これを見ると、父から暴力を受けたとして児相に相談した娘が、ここまで大事になったことに戸惑い、事態の沈静化を望んでいることがうかがえる。

長女は2019年の阿部の現役引退時には、他のきょうだいとともに阿部に花束を渡してグラウンドを一周した。

家族関係が良好に見える場面もあったのだ。

家庭内のトラブルが、暴力を受けたとして相談した娘や家族が望まない結果になり、メディアが殺到するような大事件に発展したことに驚愕している可能性もある。

今季は橋上秀樹コーチが「代行」として最後まで采配を執るという。

独立リーグ時代の新潟アルビレックスBCでも指揮官を務めた苦労人だ。

意外にチームはまとまるのではないか。

■今回のトラブルが象徴すること

これは「今」という時代の「怖さ」を象徴するような事件だと思う。

1つには、人間関係のトラブルでも、ひとたびメディアに乗ってしまえば、人生を変えてしまうような「大事」になってしまう。

最近でも、タレントが他の芸人を「嫌い」と言った事件が大事になって、タレントが番組を降板する騒ぎになっている。

特にネガティブな話になると「悪事千里を走る」であっという間に情報が広がり、当事者の責任を糾弾する声があがってしまう。

特に有名人は、その言動には細心の注意を払わなければならない。

もう1つは安易に「ChatGPT」などAIに判断をゆだねることの「怖さ」だ。

もちろん、暴力を受けたと感じた人が外部に助けを求めること自体は否定されるべきではない。

ただ、AIは利用者の事情を十分に把握しないまま、「一般論」に沿った答えを返す。

その答えが現実の家族関係や社会的影響にどう波及するかまでは、十分に引き受けてくれない。

DVなど暴力を排除すべきであることは当然の話として、この事件が野球界、そしてメディアの「リテラシーの向上」のきっかけになればよいと思う。

広尾 晃 :ライター