監督:阪本順治 原作:福井晴敏

出演:真田広之 中井貴

 

日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞したことのある俳優4人(真田、中井、寺尾、佐藤)が出演し、話題性は超一流。原作本もベストセラー。コミック版もある。

 

さらに、防衛庁、海上自衛隊、航空自衛隊の全面的な協力を得た話題作。福井晴敏の作品は、立て続けに公開された、「終戦のローレライ」、「戦国自衛隊1594」に続き、この「亡国のイージス」で3作目である。面白くないはずがない。張り切って観た。しかし、がっかりした。


まず、原作を読んでいないためなのか、登場人物たちの行動が理解できない。まだ若い如月(勝地)があんな任務を背負いどうやって自衛隊員としてイージス艦に搭乗できたのか。彼と女性工作員とのキスシーンも唐突だ。そもそも彼女は一体どういう人間なのだ。いそかぜ副艦長の宮津(寺尾)が反乱を起こし、幹部たちも彼に従う理由も分からない。また宮津と某国テロリストたちの関係もよく分からない。原作を読んでいる人には分かっていることらしいが、2時間の映画の中では説明不足だったようだ。


それでも、イージス艦内でのダイハード的アクション映画だろうと期待していた。「10時間以内に要求が満たされなければ、東京湾に特殊弾頭のミサイルを撃ち込む」。テロリストと内閣総理大臣との要求交渉もこの手の映画にはよくあるシーンである。普通は見せしめに実際に東京湾にミサイルを撃ち込み、テロリストたちの本気を観客に示し、サスペンス度を高めるものだが、残念ながら、それがなかった。アクションが艦内だけのアクションで迫力がない。


千石(真田)が、「この艦を守る、それが俺の任務だ」と、カッコいいことを言うが、最後はチャチなCG合成により、艦は爆破され沈没する。こんなラストでいいの?
 

非情なテロリストたちとの壮絶な戦いを見たかったが、「撃たれる前に撃つ」に対して、「撃つ前に考えろ」とか、「考える前に考えろ」とか、わけが分からない。こんな映画に人情論が必要か。


戦艦での反乱はスティーブン・セガールの「沈黙の戦艦」、強力な毒ガス兵器グソーを巡る攻防は、ニコラス・ケイジとショーン・コネリーの「ザ・ロック」に似ている。しかしそのどちらも「亡国のイージス」よりは断然面白かった。どうしようもない似非アクション映画にばかり出ているセガールの映画よりひどいなんて。


自衛隊の宣伝にはなったろう。いそかぜの巡航シーンや2機のF2戦闘機など、やはりカッコ良かったから。


それにしても、最新ハイテク要塞と化したイージス艦で最終的にモールス信号と手旗信号か。皮肉である。笑えるな、これ。笑ってもイージス艦?