ワースト映画の称号?が与えられるラジー賞。真面目に選んでいるのか悪ノリなのか。たまにはラジー賞(あるいはノミネート作品)を見るのもいいだろう。

 

2005年に観た「アレキサンダー」は04年ゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)に6部門でノミネートされた映画。古代史劇は好きなジャンルだし、監督がオリバー・ストーン。絶対に見て損はしないだろう。気になるのはラジー賞にノミネートされていたことだが、その理由は?

 

 

「アレキサンダー」

 監督:オリバー・ストーン

「プラトーン」や「7月4に生まれて」などの監督
 出演:コリン・ファレル アンジェリーナ・ジョリー

 ヴァル・キルマー アンソニー・ホプキンス ジャレッド・レトー

 

社会派監督として名高いオリバー・ストーンが10年の歳月と製作費200億円をかけた歴史大作であるという。上映時間も2時間58分と長い、長い。途中で少し眠くなってしまった。


「紀元前、2300年前に、はるかインドまで東征した若いマケドニア王を描くスケール豊かな一大叙事詩」とは岩手日報のレビューである。来日したオリバー・ストーンのインタビューを交えてこの映画を紹介していた。当然、好意的な評、それにオリバー・ストーンの会話が記事の大半を占める。


しかし、記者はこの映画が、04年ラジー賞(最悪映画賞)に部門にノミネートされたことを知っているのか。最悪作品賞(以下すべてに「最悪」が付く)、主演男優賞(コリン・ファレル)、主演女優賞(アンジェリーナ・ジョリー)、助演男優賞、監督賞、脚本賞の6部門である。

 

この年、ハル・ベリーの「キャットウーマン」も7部門にノミネートされ、結果「キャット・ウーマン」が最悪作品賞を受賞し、「アレキサンダー」は最悪作品賞は免れた。しかし、社会派の巨匠と言われるオリバー・ストーンに「最悪監督賞」など、受賞させていいものだろうか。
 

ラジー賞ノミネートのためだったのか、200億円もかけたこの映画はこけてしまった。なぜこけてしまったのか。歴史物の「決まりごと」に倣って作れば良かったと思う。英雄はあくまでも英雄らしく、だ。

 

苦悩する英雄、自信なさそうな泣き顔の英雄、同性愛志向の英雄、アラブ女性とのラブシーンで喜々とする英雄、etc。つまり人間らしい英雄はあまりこの種の映画では受け入れられないのだろう。


歴史物で私が最も期待するのは凱旋シーンだ。「クレオパトラ」の凱旋シーンは忘れられないシーンである。この映画にも凱旋シーンはもちろんあったが物足りなかった。CGによる巨大建築物は薄っぺらだった。

 

戦闘シーンにも期待した。前半に1つ、後半にインドでゾウ軍隊と戦う2つの戦闘シーンがあるが、CGを使う早回しのような画面の連続であり、やはり物足りなかった。肉弾戦の迫力が伝わってこないのだ。あの「ベンハー」の戦車レースのような迫力が欲しい。

 

アンジェリーナ・ジョリーは貫禄を示していた。年老いたアンソニー・ホプキンスを久しぶりに見た。プトレマイオス?の役だった。


ラジー賞であろうとなかろうと、このような歴史劇を観ることができるのはうれしい。「グラディエイター」、「トロイ」、「キング・アーサー」。もちろんこの「アレキサンダー」もそれなりに楽しめた。