カーテンコール

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市民劇場の先駆け、遠野物語ファンタジーは今年で49回目。よく続いていると思う。来年はいよいよ第50回、大きな節目となる。

 

遠野物語ファンタジーの約束ごと

・遠野市に伝わる民話や歴史を題材とすること。必ずしも「遠野物語」にこだわらなくともよい。脚本(原作)は遠野市出身者または在住者に公募する。

 

・オーケストラピットに楽団やコーラス隊が入り、音響効果は生演奏と生コーラスであること。作曲、編曲もスタッフで行う。合唱グループが複数団体参加した年もある。

 

・キャスト、スタッフで市民200〜300人が参加すること。今回はなかったが、音楽の演奏に遠野高校と遠野中学校の吹奏楽部員が数十名入った年もある。コーラス隊も多く、ピットが満員状態だった。

 

・郷土芸能団体、遠野市民バレエスタジオの生徒が出演すること。今年の郷土芸能は下組町の「下同心音頭」(十手おどり)だった。バレエでは淵の精?を象徴的に表現していた。

 

・台詞はすべて遠野弁であること。しかし、今回は遠野弁どころか台詞を棒読みのキャストがいたが、声がよく出ていて聞きやすかった。市民劇場、これもありだ。

 

遠野物語ファンタジーは土曜日の夜、日曜日の午前、午後と3回の公演だ。2日に3回公演は特にキャストにとってはハードであろう。チケットを売る人たちも大変だろう。2回公演でいいのではないかと思う。

 

過去の公演の記録に観客数も記載されている。一番多かったのは昭和52年第2回の3500人。次が平成4年第17回の2900人、第3位が昭和53年から57年、昭和61年から平成2年までなどの2800人だ。

 

逆に、最も少ない観客数は、令和3年の645人、次が平成28年の802人、そして昨年の952人がワースト3だ。多い時と少ない時で差があり過ぎる。観客数3500人や2900人は本当だろうか。

 

遠野市民センター大ホールの客席数は924席。3回公演ですべて満席だったとしても2772人だ。さらにオーケストラピットのために前方の座席を200席ぐらい外しているはずだ。3500人や2900人は物理的に入らないと思う。

 

あまりにもどんぶり勘定。来年第50回のパンフレットは過去の記録を検証してより正確に近い数字に訂正すべきでないだろうか。第2回のスタッフキャストの参加数も520人とダントツだ。昨年は250人、令和3年は120人だった。

 

今年の観客数はどうであろうか。2回目公演の今日10:30の回は、見たところ後ろの方は空席が目立っていた。ざっと見で、500人に満たない観客数だと思うが、日曜日の午前中公演はこんなものなのか。

 

さて、今年の「卯子酉の淵」の感想も少し書いておこう。

演出の小林立栄氏が「遠野物語ファンタジー版のロミオとジュリエット」というように、基本は悲恋物語である。ご当地の下組町は遠野市内の西の方にあるから「ウェストサイドストーリー」でもあるなと、一人かってに悦に入る。

 

卯子酉(うねどり)神社は縁結びの神として有名なのだとか。結局2人は結ばれたのか結ばれなかったのか。卯子酉の淵から生還したのはファンタジーとして喜ばしい。さらに希望の光に包まれた2人の未来は明るいだろう。「ロミオとジュリエット」や「ウエストサイドストーリー」のように2人ともあるいは1人が亡くなる展開もあっただろうが、あれでよかったと思う。良いエンディングだった。

 

舞台装置は無駄をそぎ落とし、象徴的ですっきりとしたものだった。とても見やすく、そして綺麗だった。カーテンコールの舞台にも見えるグリーンのオブジェが草木を象徴的にあらわす。卯子酉神社の祠も階段もすっきり、あれでいい。大道具のスタッフの皆さんの感性が伝わってくる舞台装置だった。

 

生演奏での音響効果は例年以上に多かった。例年の倍ぐらいか。全部で24演奏もあった。緞帳が上がる前の「序曲」が長過ぎて、開演前の心地よい緊張感が引っ張られ過ぎた。気持ち的に少し弛れてしまった。ほどほどがよいだろう。序曲が大作のようになっていては、それこそ“始まらない”。

 

第2幕に演奏される「ここは遠野路」、「下同心音頭」(いずれも故・阿部充氏 作詞作曲、編曲 新田光志氏)の演奏は良かった。来年第50回を記念して、遠野物語ファンタジーも変わっていいだろう。テーマソングも「偲郷の歓び」から「ここは遠野路」に変えるのもいいのではないか。個人的にはそう思う。「偲郷の歓び」は楽譜を見ても見なくても歌えない。サビのところだけはくちずさむことができるが。。

 

いずれ、多過ぎた感のある音楽だったが、効果的にはまさにズドンときたのが多い。とてもドラマティックで骨太の演出と相まって随所でハマっていた。まあ、一部余計なのもあったと思う。舞台に集中していると突然音楽によって思考の流れがストップしたり。

 

来年第50回の記念公演を楽しみに待ちましょう。