タクシードライバーを観るのは20年ぶり。ベトナム戦争帰還兵を扱った映画がみたくなり思い出した。監督はマーティン・スコセッシ。

 

アマゾンプライムで観ようとしたら、タイトルの下にアマゾンが作成しただろうあらすじがあり、その下に検索ワードなのか「外国映画・ドラマ・不安・不気味」と書いてあった。不気味、、そうだったっけ・・まったく思い出せず。娼婦アイリス(若干13歳のジョディ・フォスター)とポン引きのスポーツ(ハーベイ・カイテル)の二人のシーンだけがかすかに記憶に残っていた。

 

それはアイリスがスポーツにすべてを明け渡し、部屋の真ん中で抱き合っているシーン。ポン引きが娼婦と関係を持ちながら娼婦を情であやつり働かせるよくある構図だが、二人は完全な、奇妙な安らぎに包まれていた。ハーベイ・カイテルの演技は完璧だった。いまの表現でいうと「人を沼らせる」達人。それが印象的だった。そのほかはよく理解できなかった。

 

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今回は良くも悪くもどのシーンもフラットに観なおせた。その結果、主人公のトラヴィス(ロバート・デニーロ)が精神的外傷か肉体的外傷かが原因で起こす一連の行動、けれど外傷のことは一切説明していない映画という見方ができるのかもと思った。

 

名誉除隊(本人曰く)でベトナム戦争から帰還したトラヴィスは不眠症のためニューヨークの街で夜勤のタクシードライバーとして働き始め、選挙事務所で働くベッツィ―(シビル・シェパード)に「気品」を感じ、関心をもち、お茶に誘う。ベッツィーはいわば「高嶺の花」でそう簡単に男の誘いに乗らなそうなのだが、トラヴィスに何か感じるものがあり、承諾する。

 

カフェにて。

トラヴィス:俺たちの間には強く感じる何かがあった。だから話しかけたんだ。何も感じていなければ声などかけなかった。
勇気がいることだし。

さらにトラヴィスはベッツィーの同僚の男についていう。

トラヴィス:彼との間には何もないと感じた。・・・君もそう感じる?(強く感じる何かを感じる?)

ベッツィー:同じことを感じたわ。でなければここにきていない。

 

うーん。かっこいいね。直球がかっこいい。ベッツィー、美し!

 

 

ベッツィーはこんなこともいう。

ベッツィー:思い出した。クリス・クリストファーソンの歌。「予言者で麻薬の売人。事実と作り話が半々の歩く矛盾・・・」

トラヴィス:俺のこと?

ベッツィー:他にだれがいる?
トラヴィス:俺は麻薬など打っていない。
ベッツィー:ちがうわ、私が言ってるのは矛盾のところ、あなたの。

 

「矛盾」というのがキーワード。確かにトラヴィスの言動・感情は矛盾だらけ。

例えば現にそのあと、トラヴィスはベッツィーをポルノ映画に連れていき(トラヴィスにはまったく悪気なし)、ベッツィーは気分を害して連絡を絶ってしまう。トラヴィスは「彼女も冷たい人間だった」と吐き捨てる。いやいや、最初のデートで「気品ある女性」をポルノ映画に連れてっといて「冷たい人間だ」と責めるのはちがうでしょと思うけれど、トラヴィスの心の中では筋が通っているみたい。

 

その後、トラヴィスは数え切れない花束をベッツィーに送るが送り返される。

 

そうこうしてる間に、大人から逃げようとしているアイリスと出会う。アイリスは無理やり連れていかれた。その様子からアイリスが娼婦だろうことは見て取れた。そのことへトラヴィスの関心が向いていく。別の場面でトラヴィスは汚れたニューヨークの街に我慢できないから、なにもかもキレイに一掃したいと言っている。

 

シーンご紹介。

 

新たな目標を見出したトラヴィス↓

 

 

 

ロバート・デ・ニーロの笑顔はどんなときも謎めいている↓

 

スポーツをつてにアイリスに会いにいくトラヴィス。スポーツがトラヴィスのことを「まともじゃない」と表現する箇所がある。トラヴィスは自分のことをそのように言われ意外・心外そうにする。自覚がない。スポーツは確信をもってうなずく。スポーツの人間を見る目はかなり確かと思う。「精神的外傷か肉体的外傷かが原因で一連の行動を起こす人間の映画」として観てみることにした、そのヒントになったシーン↓

 

やっぱり印象的なスポーツとアイリスのこのシーン↓

 

やっぱイカれてる。いや、むしろまとも過ぎるのか↓

 

 

分からないけれど見ごたえ十分。バイオレンス苦手な人も観てほしい。