まもなく、あたりは起伏に富んだ、土色一色の地形となった。うしろへ去っていくサボテンを眺めながら、ジェイコブはシートにもたれかかり、ゆったりとしたドライブを楽しんだ。いまになっても、彼の体はかすかに、まるで洋上にいるかのように揺れていた。
丘の向こうに、青く輝く海が見える。うねる道路を登って会合場所に近づいていくにつれ、海に出てボートに乗りたいという思いがつのった。ああ、コククジラが体をくねらせ、尾ひれをふりあげて、大移動をはじめるところを見たい。群れのリーダーが歌う鯨の歌を聞きたい。
丘のひとつをまわりこむと、道路の両側に帯状の駐車場があり、ジェイコブの乗っているのと同じような小型電気自動車が、ずらりとならんでいた。丘の頂上には、何十人もの人々が立っていた。
ジェイコブは、右側の自動誘導路《ガイドウェイ》に車を乗り入れた。そこに入れてしまえぱ、速度をぐっと落とせるし、道路から目を離しても平気だからだ。いったいここで.なにが起きてるんだ? 道路の左側では、ふたりのおとなと何人かの子供が車をおり、ピクニック・バスケットや双眼鏡をとりだしている。興奮しているのがひとめでわかった。典型的な〝週末の行楽に出かげてきた家族〟のようだが、全員が銀色に光るローブと金色の魔除けを身につけているところがちがっている。丘の上の一団も、ほとんどが同じような格好をしていた。彼らの多くは望遠鏡を手にしており、道を先に進んだところにある、ジェイコブの位置からは右手の丘がじゃまになっかをにらんでいた。
その右手の丘には、やはり一団の人閘がおり、こちらは穴居人の扮装をしていて、羽飾りをつけていた。とはいえ、すっかりクロマニヨン人のスタイルをしているわけではない。石斧や石のヤジリをつけた槍のほかに、望遠鏡をはじめ、腕時計、ラジオ、メガフォソなどを携行していたからである。
ふたつのグループが別々の丘の上に集っているのも、驚くにはあたらない。〈開化派〉〈毛皮派〉が意見を同じくするのは、ただひとつ、地球外種族居留地に対ずる憎しみだけなのだ。
ふたつの丘のあいだの、ハイウェイを登りつめたところには、巨大な看板がかかっていた。
ババ・カリフォルニア地球外種族居留地
要観察者の許可なき立ち入りを禁ず
はじめての訪間者は情報センターに立ち寄ること
呪術的・原始人的装束着用は認められない
〈毛皮派〉は情報センターにてチェックを受けること