前回は彼が気管切開を決意したこと、私が落ち込んでしまい眠れなくなり心身共に崩れていく…という内容でちょっと重いお話になってしまいましたね。

今回はいよいよ手術のお話です。

 

 

  落ち込んで立ち止まるよりとことん向き合おう

 

いよいよ気管切開の手術日が具体的に。

病院と話をする中で入院中の付き添いが可能であることが分かりました。

時期はコロナ禍真っ只中の2021年春。

本来はお見舞いも付き添いも禁止ですが、いくら大病院でも難病患者に対して細やかなケアを行う余裕がないという本音もあったかと思います。

 

彼は家族に付き添いを頼むつもりだったようですが、思い切って有給を取り私も付き添いたいと伝えました。

手術後は生活や介護方法が変わるだろし、学ぶ良い機会。

不安だらけで落ち込んだままより今できることを精一杯やりたいと思ったからです。

 

お恥ずかしい話ですが、私の様子がおかしいことは周りの人も気付いていたと思います。

事情を話し、2〜3週間有給を取りたいという希望を伝えると上司も了承してくれました。

社内に家族の事情で長期休暇を取った方が何人かおられたこともあり、比較的受け入れていただきやすい土壌があったかと思いますが、私の状況に配慮してくださったことを心から感謝しています。

 

 

  入院、失う声を録音した夜

 

いよいよ入院当日。

荷造りで1番ややこしかったのがパソコン機材です。

パソコン本体、ベッド上に設置するモニター、モニターを支えるスタンド、視線入力装置、スピーカー、Wi-Fi、たくさんのコード、電源タップ…

家のセッティングを全部引っこ抜いて、必要なものをピックアップして、傷つかないようにバッグに詰める…それだけでもう疲れました笑

 

でもパソコンは絶対必要。

手術が終わったら発語は一切できないし、口文字もまだ実用レベルではない。

視線入力でパソコンの画面上に文字を入力した方が早いし、病院関係者ともコミュニケーションが取れやすい。

あとは重度訪問介護ヘルパーの求人も同時進行で進んでいたので、応募があれば即対応できるように。

 

着替えや機材などで大荷物となり、結局車を2,3?往復させて荷物を運びました。

 

付き添いは彼の家族が朝から夕方まで、私が夕方から朝まで担当することに。

コロナ禍の付き添いということで個室があてがわれました。

トイレが部屋の中にあるのが個人的に有り難かったです。

何故かというと、私が不安、緊張、ここ数ヶ月の睡眠不足で限界を迎えめちゃくちゃ体調が悪く、下痢が酷かったから。

今思えば付き添いできるコンディションじゃなかったと思いますが、何もできず離れていた方がもっとキツかったかもしれません。

 

翌日の朝から手術することが決まっていたので、その日の夜に彼の声を録音しました。

使用したアプリは「コエステーション」というもの。

声を覚えさせると入力した文章を読み上げてくれます。

彼の声を残しておきたい気持ちと、今後何かに使えないかな?という考えもありましたが、今のところ出番はないです。

あるとしたら私がたまに聞いてニヤニヤするくらい…

 

 

  いよいよ手術

 

その日の夜は全然眠れませんでした。

自分の声が出なくなり息も苦しくなる夢を見てうなされたのを覚えています。

しかし本人はいたって冷静。

朝からいつも通りの表情で緊張した様子もまったくなかったです。

変わったことがあるとすれば病室が寒いって愚痴ってたくらい。

さすが強靭メンタルの持ち主…

 

準備を終え、手術中に家族が待機する部屋に移動。

すりガラス越しにオペ室に向かう廊下が見えました。

彼が通るのを待ち構えて手を振りましたが、全然見えてなかったらしいです。

 

手術は1〜2時間くらいの予定だったはずが、3時間経っても戻って来ずかなりヤキモキしました。

4時間近く経った頃にようやく連絡がありましたが、何かあったんじゃないかと心配しながら足早に病室に戻りました。

 

病室に入るとすでに麻酔から目を覚まして意識がある状態。

手術は成功。特に異常なしと聞いて一安心。

 

一応共有しておこうと思い、手術中にヘルパー募集に1件応募があったからメールを返信したよ、と伝えるとすぐにパソコンを操作して確認し出しました。

さっき手術を終えたばかりで痛みもあるだろうに、行動がいつも通り過ぎて!

家族も私も安心を通り越し若干引いていたのは覚えています。もう笑うしかなかったです。

 

本人のメンタルはいたって平常運転でしたが、ぱっくり開いた首の穴がギチギチに縫われているのは痛々しかったです。

一応介護記録として残したかったので写真は撮りましたが、用事がない限り見返したくないです笑

 

続く