お父さんに喜ばれたもの




父が亡くなったとき、

当然

遺品の整理をする。



ガラクタをたくさん持っている人だったが、

価値あるものも

少しは持っている人だった。



その、ガラクタではない

引き出しに、

見覚えのある丸いものがあった。



青と黄色の

紙粘土で作られた

キーホルダーでもないが、

ちょっと

それっぽく針金で


ぶら下げられるようになっているもの。



そう。


それは

わたしが幼稚園のとき、

父の日に作った

紙粘土作品だった。



そのとき、

久しぶりに見た。


父が大切にしていたもの。



わたしが初めて作って

初めて父の日に

あげたものだったのかもしれない。



泣いた。



わたしは

父に愛されていた。



ずっと、

父が亡くなるまで。




涙が止まらなかった。




その紙粘土作品は、

いまでも、

実家の父の引き出しに入っている。