photo by natsu



幸せのレモンミント水②

翌日航と会う日は、あいにく雨だった。
さて、どうしたものか。
元々は海で会う約束わしていた航と私。
でもこの雨風では、それは不可能に近い。

すると、航から着信がある。
「まさかの雨だな」
航は笑い声が、携帯越しに耳元へと届く。
不思議。
それだけで私は明るい気分になる。
「ホント、まさかの雨」
思わず笑いながら答えると、航はさらりと、
「結衣、よかったらうちに遊びにこない?」
と言った。
「え?航の家に?」
「うんり兄貴たちもみんな出ていっちゃったしさ、
今日は両親もいないし、気軽においでよ」

その言葉に私は知的で紳士な
航の2人のお兄さんと、
優しくていつもニコニコ迎え出てくれる
航のご両親を、ふと思う。

「なんだー。お会いしたかったなぁ」
「いいよ。打ち合わせには
いない方が集中出来るし」 

打ち合わせ。

私はその言葉に思わず苦笑する。
全く私たちはどうして
出会った中3の頃と変わりがないのだろう?
でも、それがまた
居心地いいのも確かなのだ。

うちまで迎えにきてくれた
航の車に乗せてもらい、
私は久しぶりに
航の家にお邪魔する。
ほぼ海に面した家からは、
この雨風に煽られる海がよく見えた。

「やっぱり荒れてるね」
そう言いながら私は、
家で作ってきたレモンミント水を航に渡す。

「お、何これ?おしゃれ!」
「レモンミント水よ。私の毎夏の定番」
「あ!これが噂の?どれどれ」

航は嬉しそうにカップに取り分け、
私の分も丁寧に入れてくれる。
そして、
「いただきまーす!」
そう言って一口飲むと、
顔を輝かせた。
「これ、美味い!
ミントは雪子ちゃんが栽培しているっていう?」
「そうそう。完全無農薬」
私たちは顔を見合わせて笑う。
そして、やっぱりこれは
幸せのレモンミント水なんだ、
と心でそっと呟く。
どんな時にも誰でも笑顔にしてしまう。
でも、みんなの優しさや明るさ、
というスパイスが入って、
この味になるのだから、
実は一人一人、
少しずつ風味が違ったりして。

私たちは中学時代の話に
はなを咲かせながら、
そして、続いて
レストランBlueの計画へと、
話を進め始めた