離婚をすることになった一組の夫婦がいました。
きっかけは妻の言葉。
「私は自分の言うことを全部聞いてくれる人じゃないと続かないのがわかった。自分に対して反対や意見を言ってほしくない。だから私は結婚に向かないと思う。他の人と再婚もないと思う」
その言葉を妻に睨まれながら、呆然としながら聞く夫。
交際期間3年。結婚期間1年半。
喧嘩は結婚してからするようになったみたいでした。
今まで喧嘩をしたことがなかった夫は、言葉を選びながら話し合いをしようとするのですが、妻には届かない。妻は徐々に感情が高ぶっていきます。
やがて論点がずれて、あの時のあれがあったから今こうなってる、誰が悪いの?となってしまいます。
夫は妻より4歳年上でした。
自分の器が小さいからこんな喧嘩が起こってしまうんだ。だから自分が大人にならないと。
夫はそう思うことで自分を納得させ始めました。
喧嘩を重ねるにつれて、喧嘩の長引く時間は減ってきました。
夫は少しホッとしていました。
このままいけば喧嘩はほとんど無くなるかもしれない。
もっと楽しい夫婦生活が送れるかもしれない。
そう思っていた矢先の出来事。
喧嘩の時とは違う、恨みが込もったような目で夫を睨んでいる妻の話を聞きながら、夫は今までの喧嘩のことを考えていました。
あの喧嘩は何だったのだろう。
意味があったのだろうか。
一度でも喧嘩をしてはいけなかったのだろうか。
最初から自分の器がもっと大きければ、こんなことにはならなかったのだろうか。
夫の頭の中で考えが巡ります。
そして、ある情景が浮かんできました。
この夫婦が楽しく生活しているところ。楽しく生活しているように見えるところ。
夫が妻の機嫌を伺っているところ。夫が妻に謝っているところ。
妻から何を言われても夫が笑って受け入れているところ。
子供が生まれて、妻がイライラしてるところ。
妻が子供にイライラをぶつけるところ。
子供が泣くところ…
楽しいところがない。何もない。何も幸せがない。
結婚ってなんだろう。離婚ってなんだろう。
別れよう。
別れたあとの辛さは想像できないけど、あの何もない生活よりは幾分も楽しくなるだろう。
別れよう。
呆然としていた夫に生気が戻ってきました。
夫は妻に言いました。
「別れましょう」
離婚の手続きが進む中、夫は自分が恵まれていることに気づきました。
近くに愚痴を聞いてくれる友人、同僚、先輩がいました。
余りにも大きな支えになってくれました。
ただ家族には変な意地が出て愚痴は言えなかったようです。
そして、妻の両親の
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
涙を流しながらの言葉に、これはどうしようもなかったことなんだ、と夫は心が救われたそうです。
一人となった男は、今はなかなか元気にやっているようです。
新しい家、新しい家具、新しい環境で、以前と変わらない友人達と今日も飲みに行くとか行かないとか。



