社会人予備校の松本です。
昨日の続きです。
ピンポーンとインターホンが鳴りました。
お母さんは打ち合わせ通り詐欺営業マンを奥の部屋へ招き入れました。
フスマを開けると、そこに私が仁王立ち。
「どういう事か分かるな?」
相手も気不味い顔をしましたが直ぐには認めません。
「えっどういう事ですか?」
「何や、しら切るんか?」
「お前、ここのお客さんところで何したんや?」
「水漏れしてたんで工事したんですよ」
「それより、あなたは誰ですか?」
まだ、強気に出てきます。
「住マイルワンの松本や。お前うちを知らんのか?」
「知りません。それがどうしたんですか?」
「水漏れを直したって言ってるけど、お前ペンキ塗っただけやんけ」
「契約書も書いてへんねんから、お前が詐欺を認めへんかったとしても、立派な訪問販売法違反やぞ」
詐欺営業マンはめんどくさそうな顔をして、
「分かりました、じゃあお金は要りません」
「おいおい、何開き直ってんねん?」
「お前、自分が置かれてる立場分かってないな」
「俺は被害者ちゃうけど、お客さんは被害者やから、警察に騙されたって電話したら、お前詐欺の容疑で逮捕されんねんで」
詐欺営業マンの顔色が少し変わりました。
「いや、それは勘弁して下さい」
「もう来ないんで」
「もう来ないのは当たり前や」
「それを証明せぇ」
「どうすれば良いですか?」
「ここに、今回お前がどういう経緯で訪問して、詐欺行為を働いたか書け」
「それを認めた上でもう二度としません、と反省文を書け」
「そしたら、警察には言わんといてもらえますか?」
「それは、お前の態度次第や」
その詐欺営業マンは紙に書き始めました。
免許証を見せるようにいうと、鹿児島出身でした。
鹿児島から愛知県まで来たそうです。
反省文を書いてる最中、お客様に警察に電話してもらいました。
反省文を書き終えた頃には警察が到着。
車4台10人でやって来ました。
部屋へ私服警官が入ってくると、
「えっ、警察に言わないって言ったじゃないですか?」
「詐欺師が人信用してどないすんねん?お前散々人を騙して来たやろ。自業自得や」
肩を落として警察に連れて行かれました。
後日、参考人として私は警察署に呼ばれました。
当時の状況や工事の内容など、色々聞かれました。
2回警察に呼ばれて行きました。
警察に参考人として呼ばれると、交通費程度のお金が貰えるんですね。
1回4,000円、合計8,000円もらいました。
2回目の聴取の時、担当の刑事さんから、
「松本さん、申し訳ない」
「起訴は無理かも知れへん」
「えっどういう事ですか?」
「詐欺での立件難しいんですよ」
今回は、全く無意味な工事でも、一応ペンキを塗っている事で、
詐欺では無く、工事不備に当たるらしい。
これだと詐欺での立件は難しく、
何もしていないのにお金を受け取った場合は、詐欺に当たるらしい。
あの詐欺営業マンは、20日間の勾留満期を迎えて釈放される事になった。
担当の刑事さんは何度も私に謝っていたが、
あの詐欺営業マンも20日間も拘置所に勾留されれば懲りたはずだ。
風呂も5日に1回程度しか入れないし、運動も1日30分程度しか出来ない。
聴取で毎日同じ事を何度も聞かれる。
幸いお客様も被害は受けなかった。
この当時の私には良い経験になりました。
やっぱり、経験に勝る勉強はないですね。