品質管理者として１０年間の試行錯誤で得た

様々な活動や分析結果を思い出しています。

工場の製造品質は何かと言うと、

一般的には、設計が決めた品質に適合した製品を

作り続けることと言われています。

一見、ごもっともな言い回しですが、

品質管理的には、安定した製品が作り続けられる

仕様で設計することと言いたいです。

設計者が正しく製造品質を理解

しているとは思えないですから・・・

工場で、新製品を立ち上げる時には、

設計者が準備してテスト生産を行っていました。

テスト生産では、量産時並みの数を作ることは無く

少量を生産することで済ませることが常でした。

検査や組立工具などの新設備が仮物であったり、

製作途中の仮設備を使用していることが多く、

生産側で懸念事項を出したくても、

　量産までには完成するので問題ない。

　生産工法の改善で済むので問題ない。

　試算された不良率は許容範囲内で問題ない。

って具合に、問題なしとされていました。

新製品は発売時期が厳守され、

最優先とされていました。

製品企画の担当や営業担当、設計担当からの

強力な圧力に、生産側が勝つことは無理でした。

当然、量産後の新製品は製造原価が上がります。

新製品計画時の製造原価は、

全ての問題がクリアされている状態の原価で

計算され、量産が開始されていきます。

量産開始から、原価計算の更新時までは、

その試算原価のままで量産されます。

実際には、

テスト生産時の問題が解決されることは稀で、

原価差異が発生します。

この原価差異は、経営側からのチェックで

差異の是正が指示されます。

テスト生産を終えて、生産工場で量産が始まると、

設計担当は次の新製品開発を準備するため、

業務を切り替えて行きます。

量産が開始され、問題が解決されていない

状態に対して、生産側は、

　こういう設計だから我慢するしかない。

　言っても無駄だから我慢するしかない。

っと、諦めることに慣れていて、

無理な生産を続けてしまうばかりでした。

原価差異の改善を、

根本的に始末することが必要でした。

生産側で使える権限として、

テスト生産の結果報告書に、

量産ＮＧの結果を書くことが許されていました。

この報告を書くと、量産を開始することは出来ず、

再度、テスト生産を行う必要がありました。

設計担当は計画予算オーバー、次の新製品にも

影響が出るし、営業からも督促されるので、

設計担当からの圧は、熾烈になります。

設計担当との戦いが始まりました。

カッコ良く言うと、待ちから攻めへの転換です。

生産側の攻め道具としては、

いつもの見える化でした。

問題点を、責任部署と問題点でマトリクス化し、

全項目に解決済みマークが付くことで、

テスト生産報告書に量産ＯＫを書く

こととしました。

問題点の記述は、具体的にイラストや画像を表示し、

解決案も添えるなどして、

曖昧な逃げを予防しました。

結果的には、設計担当と品質担当の間で、

落しどころを決めながら、解決に至りました。

最初は非常に大変でしたけど、

次第に、設計担当の間にも周知され始め、

その後のテスト生産での

標準ルーチンになって行きました。

生産側での品質の作り込みが、

少しずつですが、楽に出来るようになりました。

メーカーの製造品質