華蝶仮面?
季衣「ちびちび~っ」
鈴々「うーっ、チビっていうなー!」
春蘭、秋蘭、季衣の三人は鈴々を監視役に市を訪れていた。
鈴々はあいかわらず監視役など忘れて季衣と一緒になって大騒ぎしていたが、いつもはそこに加わるはずの春蘭にはあまり元気がない。
春蘭「……はぁ~」
秋蘭「どうした姉者? 珍しく溜め息など吐いて。……まさかとは思うが悩み事か?」
そんな春蘭をまるで珍獣でも見るかのように覗き込む秋蘭。
春蘭「まさかとは何だ! まさかとは! ……わたしだってたまには考えることもある」
秋蘭「なんと……!? それは驚きだな、姉者に考えることができるとは。……それで何を悩んでいるのだ?」
春蘭「ば、馬鹿にするな秋蘭! ……もうお前には話さん!」
からかわれた春蘭は顔を赤くしてそっぽを向いた。
秋蘭「冗談だ姉者。……おおかた華琳さまが忙しくて構ってくれないというところだろう?」
春蘭「……そんな事ではない。確かに最近、昼は酒造りにかかりきりだが、それでも夜伽にはお声を掛けてくださる」
そっぽを向いたとはいえ、秋蘭の問いには真面目に答える春蘭。
秋蘭「それもそうだな。……ならば北郷殿のことか?」
春蘭「……な!? な、何でわたしがあ、あいつのことなんかで悩まなければいけないんだ!」
今度は図星らしく、さっきとは別の意味で顔を赤くした春蘭が慌てて否定する。
秋蘭「……相変わらず判り易いな姉者は。で、北郷殿がどうしたというのだ?」
春蘭「う……っ。わ、我等が捕虜になりこのような生活をして……だいぶ経つよな」
秋蘭「ああ……そうだな」
春蘭「聞けば我等の後に捕虜となった孫権達は市の警邏を申し出たそうではないか。だが我等は日々することも無く、やることといえば寝るか鍛練を積むかこうして買い物に出るくらいだ」
秋蘭「 (……それは姉者と季衣だけだろう) 」
そう思った秋蘭だが、言うとまた春蘭が拗ねてしまうだろうから口には出さなかった。
春蘭「しかし我等も北郷には恩を受けているのだし……その……なんとか……」
秋蘭「……つまり姉者は自分も何とか北郷殿のお役に立ち気に入られたいと、そういうわけだな」
春蘭「そ、そうではない! わたしもかつては誇り高き魏の将軍だったのだ。だ、だからこそ孫呉の者達に遅れをとるまいと……」
秋蘭「そう照れることもないだろう姉者。なんといっても北郷殿は姉者のご主人様、なのだからな」
春蘭「し、秋蘭!」
さすが双子ということか、ことごとく秋蘭に気持ちを言い当てられて春蘭は言葉に詰まる。
秋蘭「ふふっ、……とはいえ姉者の考えも分からなくもないな。私も北郷殿には返せぬほどの恩を受けているのだし」
春蘭「なっ、そうだろう!」
秋蘭「ならば我等も市の警邏を申し出るか?」
春蘭「……それも考えてはみたが、許しが出ると思うか? 特に華琳さまが……」
秋蘭「……ふむ、確かに華琳さまも素直ではないところがあるしな……。このようなことを話せばおそらく反対するだろう」
春蘭「だろう……だがこのまま何もしないというのも……」
二人が逡巡しながら歩いていると、目の前に小さな子供が走り寄ってきた。
春蘭「ん、何だ?」
その子供は春蘭の顔をじっと見つめると、突然思いついたように大声を上げた。
子供「あーっ、かちょーかめんだー!」
春蘭「な、なにっ!? わ、わたしのことかっ!?」
思いもよらぬ言葉に春蘭は目を丸くする。
子供「だっておねえちゃんのおかお、ちょうちょがついてるもん」
どうやらその子供は春蘭の蝶型眼帯を見て、華蝶仮面と勘違いしていた。
本来の華蝶仮面はもっと顔が隠れているのだが、その子供にはそこまで理解できていないらしい。
もし一刀がここにいればこう言ったかもしれない。ああ、仮面ラ○ダーとラ○ダーマンの違いみたいなものか――と。
春蘭「いや、あのな……わたしは華蝶仮面では……」
子供「……ちがうの?」
春蘭が否定しようとすると、子供は今にも泣きそうな顔で聞き返してくる。
春蘭「うぅ……っ!? むぅ……あ……ああ、そ、そうとも、わたしは華蝶仮面だ!」
秋蘭「……姉者」
相変わらずの突拍子のない発言に秋蘭は頭を抱える。
春蘭「 (この場は仕方ないだろう……なあに、私にまかせておけ!) 」
その自信はどこから湧き出てくるのか、と心配する秋蘭をよそに春蘭は胸を叩く。
しかし、春蘭のその根拠のない自信はあっという間に打ち砕かれる。
子供「ねぇ、いつものやって! いつもの!」
春蘭「い、いつもの!?」
子供は華蝶仮面の口上を期待しているのだが、わからない春蘭はただオロオロとするばかりだ。
秋蘭「 (……正義の華を咲かせるために、美々しき蝶が悪を討つ……) 」
見かねた秋蘭が後ろから小声で助け舟を出す。
春蘭「び、美々しき蝶が悪を討つ……美と正義の使者、華蝶仮面……推参!」
子供「わあーっ! かちょーかめんかっこいいーっ!」
口上を述べて春蘭が適当にポーズを決めると、子供は手を叩いて大喜びをした。
その後ろから秋蘭はそっと近づいて、口に指を当て、しーっという仕草をとった。
秋蘭「よいか……華蝶仮面はいま任についている故、我等のこと皆には内証にな」
子供「うん、わかったー! がんばってね、かちょーかめん!」
子供はすっかり満足して、笑顔で手を振りながら遠ざかっていった。
その姿を見送った春蘭は額の汗を拭うと、やりきったという表情で秋蘭に向き直る。
春蘭「ふぅ……、どうだ! なんとか……」
秋蘭「なってなどいないぞ、姉者。まったく……あまり思いつきでの行動は控えて欲しいのだが」
春蘭「ぐぐぐ……ま、まぁ良いだろう? 結局、気付かれなかったわけだし……ん? 気付かれない……」
秋蘭の苦言に怯みながらも、春蘭は何かを思いついて考え込む。
秋蘭「どうした姉者?」
春蘭「そうだ、気付かれない! 良いことを思いついたぞ秋蘭!」
そう叫んだ春蘭の顔は先程の悩んでいた表情から一転、いつもの春蘭に戻っていた。
秋蘭「 (はぁ……これはまた面倒なことになりそうだ……) 」
春蘭が元気になったことは嬉しかったが、これから起こるであろうことに溜め息を吐く秋蘭だった。
大陸が平定されてから、街には今まで以上に人が集まり日々活気を増している。
それ自体はいいことなのだけれど、人が増えれば争いごとも増え治安が悪化する。それに伴って市の警邏の回数も増える。
そんな内情を知ってか蓮華たちも警邏を買って出てくれたが、それでも人手不足は否めなかった。
で、こうして俺も空いた時間に気分転換も兼ねて市の見回りを行っている。
一刀「それにしてもいったい誰なんだろうなぁ」
歩きながら俺は何気なく呟く。
朱里「ホント、誰なんでしょうねぇ」
横を歩いていた朱里も同じように呟く。
星「……なんですかな、二人とも」
俺と朱里の視線に気付いた星が何か言いたいことでも、という表情で返してくる。
争いごとが増えてから多くなったのは警邏の回数だけではなかった。喧騒あるところ颯爽と現れてはその場を治めて去っていく謎の仮面、そう華蝶仮面だ。
その華蝶仮面も頻繁に現れるようになっていた。
それだけならまだあまり問題ではなかったけれど、どうやらニセモノまで現れているみたいなのだ。
そんなわけで俺は華蝶仮面のことなら、と星と朱里を連れてニセモノの正体を突き止めようと思っていた。
星「正義を掲げる者とはいえ、素性も知れぬとなれば放って置く訳にもいきませんからな」
横を歩く星がさも当たり前のように言う。
うわ、それを星が言うか……なんて思ったけど、口にしたらどんな目にあわされるかわからないからぐっと堪える。
一刀「 (……なぁ、本当に知らないんだよな星? 華蝶仮面は三号までしかいないんだよな?) 」
星「 (くどいですな主も……。今更隠し立てしても仕方ありますまい?) 」
一応他に聞こえないように小声で星に念を押してみるが、本当に知らないらしい。
朱里は星が華蝶仮面だと知っているのになぜ小声で話すのかといえば理由がある。
華琳「ちょっとあなたたち、何をこそこそ話しているのよ」
俺と星との間に身体を割り込ませるようにして華琳が加わってくる。
そう。今日の見回りには星と朱里だけではなく華琳も一緒だった。
見回りに出ようとしていたところにふっと現れて、買いたいものがあるから一緒に行くなんて言ってついて来たのだ。
一刀「い、いや別に……。そ、それにしても珍しいよね、華琳が一人でいるなんてさ」
なんとか誤魔化そうとして話題を変えてみる。
華琳「そうかしら?」
どうやらうまく華琳の気を逸らせたみたいだ。
一刀「ああ、だっていつもは春蘭と秋蘭かそうじゃなきゃ桂花がついてるじゃないか」
自分で言っておいてなんだけれども、これは確かに珍しい。
華琳「まぁ、そういえばそうねぇ……」
言われてみて華琳もそう思ったようだ。
華琳「桂花には酒蔵を任せているし、春蘭と秋蘭はたぶん季衣とおチビちゃんと一緒に屋台巡りでもしてるんでしょう」
一刀「知らないんだ?」
華琳「わたしも編纂に忙しかったから……ってなに? そんなにわたし一人だと気に入らないわけ?」
ヤバイ。みるみるうちに華琳の顔が不機嫌になっていく。
華琳「大体なんでわたしがあなたたちの警邏に付き合わなければならないのよ」
一刀「いや……それは……えっと、なぁ星」
助けを求めようとして星たちに向き直ると、
星「主、ここからは二手に別れるとしましょう。わたしは朱里とこちらへ行きますので」
朱里「はわっ!? せ、星さん!?」
星は朱里の手を取ってまるで逃げるように行ってしまった。
華琳「こっちを向きなさ……あっ!?」
一刀「お、俺たちも行くか」
取り残されてしまった俺は顔を真っ赤にして迫る華琳をどうしていいか分からず、咄嗟に手をとって歩き出した。
一刀「警邏を手伝わせて悪いけどさ、買い物のついでだと思って少しだけ付き合ってくれないかな」
華琳「わ、わかったから……もう少し……ゆっくり歩きなさいよ」
まだ怒っているのか、華琳の顔はまだ赤かったけどなんとか納得はしてくれたみたいだ。
さて、あとは華蝶仮面のニセモノが見つかれば良いけれど……。
だけどそれは無用の心配だった。
華琳としばらく歩いていると人だかりが出来ていて、さらに向こうの方からは男たちの喧騒が聞こえてくる。
一刀「おじさん、何があったの?」
近くにいた人に訳を尋ねてみる。
町人「何っておめえ……って太守様!? いや、またよくある縄張り争いってやつですよ」
どうやら、また店同士がその利権をめぐり、チンピラまで雇って争っているらしい。
急成長を遂げているこの街ではそれほど珍しい光景ではなくなっていた。
しかし、となればこれは華蝶仮面登場のパターンだけど。
???「はーっはっはっはっ!」
突然どこからか高らかな笑い声が響き渡る。
やっぱり出たなっ! 俺は華琳の手をはぐれないようにしっかり握って走り出す。
華琳「ち、ちょっと! 痛いじゃない!」
一刀「ごめん華琳! 少しだけ我慢してくれっ!」
集まっている野次馬たちを掻き分けて、現場へと急ぐ。
チンピラ一「な、なんだお前はっ!?」
ニセ華蝶一号「美々しき蝶が悪を討つ! 華蝶仮面、推参!」
ようやく人の垣根を越えてみれば、男たちが争うことを忘れて異様な物を見るような目で一点を見つめている。
その目線を追ってみれば屋根の上に蝶の仮面をつけたニセモノが、口上もそこそこに腰に手を当てふんぞり返っていた。
一刀「……って、あれ……」
華琳「春蘭!?」
横で同じ光景を見ていた華琳が呟く。
仮面をつけているとはいえその服装、立ち居振る舞いはどう見ても春蘭だ。
しかもそれだけではなく、ニセ華蝶仮面の後ろからもう一人ニセ華蝶仮面が現れた。
ニセ華蝶二号「……同じく華蝶仮面二号、参上」
一刀「し、秋蘭まで……」
春蘭と同じように仮面をつけているけど、服装は明らかに秋蘭そのものだ。
でも不思議に思うんだけど、何でみんな正体を隠すために仮面をつけても服装はそのままなんだろうか?
まるで手抜き……いやいや! あの仮面には不思議な力がこめられてるに違いない! きっとそうだ!
……なんてことを自問自答している間にも、春蘭と秋蘭の二人は次々にチンピラたちを蹴散らしていく。
ニセモノの華蝶仮面とはいえ、魏の猛将夏侯惇と夏侯淵にチンピラ程度が敵うはずも無いのだけれど。
華琳「春蘭! 秋蘭! あなた達そんな格好で何してるのっ!」
ニセ華蝶一号「なっ!? か、華琳さま……っ!?」
華琳が声をあげるとニセ華蝶一号はわかりやすいくらい動揺する。
華琳「一体どういうつもりなのか春蘭、分かるように説明してもらえるかしら!」
ニセ華蝶一号「な、何のことです? 私は春蘭などではなく、か、華蝶仮面ですっ!」
必死に否定してるけど、さっき華琳さまって言ってたよな……。
気がつけばいつの間にかニセ華蝶二号はいなくなってるし。
チンピラ一「おいっ、なんだかわかんねえけど今ならやれんじゃねぇか?」
チンピラ二「おうっ! そうだなっ!」
チンピラ三「よしっ、やっちまえっ!」
すっかり我を忘れているニセ華蝶一号に今までやられていたチンピラたちが飛び掛る。
一刀「あぶないっ!華蝶仮面!」
ニセ華蝶一号「なにっ!?」
とっさに声をあげるが、間に合わないっ! ……そう思ったとき。
???「あいや、待たれいっ!」
飛び掛るチンピラたちとニセ華蝶一号の間に何者かが疾風の如く割って入る。
チンピラ一「だ、だれだっ!」
華蝶一号「姿形は偽りとはいえ同じく正義を志すものとして助太刀いたそう。正義の華を咲かせるために、美々しき蝶が悪を討つ。美と正義の使者、華蝶仮面……推参!」
ニセ華蝶一号「か、華蝶仮面!?」
そこに立っていたのは本物の華蝶仮面だった。
チンピラ三「また一人変なのが増えやがった!?」
???「一人じゃないわよ~ん」
驚きを隠せないチンピラたちの向こうから、さらに声が聞こえる……ってこの声はまずい。
華蝶二号「華蝶仮面二号、参上よ~ん」
華琳「…………ひっ!?」
思ったとおり、筋肉ダルマの姿を見て倒れてくる華琳を受け止める。
華蝶三号「あの……えっと……か、華蝶仮面……三号ですぅ」
朱里まであんな格好を!? といってもあの様子じゃあ半ば無理やりやらされてるみたいだけど。
ともあれ四人も揃った華蝶仮面たちとチンピラたちの戦いの幕が切って落とされた。
こんな光景、愛紗が見たら卒倒しそうだな……。
華蝶一号「はあっ!」
チンピラ一「ぐわあっ!」
華蝶二号「ふんぬうぅぅっ!」
チンピラ二「うわあぁぁぁっ!」
ニセ華蝶一号「てりゃあぁぁぁぁっ!」
チンピラ三「ぎゃああぁっ!」
圧倒的な強さでチンピラたちを倒していく華蝶仮面たち。そんな中、
チンピラ四「何だ? このちっちゃいの。へへっ、震えてるぜ」
華蝶三号「はわっ!? はわわわ……」
華蝶三号なら勝てると思ったチンピラたちが三号に集まってくる。
チンピラ四「いくぜえっ! ……うわあっ!」
しかし飛び掛った瞬間、まるで三号が囮であるように群がってきた敵めがけて次々に矢が飛んできて、チンピラたちを打ち倒していく。
いなくなったと思っていたけど、秋蘭もずっとどこかに隠れていたみたいだ。
こうして五人揃った華蝶仮面たち……いや、もう華蝶戦隊って言っても過言ではない……の圧倒時な力で争いは治められたのだった。
春蘭「華琳さまっ! 華琳さまっ!」
華琳「うぅ……ん……春蘭?」
倒れていた華琳が目を覚ます。
すっかり騒ぎの収まった市の片隅で俺たちは華琳を休ませていた。
春蘭と秋蘭の二人も華蝶仮面らしく裏道から星と朱里と一緒に出てきて、華琳の様子を心配していた。
ちなみに貂蝉も一緒だったが、あいつがいるとまた華琳が倒れるのですぐに追い返した。
秋蘭「華琳さま……」
華琳「秋蘭……そうだ!あなた達まるで変態みたいな格好してどういうつもりなの?」
春蘭「は、はあっ!?な、なんのことです華琳さま!?」
うわ、春蘭まだばれていないと思ってるよ……。
そんな春蘭を華琳もなんだか少し哀れなものでも見るような感じで眺めてる。
華琳「はぁ……。まあ、あなた達の考えていることくらい分かるけれども。秋蘭、あなたまで一緒になるなんてね」
秋蘭「……申し訳ありません華琳さま」
一刀「なぁ、華琳。あんまり二人を責めないでやってくれよ。二人とも悪気があったわけじゃないし……」
街の治安を考えてくれての行動だろうし、俺は二人をかばった。
だけど華琳は何故かそんな俺を不満そうな顔で一瞥してから。
華琳「いいえ、誇り高き魏武の名を貶めたんだから、しっかりとお仕置きしないといけないわね」
華琳にしては珍しく語気が強いのは気のせいだろうか。
春蘭「お、お仕置きですか……」
お仕置きされるのに何故だか嬉しそうに見えるぞ、春蘭。まあ何を期待してるか大体分かるけど……。
対照的に秋蘭はなんだか少し元気がないようにも見えた。
鈴々「あ!? お兄ちゃんだ! お~い!」
季衣「春蘭さま~! 秋蘭さま~! あれ? 華琳さまだ」
一応監視役だったはずの鈴々が季衣と屋台巡りを終えてこちらを見つけて駆け寄ってくる。
鈴々「鈴々、さっきかちょーかめんを見たのだ。かちょーかめん、いーっぱいいたのだ! かっこよかったのだ! 鈴々も仲間に入れてほしいのだ~」
星「ふむ、そんなに格好良かったのか? 私もそのように超絶格好良い華蝶戦隊、是非とも見てみたいものだ」
今までの経緯を知らず興奮気味にはしゃぐ鈴々たちを連れて、俺たちは城へと戻った。
それから華琳たちは魏領へ蓮華たちは呉領へと、それぞれの領地を治めるために戻っていってからしばらくが経っていた。
みんながいなくなって寂しくなるなんて思ってたけど、実際はそうでもなかった。
いや、別に寂しさを感じないわけではなく、感じる暇が無いほど忙しかった。
平和になればなっていくほど雑務が増え、会議と称されるものも多くなる一方だった。
で、今日も今日とて朝からさっそく会議へと狩り出されていた。
今日の議題は最近の治安情勢についてということらしく、相変わらず張り切って報告する愛紗と頷く三人、そして置物二つ。
愛紗「……で次は他領についてですが、治安は概ね良好です。が……」
一刀「何? どうしたの愛紗?」
珍しく口ごもる愛紗。
愛紗「は……いえ、その……噂なのですが……洛陽に現れたらしいのです」
朱里「何がです? 愛紗さん」
気になった朱里がさらに促す。
愛紗「……洛陽に華蝶仮面が現れたらしいのです」
一刀「ぶっ!」
思わず口をつけていたお茶を吹いてしまう。
鈴々「お兄ちゃん汚いのだ~」
星「ほう……」
紫苑「まあ……」
翠「あんな変態がまだ他にもいるっていうのか!?」
愛紗の報告にそれぞれの反応を見せる面々。
朱里「でも噂なんですよねぇ?」
愛紗「確かに……。しかし噂とはいえここだけでなく洛陽にまで現れるとなれば、我らも早急に対策を打つべきかと」
星「なに、良いことではないか愛紗。正義を志す者達が大陸全土に芽吹いているということだ」
愛紗「星よ、前々から思っていたがお主、華蝶仮面に対して少し寛容すぎではないか?」
星「べ、別にそんなことは無いぞ」
二人のやりとりを眺めつつ、あのときの華琳の言葉を思い出した。
お仕置きってこのことだったのか……。なら、あのときの秋蘭の様子も頷ける。
おそらく華琳は春蘭と秋蘭に華蝶仮面をやらせているんだ。
そうすることで軍を極力使わずに洛陽の治安を維持することができるし、お仕置きにもなる。
とはいっても春蘭は喜んでやってそうだから、実質は秋蘭にだけだろうけど。
秋蘭も大変だよな……なんて呑気に考えていたら。
愛紗「ご主人様! 聞いてますか!」
一刀「え!? あ、ああ何?」
気付けば目の前に愛紗と星のアップが迫っていた。
愛紗「ご主人様もあのような訳の分からぬ輩、直ぐにでも捕らえるべきだとお考えですよね!」
星「何を言うか愛紗! 主は華蝶仮面の民を守る心を評価しておられるのだ。なあ、主!」
ヒートアップした二人の論争はいつの間にか矛先をこちらへ向けていた。
愛紗「ご主人様!」
星「主!」
もう一度、華琳の言葉が脳裏によみがえる。
しっかりお仕置きって……あれ、俺も含まれてたんだな華琳。でも、なんでなんだ……?
だけどその答えを考える前に、この凄い形相の二人をなんとかする方法を先に考えなきゃ……な。
長くなりましたが最後に一言!
星がばれないのは愛紗と鈴々と翠だからばれてないだけで皆にはばればれってことなんですよ春蘭さん!