僕は小さい時から手品をするのが好きだった。人に見せて、驚いた表情でこちらを見てくるのが快感だった。お父さんに買ってもらった手品用のサイコロは、角がすり減って、元は白かった表面も、少し黒がかかった。サイコロを手の平、コップの中、ハンカチの中から消す為にいっぱい練習して、いっぱい褒めてもらった。お父さんは僕のファンだと言ってくれた。

両親が離婚してから丁度2週間が経った頃、家に1本の電話が入った。そしてそれからお母さんは、自分の部屋から出てくることはなかった。

置き去りにされた僕と、妹弟は、震えたおばあちゃんの口から真実を聞かされた。その内容を本当に理解出来たのは、僕だけかも知れない。むしろそうであってほしかった。

「自殺」
その単語を聞いた途端、世界が凍りついたかのように感じた。それは僕の身も体も同じだった。
あの時質問に答えていれば、お母さんとお父さんは仲直りできたのかな。あの時質問に答えていれば、お父さんは自殺なんかすることなかったのかな。僕が殺した。僕が。

家族が囲んだリビングのテーブルには、もう僕しかいない。そこでサイコロを振った。そのサイコロに自分の感情を押し詰めるように、何度も、何度も、何度も。出た目は6。当時僕は14歳。

あの時から6年が経過していた。