ドキュメント08-16
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のぼうの城

野村萬斎演じる主人公のキャラクター設定がたまらなく痛快。

現代日本の会社で働くサラリーマンに重ね合わせると、彼のような生き方をしたら即叩かれてつまはじきにされること間違いなし。

自分が正しいと思うことを信じて貫く、それに仲間が志を同じくして一緒に戦ってくれる、そんな状況が全く望み薄の現代において、この映画は一種のファンタジーなのかもしれない。

長いものに巻かれない、大きいものに合わせない、あえてノーと言える日本人になることが、今の世の中では何と難しいことか。でもかつて、この国には自分の信じるもののために命を投げ出していった人たちが山のようにいて、私たちの命はその上に成り立っている。

現代では、彼らはいみじくも主題歌の「ズレてる方がいい」と夢物語に語られるのかもしれないけれど、今わたしが日々暮らすこの土地に、その生き方が別にズレてる生き方じゃなかった時代もあったんだということを忘れないようにしよう。そう思った。

最強のふたり

大富豪の白人と、貧乏な黒人。
事故で車椅子生活を余儀なくされた白人と、健康そのものの黒人。
家族に恵まれない白人と、家族に悩まされる黒人。

観ているうちに人種とか、その他諸々の雑多なステータスは関係なくなって、偶然出会ったふたりの人間の、一瞬の触れ合いから生まれる生命のきらめきみたいなものが浮かんでくる。

何かに似てるな、と思って思い出したら、借りぐらしのアリエッティだった。

人間の人生においてほんの一瞬の出会いが、その人の人生を丸ごと変えることもある。

人生って不思議だし、人間って面白いし、生きてるといいこともある。ずっと一緒にいなくても、繋がっていられる。(これは半分私の希望も入ってるけど)

ラストシーンの主役ふたりの、お互いを見つめ合う笑顔に、今年のベストスマイル賞をあげたい。

母の肖像

久しぶりに実家に帰って、母と一緒に犬の散歩に出掛けた。

先月末に、飼っていたもう一頭の犬が老衰で亡くなってから、今いる犬は元気がない。

ごはんもあまり食べないし、だからかうんちもあまりしないという。

今日は、何故か二回もうんちをした。両方とも量は少ないが、この二日してなかったそうで、母は喜んでいた。あなたが一緒に散歩に来たからかしらね。

犬のリードを持って歩きながら、確かに以前と比べて、リードを引っ張る力が弱くなっているな、やっぱり元気がないなあと考えていると、後ろを歩いている母が、急に可愛いねぇ、と声を上げた。振り向くと、私の方を見てニコニコしている母がいた。お尻がぷりぷりしてて可愛い。母がもう一度言った。犬のことかと思って訊き返すと、私のことを言っているのだという。

世間一般からみれば、四十近いいき遅れのおばさんをつかまえて、可愛い、という表現をするこの人は、ああ、本当に、間違いようもなく、私をこの世に連れて来てくれた母親なんだなぁ。私は何をどうしても、この人の娘なんだなぁ、と考えたら、急に涙が出てきた。

残された犬は、もしかしたらもう長くないのかもしれない。母と一緒に散歩に出掛けて、可愛いねぇ、と言ってもらえることも、もう何回もないのかもしれない。

この世に、無条件に自分を可愛いと表現してくれる人が何人いるだろう。その人と一緒にいられる時間はどれくらいだろう。家族というのは、どこにでもあるようでいて、実はどこにでもあるわけではないものなのだなぁという、至極当たり前のことにようやく気づかせてもらえた夏の夕方だった。
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