1.浅い振り返りを深い振り返りにつなげる
今年の終わりと学期の終わりを同時に迎える学校も多い。マスコミでも今年を振り返っての重大事件や、今年を象徴する漢字などが連日報道されている。振り返りは学習の終末にだけあるわけではない。しかし、学習の終末に置かれる振り返り(省察的学習)は、学習過程を総括しつつ、次の学びへの展望をつなぐ効果も持っている。
省察的学習は【三つの深さ】を持っている。①「陳述・再生的省察」②「構築・再構成的省察」③「創造・創造的省察」の三つがそれだ。①~③に向かって浅い振り返りから深い振り返りになる傾向がある。それぞれのレベルが持つ学習効果や特徴については拙著に詳しい。そして、学期末や学年末は「構成的→創造的」なレベルを含む振り返りに適した時期だと言えるだろう。
2.「深い振り返り」には適したタイミングがある
「振り返り学習」を毎時間ごとに行うと時間不足になるという声も聞く。だからこそ、単元や学期の中で軽重をつけた振り返り学習のデザインが必要になる。その場の判断によって行う振り返りも必要だが。だが、強く押さえる、深く押さえる、確かに考えさせたい、学びの実感させたいという重い振り返りは予め計画して実行したいものだ。
また、宿題として「振り返り課題」を出すということもできる。授業と同様の知識や問題を反復させる①の振り返りだけでなく、記述型の③の振り返りも時々は書かせてみたい。その記述は、子供が自分自身の学びとつながりなおす効果だけでなく、保護者と共有することで親子の対話材料にもなる。「深い振り返り」は『深い学び』を支える重要な要素を持っている。
3.振り返り学習の実践
ここまで書いたところで、研修でお世話になっているH小学校の先生から、国語の振り返り実践の様子が送られてきた。6学年の授業で「自分にとって、今学期の国語は何だったのか?」を作文として書く「省察的学習」である。作文を書く条件は「学習によって得た成長」と「どんなときに役立つか」という二つの点に必ず触れるということだ。以下は子どもの振り返りの一部。
🌱「アクティブ・ラーニングという新たな教育の視点からスピーチをした。使い慣れない言葉を使って沢山スピーチをしたので発表する力がさらについたと思います」
🌱「二学期の成果は語彙が増えて書ける漢字が増えたと。この作文を書いている途中で実感しています。そしてもっと書ける漢字の範囲を増やしていきたいと思っています。」
🌱「国語の授業が受験に通用することが分かった。それに、友達との交流にも有効である。いかに短く、わかりやすく伝えるか。受験だけでなく、友達との交流も深めることができる。」
などなど・・・・。
こうした振り返りー省察的学習を打つか否かで子供の「学んだ実感」は前とは違ってくるのではないか。後ろ向きの振り返りだけでなく、期待と見通しを創造する「前向きの振り返り」が子供の表現の中に含まれている。
4.そして、わが身を振り返る
自分で今年を振り返ると「スピーチの能力」も伸びていない。覚えた漢字の数よりも忘れた漢字の方が多い気がする。友達との交流は広まったが、深まったかどうか自信はない。H小学校の6年生に完敗である。
こうした学期ごとのまとめを学年末にもう一度振り返ってみる機会を与えると、より効果的な省察的学習になる。振り返りっぱなしで振り返りをしまい込んでおくだけではもったいない。
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