11月末のチトワン出張時。平野の向こうの山のそのまた向こうに白い雪をかぶったヒマラヤの山々がはっきりと見えたときにはびっくりした。南北に狭い地形であるのは確かだし、更に7~8,000メートル級の山と言えば相当高いものではあるが、タライからヒマラヤが見えるとは想像したこともなかった。


今朝もカトマンズは快晴。朝から飛行機のプロペラの音が聞こえている。観光客を乗せた遊覧飛行でカトマンズの空港は大忙しなのだろう。そういう意味ではいたって平和なカトマンズである。


しかし、最近のガソリン、灯油、調理用ガスの不足は深刻で、生活にも影をおとしている。道行く車の量も減りつつあるような気がするし、短い距離では乗車を拒否(もしくは2,3倍の値段をふっかけてくる)されたり、乗り合いバスは少しでも売上を上げようとしてか、これまでに増してギュウ詰めで客を乗せているし、毎日利用する身としてはたまったものではない。ガソリン不足自体は去年から断続的に続いており、その度に交通手段を確保するエネルギーを使うのにも疲れてしまい、最近とうとう自転車(?段ギア付き中国製マウンテンバイク)を購入した。


坂道の多いカトマンズ(厳密には事務所も自宅もパタン市内であるが)のこと、最初の頃は乗っているのと押しているのとどっちが長いか、という状態だったが、最近はほとんど乗っていられるようになった。しかし交通マナーが悪いというよりルールがないに等しいネパールでは、危険なことも多い。従って、「外人ですよー、ひいたら大変なことになるよー」と知らしめるべく、自転車に乗るときは外人っぽい服装をするように心掛けているが、どれだけ効果があるものやら。(それと自宅と事務所の往復程度にしか使っていないので、自衛手段としてもどれだけのものかという疑問もある)


しかも、今朝の新聞では今日から停電時間が週6時間となると書かれていた。寒くて暗い季節がやってきた。


(カトマンズ駐在員 藤崎文子)


サイクロン救援の努力が沿岸部の被災地で続けられているさなか、首都ダッカの中心部で12月8日に取り壊し中のビル内部が崩壊、少なくとも13人の作業員が死亡するという事故がありました。


事故があったのはRangs Bhaban(ラングス・ボボン)、ダッカに住んでいる人なら誰もが知っている有名な(悪名高い)建物です。その昔ハイジャック事件があった旧空港横の交通量の多いT字路に建つ22階建てのビルで、長い間揉めた末に違法建築のため6階以上の階を取り壊すべしという判決が出、今年8月上旬から取り壊し作業が始まっていました。


首都での高層ビルの取り壊しというのはおそらくバングラデシュでは史上初のことで、しかも6階までは残すという中途半端な判決が出たため、いったいどうやって取り壊すのか誰もが気になっていました。結局安い人件費で雇った大勢の作業員による手作業で取り壊しが進んでおり、私もしょっちゅうこのビルの前を通るので、そのたびに見上げながら少しずつ小さくなっているビルを確認していました。


外側から見ると中の様子はよくわからず、作業はずいぶんゆっくり進んでいるように見えていたのですが、ビル内部はすでにほぼ空洞になっていたようです。8日の土曜日の夜、内部で大きな崩壊事故が起き、何人もの作業員が中に閉じ込められました。今朝の新聞によると、これまでに5人の遺体が運び出されましたが、いまだに少なくとも8人の遺体が中に放置されています。遺体回収作業も危険性が高いため、遅々として進まないらしいのです。


今日は事故が起きて既に9日目。帰らぬ父を探しに農村から出てきた息子が、ビルの中の高いところに自分が父にプレゼントしたルンギ(腰巻)を見つけ、あそこに父がいると号泣したというニュースなども伝えられ、人々は憤慨しています。ビル取り壊しの危険な作業を行っていた人々の多くは、今年二度の洪水に見舞われた農村部で食べていけなくなり、危険を承知で働きにきていた出稼ぎ農民でした。防護服も訓練もなく、腰巻姿でビル取り壊し作業をしていたのです。ビル取り壊しの責任者である首都開発公社(RAJUK)は死亡した作業員の家族に補償金として10万タカ(約17万円)を支給すると発表し、これはおそらくこの国ではかなり高いほうなのでしょうが、それにしても貧しい人々の命の値段の安さに暗然とします。


ビルの取り壊しのみならず、建築現場でも作業する人々は命綱もなくあまりにも無防備な姿で働いています。写真でしか見たことはありませんが、チッタゴン港での船舶解体現場で巨大船を手作業で取り壊す人々も同様です。事故があっても声を上げる力もない貧しい遺族は補償金をもらってあとは沈黙するしかない、という状況です。政府や企業が末端の作業員の安全と生命にも責任をもち、それができなければ罰せられる仕組みがつくられなければ、これからも多くの命が奪われるでしょう。


サイクロンという大きな自然災害の被害者救済のため、日夜懸命な努力を続けるバングラデシュ人たちが大勢いる一方で、ビル取り壊しという危険な仕事を二束三文で貧しい出稼ぎ者たちにやらせ、何日も遺体を放置して平気な人々もいる。いたたまれない思いがします。

(ダッカ駐在員 藤岡恵美子)


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今朝は冷え込みが一段と厳しかったようで、インターネットを見ると最低気温0度前後まで下がった様子。日本語を理解する人が少ないことを良いことに「さむーい!」と叫びながら出勤した。


スタッフによると、霧も出ず朝からすっきりと晴れているのは霜がおりるせいなのだとか。詳しいことは判らないけれど、地面の温度が下がって空気中の水分が凍ってしまうため霧が発生できないということなのかな?


写真は昨日フィールド訪問先(カブレ)で見た山の様子。混迷一方のネパール政治とは対照的に、最近は毎朝毎夕こんな感じですっきりと山が見えている。


(カトマンズ駐在員 藤崎文子)