我が家のRoots(not缶コーヒー)

☆第一話・年末の我が家・前篇☆ 語り、次女亜紗子(あさこ)

「おかえりぃー」

 まるで今朝出て今帰ってきたような出迎えられ方をする、年末でおよそ1年ぶりの我が家。姉妹の中で最後に家に帰ってきたらしい私を出迎えた母は二日前まできていたはずのきりりとしたスーツを脱ぎ捨て、自慢の着物姿をばっちりと決め、孫へのお年玉(18か月・金額千円)以外全く何の準備もしていなかった。

 母は昔はかなり美人だったらしい。168cmの長身で今だって52歳の割にはそこそこのスタイルは保っている。

「・・・ただいま」

 先に出向いた旦那の実家に旦那を残し、ひとり神奈川の実家へと戻ってきたのは31日のこと。25日に東京都内のホテルで行われた親友の結婚式のために、今年は年末休みを一日繰り上げての帰省となった。

「あら、周平さんは?」

「ん、盛岡に置いてきた」

 はるばる山口から東京へ戻り、結婚式とクリスマスを満喫する一泊ののち東北新幹線へとび乗って岩手県は盛岡市へ。そして旦那を置き去りに、私は一人神奈川県の片田舎の実家へ帰ってきた。別に旦那やその家族と仲が悪いわけではない。私と旦那様は、大概にして自由なのだ。その結果が、この毎年の帰省スタイルに現れているといってもいい。

「亜紗子、あとで買い物おねがーい」

 日常はバリバリに運転し、バリバリに働いて、曲がりなりにも大手企業の人事部長なんていう肩書とか持っている母は、日常生活において、面倒なことは夫と娘たちを使って徹底的に避け、楽に生きることにかける天才であると思う。

「お母さん一緒に行く?」

「うん、もう支度できてるから早くして。暗くなったらめんどくさいし」

 母の言う“あとで”は往々にして5分後くらいに訪れることが多い。私は荷物を置くのもそこそこにとりあえずはリビングでそれぞれこき使われている姉とふたりの妹と、肩身の狭そうな父に挨拶だけはしていこうと顔を出した。

「あ、亜紗ちゃんおかえり」

 年末年始休みを持たない忙しそうな姉が出勤準備をする横で下の妹は18か月の息子の面倒を見つつリビングの片づけに追われ、料理上手である上の妹は毎年恒例とばかりに年末年始の年越しそばからおせち料理までのすべてを一手に押し付けられてキッチンから出るに出られないようだった。

「ただいま・・・着たばっかで悪いけど、ちょっとお母さんと買い物行ってくるね」

「いいよいいよ。っていうかごめんね。ゆっくり座らせてもあげられなくて」

 自分が悪いわけでもないのに姉妹は口々に謝る。

「亜紗ちゃんこれだけお使いお願い」

 キッチンから顔を出した上の妹の明季子に買い物メモを手渡され、可愛い甥の頭をなでる間もなく、車の免許はあるが長年ペーパードライバーの父がなぜ買ったのかわからない左ハンドルの外車に着物姿の母をのせて近所の大型スーパーへと足を運んだ・・・そう言えば、父の姿を見かけなかった・・・どこへいったのだろう?





後篇に続く・・・