いつもお世話になりありがとうございます。

今回は予防接種のお話です。

 

予防接種は、お子さんに対して、多くの病気の感染を守り、

感染したとしても重篤になることを防ぐという意味で

非常に有用なものです。ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンの

普及により、以前は多く見られた細菌性髄膜炎や敗血症が

激減し、死亡数や後遺症が大幅に減っています。ロタウイルスの

接種率が増えたことにより、ロタウイルス胃腸炎で入院する

事が減り、脳炎や心筋炎などでの死亡率も減少しています。

他にも、4種混合で百日咳が、日本脳炎ワクチンで日本脳炎が予防できるなど

多くの病気から身を守る事が出来る優れた予防法です。

 

しかも、多数の方が一斉にワクチンを接種することで、

社会全体から、病気の発生をなくし、病気を根絶する事も可能となります。

MRワクチンの普及で、麻疹(はしか)や風疹の流行がほとんど見られなくなりました。

BCGで結核の流行も防げていると言えます。水痘ワクチンの定期接種化によって

水痘(水ぼうそう)の流行もかなり見られなくなりました。

 

このように予防接種の制度は、個人だけでなく、社会全体で病気の予防をする事が

可能となる非常に有用なシステムと言えます。

 

しかし中には、様々な理由で、予防接種に抵抗を感じ、一切のワクチンを拒否される方が

おられます。

 

・沢山あってかわいそう・・

・異物を体内に入れるのは怖い・・

・アレルギーなど副作用が不安・・

・宗教上の理由

 

宗教上の理由は仕方ない部分があるのですが、それ以外は、不安と感染症の危険を

天秤にかけてもらって、ちゃんと接種をされることを選択していただきたいと思います。

 

そして未だに根強く気にされているのが「予防接種が発達障害の原因になっている」という

理由です。下のリンク先のように、昔、MMRワクチン(麻疹、おたふく、風疹の混合ワクチン)が

発達障害の原因になるとか、ワクチンに含まれる防腐剤であるチメロサールも影響するなどの

報告がありました。

 

これらの報告は、仮説でしかなく、しかもその後もそれを裏付ける報告はありません。

逆に、チメロサールは発達障害の原因ではないと結論付ける論文も複数報告されています。

そして、念のためチロメサールを排除したにも関わらず、発達障害の発生率は上昇し続けているという

報告もあります。仮に、わずかな確率でも、予防接種の影響で発達障害が後天的に発生するという事が

あったとして、ではそれが本当に予防接種の影響で発達障害になったのか、遺伝など先天的な事が

原因だったのか、どうやって区別出来ますか??普通はそのような状況になった場合、

遺伝的な原因の方が圧倒的に確率が高いので、予防接種が原因ではなく先天的な原因ではないかと

思うのが自然ではないかと考えます。

 

以上から「予防接種は発達障害の原因ではない」という結論になっています。

 

それを今でも怪しい報告ばかりを強調し、不安を煽るような情報が流れている事、

そしてその情報だけを信じてしまわれる方がいる事は本当に残念であります・・。

 

打たない権利も確かにはあると思います。しかし、下のリンク先の報告のように、

ワクチンを打たなかった場合、打った人よりも、百日咳は23倍、水痘は8.6倍、

肺炎球菌(重篤になる細菌性髄膜炎や敗血症の原因となる細菌)は6.5倍罹りやすくなるという

報告があります。アメリカミネソタ州では、2008年に、インフルエンザ桿菌(ヒブワクチンで

予防できる、肺炎球菌と同じような細菌)の重篤例が5例あり、そのうちの3例は、親が

予防接種を拒否しワクチンを打っていなかったというデータもあります(1名は死亡)。

 

そして、BCGで予防出来る結核や、MRで予防出来る麻疹は、ご承知の通り、

発症すると死亡する危険性がある病気です。そして感染力が強く、1人の感染から

全国的な流行を広めてしまう危険性もあります。更には、風疹に関しては、

もし妊婦さんが感染してしまうと、産まれてきた赤ちゃんが、先天的に白内障、

難聴、心疾患を持ってしまうリスクが高くなります。

 

以上、打たない権利もあるのですが、打たなかった場合のリスクは、上記のように

計り知れないものがあります。後になって、このような事が起こり、やっぱり

接種しておけば良かった・・と後悔するよりは、しっかり接種され、お子さんの

生命や健康を守ってあげていただくようにして欲しいと願っています。

 

もしもそれでもやはり予防接種の抵抗が強く、打たないという事を選ばれるのであれば

仕方ないと思います。もしも・・もしも可能であれば、せめて、MR(麻疹、風疹)と

BCG(結核)のワクチンだけは接種していただけたらと希望します。

チメロサールが心配という方もおられますが、生ワクチンには、チメロサールは

入っていません。先述のように、麻疹、風疹、結核は、罹った時のリスクや、流行を

広めてしまう事が非常に懸念されます。どうぞ御検討ください。

 

ちなみに、チメロサールは、エチル水銀という成分で、「水銀」という単語に拒否反応を

される方が多いのですが、水俣病を起こした物質は、メチル水銀であり全く違う物質になります。

エチル水銀であるチメロサールは、安全性には問題がないと言われていますので、

こちらも合わせて安心していただけたらと思います。

 

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/23-小児の健康上の問題/小児の予防接種/小児期の予防接種

 

MSDマニュアル 小児期の予防接種の解説 (MSD社より許可を得て掲載)