の犬や猫がすんでいるとします。

彼らが年に１回程度起こす異常行動なら、

毎日どこかで数千から数万匹が

やっている勘定です。

10年に１度の奇妙な振る舞いも、

毎日数百から数十匹が見せています。

地震の後、

飼い犬が前日に木に登って騒いでいた、

と思い出しても、

それが偶然か地震を感知したせいかは、

わからりません。

この手の誰でも観測できる「宏観現象」を

地震の予知につなげたいという願望はわかるが、

ほとんどは根拠の薄い認知的節約の産物です。

人命を左右する地震対策に

組み込むわけにはいきません。

厳密な検証抜きで、

意図的に人々に認知的節約を促すような

テクニックが、

大昔から詐欺的な商法として息づいています。

こちらの典型は病をたちどころに治す秘薬、

神秘の療法の類です。

何の薬効も証明されていないただの粉や水が、

がんが治るなどという触れ込みで

100億円も売れたりします。

飲んだ、効いた、治ったという、

３つの「た」

を強調する報告を並べ立てた本やビデオで、

患者を誘います。

この3つの「た」の例をどれだけ多数集めても、

その成分の効果を証明するものでは

全くありません。

その成分を摂取しても治らなかった例、

さらに摂取しなくても治った例との

比較検討なしには、

効果を評価することはできません。

「飲んで治った人がこんなにいるんだから･･････」

というのは、認知的節約の害の最たるものです。

薬効についてはゼロを百にもふくらまして

異様に大きく受け止め、

地震などの災害のリスクについては、

何となく予知できうるものと過小に評価します。

人間の脳が持つこうした認知機構の特徴を

行政はもっと熟知して、

防災や詐欺商法を排除する策を

練る必要があります。

もっと科学を尊ぶべきかも知れません。

＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋＋

だましのテクニックに引っかからないように

気をつけないと！

昔々騙されたこともあるから、

自分は絶対大丈夫と自信があっても

相手は「だましのプロ」ですから、

うまい話には一歩引きたいですね。

シニアになったら特に・・・🤣

古い技術雑誌のエッセイ．１２