「人と同じようにできない自分が嫌で、苦しいです。」
誰かと同じようにできない。
みんなができていることが、自分にはできない。
カウンセリングやメッセージ、公演後のアンケートで、
これまで何度も同じような言葉を受け取ってきました。
「もっと頑張らなければ。」
「もっと強くならなければ。」
そうやって、自分を追い詰めてしまう。
その苦しさは、わたしにもよく分かります。
わたしも、ずっとそう思って生きてきました。
とくに、看護師として働いていた頃です。
痛みを知った人間が、看護の世界を変えたい。
苦しんでいる患者さんの癒やしになりたい。
そんな思いを胸に、30歳を過ぎてから看護師になりました。
でも、現実は思い描いていたものとは違いました。
バセドウ病を抱えながら慣れない夜勤をこなし、
気力も体力も思うようについていかない。
それでも、
「完璧でなければならない。」
そう思っていました。
ひと回り年下の同期たちは、次々と仕事を覚えていく。
それなのに、わたしだけがついていけない。
焦りばかりが大きくなっていきました。
本当は、患者さん一人ひとりの話を聞きたかった。
不安な気持ちに寄り添い、手を握り、安心できる言葉をかけたかった。
でも現実は、目の前の仕事をこなすだけで精一杯でした。
「もっと早く。」
「そんなことをしていたら仕事が終わらない。」
そんな空気の中で、
「こんな看護はおかしい。」
そう思っても、何も言えませんでした。
仕事を教えてもらえなくなるのが怖かったからです。
いじめられるのが怖かったからです。
そして、患者さんが亡くなるたびに、
もっと何かできたんじゃないか。
もっと優しい言葉をかけられたんじゃないか。
家に帰っても涙が止まらない日が続きました。
そんなある日、小さなミスをしました。
命に関わる事故ではありません。
でも、その日から全てが変わりました。
家に帰っても、
「何か失敗していないだろうか。」
不安になり、病院へ戻って確認したくなる。
毎朝、
「今日は絶対にミスをしない。」
そう心に誓い、何度も何度も確認する。
それでも、また小さなミスをする。
そのたびに、
「こんなわたしじゃダメだ。」
「人に迷惑をかけるだけだ。」
そうやって、自分を責め続けました。
怖い。
怖い。
怖い。
患者さんに寄り添いたいという思いより、
失敗する恐怖の方が大きくなってしまいました。
そして最後に、
「患者さんを殺す前に、辞めさせてください。」
泣きながら、師長さんにお願いしました。
最後は、自分の恐怖に勝つことができませんでした。
病院を辞めると決めたあと、甲状腺がんが見つかりました。
わたしは、怖いより先に、ホッとしました。
「これで、わたしはこんなに頑張ったと言える。」
そう思ったのです。
看護師を続けられなかったことを、ずっと自分の弱さだと思っていました。
だから、がんが見つかったことで初めて、
「怠けていたわけじゃなかった。」
「本当にしんどかったんだ。」
そう、自分に言えるような気がしました。
病気になって、ようやく休んでもいいと思えた。
病気になって、ようやく自分を責めなくてもいいと思えた。
今振り返ると、
あの頃のわたしは、心のどこかで、
「病気になりたい。」
そう願っていたのかもしれません。
でも、誰にもこんなふうになってほしくありません。
病気になるまで頑張らなくていい。
倒れるまで、自分の苦しさを証明しなくていい。
仕事が思うようにできなくても。
誰かと同じ速さで進めなくても。
その場所に居続けられなくても。
それだけで、あなたの価値がなくなるわけではありません。
「もう無理です。」
そう言うことも、
その場所を離れることも、
自分を守るために必要な選択です。
あの頃のわたしは、がんが見つかって初めて、
「よく頑張ったね。」
と、自分に言うことができました。
でも本当は、
病気になる前に言ってあげたかった。
もう十分頑張ったよ。
これ以上、自分を責めなくていいよ、と。
今、同じように苦しんでいる人へ。
あなたの苦しさは、
病名がつかなくても、本物です。
そして、
誰かと同じようにできなくても、
あなたの価値は変わりません。
人は、
何かができるから尊いのではありません。
生きている、その存在そのものが尊い。
これは、今のわたしが、
あの頃のわたしに伝えたい言葉でもあります。
そして、今この文章を読んでくださっている、あなたにも伝えたい言葉です。
あなたのいのちは、そのままで尊い。
どうか、自分を大切にしてください。
今日だけは、
自分を責める代わりに、
「よく頑張ってるね。」
そう、自分に声をかけてあげてください。
今苦しんでいる人の心が、
少しでも軽くなりますように。
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