1年ぶりぐらいか。K上さんがとすぽ卓球の練習に来た。もうゆうに85歳は過ぎているだろう。ゆっくりと歩きながら市民センター体育館に現れた。施設管理の職員が、ソフトバレー班の会員が、もちろん卓球班の会員も一様に、「おっ、K上さん、久しぶりです!」

 

今日もいつものようにパチンコホールから来たのだろうか。何はともあれ、元気そうでよかった。早速むかしの教え子を指名し練習を始めた。相変わらず上半身の動きだけでボールを打ち返す。バックに来たボールは間に合えば、ラケットを左手に持ち変えて打ち返す。これぞ、K上式、誰にも真似のできないプレーだ。

 

T中学校の新入生が2人とすぽ卓球に加入するという。2人とも卓球は初めて。ラケットをまだ買っていない。シューズも履いていない。2人とも素足だ。T中学校卓球部父母会の会長U氏が2人に自分のシェーク用ラケットを使わせて指導を始めた。

 

本当に卓球は初めてのようだ。レシーブが返ってこない。誰もがみんな最初はそうさ。それでも2人とも嬉しそうにボールを追いかけていた。U氏の後に、今度はレジェンドK上さんが指導する。

 

2人の新入生のうち1人のお母さんが送迎すると言う。しばらく練習を見ていたが、「時々、子ども園で会いますね」と言われた。市民センターの駐車所で青のインプレッサを見て気づいたと言う。こっちはぜんぜん気付かなかったが、ときどき子ども園の駐車場で会っているお母さんだったようだ。少しだけ立ち話しをする。

 

一緒に卓球やってみませんかと誘ってみたが、卓球は一度もやったことがないので、と言う。その後一旦自宅に戻り、終わる頃にまた2人を迎えに来た。父母会の会長U氏にラケットのことをしきりに聞いていた。ネットには、希望の台とラバーを買うと張り合わせて送ってくれる業者もあるのだとか。

 

活動終了後、K上さんが車に乗せて欲しいと言う。東舘町の自宅までと思い駐車場を出た。するとパチンコ屋までという。市民センターからインディライト館まで100メートルもない。インディ駐車所で車を降りて入り口までヨタヨタと歩くK上さん。

 

今でもほとんど毎日パチンコホールに通っていると言っていた。自宅〜ホールをタクシーで往復するのだそうだ。遊ぶのは1円パチンコだけ。1000円で1000発だ。時間がくれば残った球はカードに貯玉する。翌日はまたカード内の貯玉を使って遊ぶ。

 

パチンコホールはK上さんにとってまさに生きがいのようだ。「オレからパチンコと卓球を取ったら何も残らないよ」と笑う。ホールは高齢者に居場所を提供していることになる。