「invertⅡ」by 相沢沙呼

 

霊媒探偵城塚翡翠シリーズ第3弾。invertとは「ひっくり返す、逆転」などの意味。inverted detective storyとは倒叙推理小説。そう、犯人は最初から分かっている。犯人視点で物語が進行する。探偵役登場。どうやって犯人を追いつめていくか。面白い。これがミステリーの1ジャンル、倒叙ミステリーだ。

 

お薦めは「扉は閉ざされたまま」(石持浅海)、「容疑者Xの献身」(東野圭吾)、そしてこの城塚翡翠シリーズ(相沢紗呼)。

 

本書には『生者の言伝』(中編)と表題作『覗き窓の死角』(長編)の2話が収録されている。美少女探偵、城塚翡翠(じょうづかひすい)があざといキャラで大活躍するも、『覗き窓の死角』では涙する。親友になりつつあった詢子の罪を暴かなければならないからだった。

 

最強のバディを組むのは千和崎真。こちらも女性であり、微妙な関係ながら見事なワトソン役を務める。378ページでは驚いた。千和崎真が殺された?夢落ちか。いや、違う。翡翠と真のinvertシリーズは終わってしまうのか。まだ3冊目なのに。そう思った。

 

 

 

 

「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」by柚月裕子

 

作者の柚月裕子氏は1968年岩手県釜石市に生まれ、転勤族の両親の異動により県内をあちこち転校し(宮古にもいた)、20代前半で結婚・子育て、現在は山形市に在住するという。今や飛ぶ鳥射落とす勢いのミステリー作家だ。最初に読んだのは「臨床真理」。『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。

 

児童養護施設の施設長が、福祉行政管理者が、はたまた精神科医が、そこまでやるかよ、という仰天展開。とても重くて、暗いテーマだ。読んでいて切なくなる。実際その分野で仕事をする人は読めなくなるような内容だ。ラスト近くにさらにおぞましい展開が待つ。

 

「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」は柚月裕子の短編集。不祥事で弁護士資格を剥奪された上水流涼子(かみづるりょうこ)。IQ140東大卒 の貴山をアシスタントに、探偵エージェンシーを運営する。殺しと傷害以外なら何でもありの闇の「必殺仕掛人」。あり得ない依頼が面白い。

 

やくざの世界といかさま将棋、プロ野球賭博、未来が予想できるという怪しげな経営コンサルタントなど、作者の引き出しの多さに脱帽。よく様々な事象を研究しているようだ。昨年テレビ放映化されたという。アマゾンプライムで配信されているようだ(有料で)。時間があったら見たい。