大掃除のふたり   ―――見守る年末―――



 ちょっと玲、なめてるの?殴っていい?


「・・・・・・」

 『大掃除するから手伝って』なんていう、毎年恒例の玲からのお願いで玲の部屋に着た俺は、しばし呆然と立ち尽くした。

「宗ちゃん、早くしないと夜になっちゃうよ?」

 夜になっちゃうよ?とか言ってる玲は可愛いけど、でも、いや、早くしても確実に夜になるよ?だって・・・。

「玲さ、何したいの?」

「大掃除」

 俺的に言う大掃除は普段洗わない網戸洗ったり(これは両家のイベントとして先日家族総出で行われた)、窓を拭いたり、カーテン洗ったり・・・って言うことなんだけど、玲の言う大掃除は、いわゆる部屋の片づけ。

「玲さ、どこにこんなにいっぱい服しまってたの?」

 床中足の踏み場がないほどに服が敷き詰められている。

「クローゼットだよ」

「・・・・・・」

「宗ちゃん?」

 ここにまたしても性格の差が出た。俺はA型、玲はO型。って、そんなんで性格は決まらないと普段は思っているけど、玲といるとふとそんなことを思いだしてしまう。

「とりあえず、着る服と捨てる服に分けて、それからしまう」

 俺はごみ袋を持ってきて、玲に服を選別させる。

「えっと・・・これは・・・」

「こんなスカート履かないだろ。はい、ごみ」

 玲は選別するのも遅いから俺がどんどん選別する。玲に着せたい服、着せたくない服。俺の前でだけ着てほしい服、外で着ても支障ない服。

「ああん、そのスカートは・・・」

 俺がバンバン選別していると、玲が焦って俺がごみ袋に放り込みかけたスカートの端を握る。

「なに?ちょっと短すぎるよ?」

 手にしたスカートはたぶん、玲が中学生くらいのときから持っているものだ。玲は背は高くなったけど、太ったり痩せたりはほとんどないから履けるといえば履けるけど、短すぎるよ。

「それは・・・とっとく」

「履かないのにとっておいたって仕方ないだろ?」

「だめ!とっとくの!」

 いつもはすぐに折れる玲が今日は食い下がる。

「なんで?」

「だって・・・それは・・・」

「なに?」

 玲が頬をほんのり染めて恋する女の子みたいな顔になったから俺は驚いた。

「それは、思い出があるからダメなの」

 そう言うや否や玲はスカートを俺からひったくってクローゼットの奥底にしまい込んだ。

「まあいいよ、スカートの一着くらいは。ほら、それより早くして」

 大量の洋服を片付けた後は、参考書や小説、アルバムが詰め込まれた本棚の整理。高校時代の参考書も思い切って捨てて、読み終わった小説も資源に出すことにした。

「見てみて、宗ちゃん」

 でも・・・はっきり言って進まない。玲はアルバムをめくっては思い出に浸っているため、まったく掃除は進まなくなった。

「アルバムばっかりめくってないで早くしてよ。俺、帰るよ?」

「ああん!だめだめ!」

 立ち上がりかけると、玲は慌ててアルバムを閉じて俺の腕を掴んだ。玲の膝からばさりとアルバムが落ちた。

「あ・・・」

 開いた場所に貼ってあった写真で、俺ははっと気が付いた。

「玲・・・さっきのスカート」

 玲が俺の視線を辿ってアルバムを見る。

「うん!宗ちゃんが初めて部活でレギュラー入りしたシーズンの優勝祝いの打ち上げで履いたやつ」

 それは俺が中学2年で玲が中学1年の冬だった。短いスカートにタイツを履いた玲は可愛くて、俺はチームメイトたちの視線にイライラしたのを思い出した。

「ね?思い出すと捨てられないでしょ?」

 玲の上目遣いの視線にやられた俺はそっけなく返事をして残りの大掃除を黙々とこなした。


「じゃあ玲、明日はバイトだからね」

「うん!」

「寝坊しないでよ」

「起こしてね!」

 今年も大晦日までバイトの予定で埋まった俺たちはきっと除夜の鐘が鳴り終わるまで一緒にいられるだろう。


 玲、3年後の大晦日はきっと俺たちふたりきりだよ。きっとっていうか、絶対ね。