メールの一件であたしは
ケンイチに縋るのをやめた。
もう、自分からは連絡しない。
そう決めた。

小さい頃からお母さんに
やっちゃだめって言われる事程
やりたくなって仕方なくて
こっそりやっては見付かって
よく怒られてた。

そういうのって少なからず
恋愛にも出ると思う。

相手が自分に興味が無ければ無い程
冷たくされればされる程
分からなければ分からない程
危険であればある程
気になって気になって仕方がない。

欲しくて欲しくて仕方がない。









「ん?」

「へ?」

「何見てんだよ」

「見てない」

「見てっから目合ってんだろ」

「そうとも言う」

「そうとしか言わねえよ」


そんな事考えてたら一匹狼を
眺めていたらしく文句言われた。


「あれ?手荒れてるね?」

一匹狼の手がガサガサだった。
ところどころ切れてるし。
まるで主婦の手荒れみたいに。


「あー。‥洗い物やるから、それで。」


‥まるで主婦だった。


「へ?洗い物やんの?やんきーなのに?」

「やんきーじゃねえからやるんだ。」

「そうなの?」

「いや、洗い物やるやんきーもいるかもな」

「どっちだよ?」

「俺はやんきーじゃねえ」


あれですね、
本当に天然な子が
「「あたし天然じゃないもんっ!」」
って言うのと同じですね。分かります。



あー、そういや一匹狼家
母子家庭だって聞いた事あるなー。



「家事手分けなの?」

「そう。おかん忙しいから、兄弟で手分け」

「へえー。まるでいい子!」

「俺はいい子だよ」

八重歯を見せて笑う一匹狼。
かわゆし。















本当謎な男だ。
所謂やんきーなのに、読書趣味だし
所謂やんきーなのに、まるで主婦だし。

フトした瞬間に見せる悲しそうな
物思いにふける顔とか特に。

何考えてんのか分かんない。
普段何をどう思って何してるんだろう?

気になって気になって仕方がない。






‥‥欲しくて欲しくて、仕方がない。



+



まだあたしは
ケンイチを吹っ切れきれずにいた。

別れたあと会話はなかったものの
ちょくちょくメールはしてた。

と、言ってもそれは
あたしが些細な用を見つけては
メールを送って返信を待つだけの内容。


今日も些細な用を見つけて
ケンイチにメールを送ってみた。

1時間後返信がきた。
付き合ってた時は2・3分で
返ってきたのに。

どうやら今日はケンイチの家に
部活の友達が泊まりに来ていたらしく
それで返事が遅くなったと言う話で

<<じゃあ、メールやめた方がいいかな?邪魔じゃない?>>

20分後。

<<うんー。まあ正直な!また今度でいい?>>

<<大丈夫だよ!ごめんね><>>



返信も無しにメールは終了した。
付き合ってる時は友達と遊んでても
友達が泊まり来てても
邪魔じゃない?と聞くあたしに
ケンイチは大丈夫!余計な気遣うな!
って絶対言ってくれた。



別れたらこんなものなのか。
冷たくされればされる程
追い掛けたくなるのはなんでなんだろう。


口約束の儚さを刹那さを
身をもって体感した。


+



この時既にそうだったのかも知れないが
この時点で気付く程場数を踏んでなかった。
故に気付くのはもう少しあと。



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