ずっと読書をしていなくて、危機感と焦燥感と、だらけている自分への嫌悪を抱いていました。仕事、家事、雑事…やらなければならないことに追われ(本当にやりたいなら何とかやり繰りするくせに)できないことに安易に理由をあてがって自分に言い訳していました。そんなダメsmileに「いや読みたい、読もう!」と思わせてくれたのがミステリー小説
『鏡の国』(岡崎琢磨、PHP研究所、2023年)
身体醜形障害、相貌失認という聞き慣れない病気と、作中作を介して2つの時代を行き来する設定。手元に届くまで勝手に想像していた文庫本とは裏腹に、480頁を超える立派なボリューム。久しぶりに本を手にする身には敷居が高かったですが、読み始めたら面白さに引き込まれ、あっという間にお話の世界に浸ることができました。あちこちに散りばめられた貴重な破片たちを拾い上げ、相関して幾重にも重なる伏線に翻弄されながら読むのは、ミステリーが与えてくれる幸せな時間でした。
この本のもう1つの面白さは、作中作がある構造によって、登場人物達のやり取りからミステリー小説の読み方、楽しみ方を教えてもらえるような感覚になれることです。
この本の存在を教えてくれた本好きな我がモチベーター氏に改めて感謝です。
内容とは別に衝撃だったのが、本編を読み始めてから何気なく目にした本の帯"『珈琲店タレーランの事件簿』の著者"のひと言。何度お名前を見ても"タレーラン"と同じ著者であることを全く思い出せていませんでした。昔はそれなりに記憶力が良かったのに…ショックでした。でも内容の面白さに加え言い回しや言葉のチョイスがとても好きなのは2作品共通で、後から妙に納得しました。
『珈琲店タレーランの事件簿』は、8年前、高校生だった娘に勧められて読んだ岡崎琢磨さんのデビュー作。
