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幸せのレモンミント水

 

「あ、確かにその話、私も聞いたわ!」


レストランBlueで、

航たちや大内さんと話した

翌日のお昼過ぎ、

私の家に遊びに来た紗貴子は、

楽しそうに笑いながらそう言った。


「えっ?それで紗希貴子は水葉に

なんで言ったの?」


桜子は紗貴子の方に、

ぐっと身を乗り出す。

私とあかりも、

興味深い思いを隠さず、

紗貴子の方に目を向けた。


私の家にはいつもの女子メンバー、

桜子、紗貴子、あかり、雪子が集まっていた。

そこで桜子と私が、

例のレストランBlueでの出来事を

みんなに話したのだった。


「うん?私は賛成したわよ。

だって勉強ばかりじゃ煮詰まるだろうし、

研修が始まったら、

そういう機会もなかなかないじゃない?」


紗貴子は昔から変わらない

絹のようにサラリとした長い髪を

揺らしながら笑う。


「だから、この夏がチャンスかな?

って思ったから、

いい話だよねって水葉と話してたわ」


「なるほどね」


あかりは頷く。

私は私で紗貴子の意見を聞いて、

ちょっとほっとしたところがある。

なんていっても、

私が調子に乗って、

防波堤でウクレレを弾いてしまったから、

こんな話になってしまったのではないか?

と責任を感じていたからだ。


「それを聞いて安心したわ」


私はレモンミント水を

みんなに手渡しながら言った。


「航も潮弥もいきなり言い出すものだから、

すっかり水葉を巻き込んでしまったのかも、

って心配になっていたところだった」


「あ、出た!スッキリレモンミント水!

やったー!」


桜子は嬉しそうに、

グラスを手に取って言った。


「私もこれ、好き。

幸せな気持ちになる。

結衣の夏の定番よね」


「そうそう!癒される!

私も中学生の時から、毎年楽しみなんだよね」


紗貴子とあかりも、

笑顔でグラスを受け取る。


「私の定番というか、

元々は雪子の育てたミントを

貰ったところから始まったのよね?」


私はそう言って雪子を見る。

すると雪子は、

照れたようににっこり笑い、


「ありがとう。

でもこれは結衣ちゃんオリジナルよ」


と言って、そっとグラスを

てのひらで包み込んだ。


レモンミント水か。


みんなが美味しそうに

飲んでくれるのを見つめながら、

私はそっと心で呟く。


中3の頃から毎年夏になると、

雪子からミントを分けてもらって、

作るようになったレモンミント水。


だけど、航には飲ませてあげたことは

今まで一度もなかったな。

今更だけど、

そんなことに気がついた。


明日は航と会う予定だ。

このレモンミント水を持って行ってあげよう。

私はふとそんなことを思いつく。


「水葉の事は安心したよ」


西に傾いた光を受けながら、

桜子が私にニッと笑いかける。


「明日、航と打ち合わせするんでしょ?」

「あ、うん」

「水葉の状況がわかれば、

私も安心したよ!だから結衣、

打ち合わせ、宜しくね!」


こうなれば、せっかくの機会だし、

しっかりと打ち合わせして、

構成を考えてみよう。


「わかったわ。任せて」


私は微笑み、

桜子の言葉にしっかりと頷いてみせた。



❁今日も一日お疲れ様でした。

とても爽やかな気候だった1日でした。

明日も皆様にとって

秋晴れのような

爽やかな1日になりますように❁