キリンとクジラはどちらが面白いか(仮題) -2ページ目

キリンとクジラはどちらが面白いか(仮題)

徒然なるままに
日暮し硯に向かひて
心にうつりゆくよしなし事を
そこはかとなく書きつくれば

あやしうこそモノラル録音


※移転しました
https://note.com/fatrabbit


そろそろひな祭りが近づいてきましたね。
ひな祭りといえば縄跳び!
ってことで今回はメリーゴーランドについて考えてみた。

こどもの頃「メリーゴーランド」と覚えさせられて、大人になって実は「メリー・ゴー・ラウンド」だったと知ったときは驚いた。
どのくらい驚いたかというと、まあ言うほどでもなかったな。
ここではめんどくさいので「ミニー」と呼ぶことにします。

ミニーに関する長年の疑問がひとつ。
なぜミニーは回るのか。
ミニー、お前はなぜ回るのか。
ミニー、ああミニー、どうしてあなたはミニーなの?

まず考えられる理由は、予算の問題だ。
ジェットコースターとかなんちゃらマウンテンとかは見るからに大袈裟でカネがかかっている。
あんなもん作るのに一体いくらかかるのか。
それに関連して、もう1つの理由は省スペースだ。
ジェットコースターとかあんなもん、正直じゃま。
その点ミニーは縦にも横にもこぢんまりしている。
同じ周回コースを何度も通ることによって見事に省スペースを実現している。

さらにもう1つの理由。
それは「眩暈」だ。
「めまい」とも読むが、ここでは「げんうん」と読んでいただきたい。
眩暈というのは専門用語で"目を回して楽しむ遊び"のことである。
ブランコとかシーソーとかもこれだ。宙に浮くような、地に足つかないような感覚を楽しむものだ。
公園や遊園地にある遊具や乗り物はたいがいこのたぐいに分類される。
それをもっとも効率よく形にしたのが、ミニーである。

と、ここまでで第一の疑問は解決したが、ミニーにはまだ大きな疑問がある。
ミニーに関する第二の疑問は、なぜ馬なのかだ。
回転木馬というように、ミニーには馬が採用された。
なぜ犬じゃないのか。
なぜアルパカじゃないのか。
なぜ自転車じゃないのか。
ミニー、お前はなぜ自転車じゃないんだ。

まあアルパカじゃない理由はすぐにわかる。
日本にアルパカはいないから。
…ん?いやちょっと待てよ、そもそもミニーは日本製なのか?
いやいや、どう考えてもミニーはアメリカ製じゃないか。
どう考えてもウォルト・ディ○ニー社製じゃないか。
まあたぶんアメリカにもアルパカはいないからそこはどうでもいいか。

じゃあなぜ馬なのか。
恐らく、最初にミニーを作った人は馬フェチだったんだろう。
「自転車?なにそれ?馬のが早いし」とかそんな人だったんだろう。
仮にその人をウマーさんとしよう。
ウマーさんは世界初の遊園地を作るために呼ばれた。
そしてプロデューサーに頼まれた。
「なんかスゲーの作ってよ」と。

ウマーさんは考えた。
プロデューサーから預かった開発資金は2000円(当時)。
このお金で何が作れるのか。
ウマーさんはまず競馬に行った。やはり馬は癒やされる。
我を忘れて馬を眺めていると、いつの間にか手元にあった2000円は2200円にまで膨れ上がっていた。
ウマーさんは確信した。
「いける、これならいける!」

開発にとりかかったウマーさんはまず中古の洗濯機を買った。
2000円だった。
ウマーさんは洗濯機を分解し、中のモーターを取り出した。
そこに廃材屋でもらった板や鉄パイプをひっつけ、土台となるものを組み上げた。
頭の中は競馬で一杯だった。

気がつくと、そこにはまるで小さな競馬場のようなものが出来上がっていた。
ウマーさんは思わず叫んだ。
「ウマー…っ!!」

運命の試運転の日。初めてプロデューサーの前で実演する時がやってきた。
緊張と興奮でウマーさんはいてもたってもいられない。
はやる気持ちを抑え、起動スイッチを押す。静かに回り始めるモーター。鉄パイプと板の擦れる音が響く。
回る馬、馬、馬。ウマーさんは興奮を抑えきれず思わず自分も乗ろうとした。
が、その時。
プロデューサーが言った言葉は思いもよらないものだった。
「…これ、回転方向は一定にはできないの?」
うかつだった。
こんなところに落とし穴があったとは。
そうだ…。洗濯機のモーターを使ったんだ…。
馬は少し回ると逆回転し、また少し回ると逆回転をしていた。
プロデューサーは言う。
「あのさ、洗濯機じゃないんだから」


この日の事件、俗に言う"洗濯機の悪夢"をきっかけに、ウマーさんが洗濯物を手洗いするようになったのは言うまでもない。


そんな苦労の末に出来上がったアトラクションを、ウマーさんは「ウマー・ザ・グレート」と名付けた。
自分の名前を冠した自信作だ。
プロデューサーにも気に入ってもらえた。プロデューサーは言う。
「ネーミングセンス無いな」

プロデューサーによって決められたこのアトラクションの名前は「メリー・ゴー・ラウンド」
メリー・ゴー・ラウンドをメインアトラクションに据えた世界初の遊園地は大盛況を博し、世界中に遊園地が広まった。


この大成功の影にウマーさんの涙があったことはもはや誰も知らない。


ショッピングカートならカラーミーショップ