あの人はさざ波のような人でした…
  
  
寄せては返す波のように気紛れな、あの人の心に
砂のように脆い私の心は掠め取られ

足元の砂をとられてしまえば
真っすぐに立つこともままならず

不安定な状態はやがてバランスを崩して倒れこむ

けれど倒れた先に
あの人の姿はなく
すがりつくものもなければ立ち上がる力もなく

このまま満ち潮になって
あの人にのみこまれてしまえばいいのにと
そんな考えが渦を巻いて

とうに立ち上がることを諦めた私は
引いていく波を見つめながら

次の満ち潮はいつかと
そればかりを待ち望み

やがて砂にのまれた両足は朽ちて
もう、自力ではどうにもならなくなるのです

そうなる前に
海の一部となって
あの人にのまれてしまいたい

そんな風にさえ考えてしまうのです

いつの日か
両足で立ち上がれる日がくることを願って

今日もまた
引いていく波を
ただ見つめるしかできないのでした