気管切開にまつわるお話。
ちょっと長くなりそうなのと、序盤は暗い内容になってしまうかと思いますが、今はとても幸せです!気管切開をして本当に良かったと思っています。
そんな想いが伝わるよう、丁寧にお話していきたいと思います。
気管切開を決断できずに時が過ぎ…
20代前半で発症し車椅子生活になるまではあっという間だったという彼。
幸いにもそこから進行は緩やかになり、20年以上経っても気管切開と胃ろうをせずに過ごせていました。
胃ろうだけでも作ろうかな、と思った時があったそうですが、今の呼吸状況だと気管切開をしないと手術に耐えられないと医師から言われてしまいます。
気管切開をすれば長く安定して生きられる可能性が高まりますが、その分家族の介護負担は増えます。
自然死を待つのか。
呼吸器を付けて生きるのか。
生きたところで特に目標もない、でも…。
決断を先延ばしにして日々を過ごしていたそうです。
私との出会い
闘病しつついくつか恋愛もしつつ(何気にモテるんですよね…)40歳を過ぎた頃、私と出会います。
出会った時から「この子と結婚できたらいいなぁ」と思ってくれていたとか…(ほんまかいな)
そして交際して2年が経った2020年の春。
婚約することになります。
婚約が気管切開を決断する一つのきっかけになったそうです。
彼は実家で家族にサポートしてもらいながら生活していましたが、私と二人暮らしをするなら完全他人介護の体制が必要だろうという話に。
気管切開+重度訪問介護のヘルパーを雇用することが直近の目標になりました。
手術のメリットと大きすぎるデメリット
手術をするメリットはたくさんあって。
まず一番大きいのは誤嚥を防げること。
冬場は喉の調子が悪くなり、車椅子に移ると途端にケホケホとむせることが増えていたけど、手術すればそれも無くなる。
そして食事も変化が期待できる。
ミキサー食をやめて固形物が摂れるようになるかもしれない。色んなものが食べれて栄養もとれるだろうし、何より楽しみが増える。
代わりに大きなデメリットがある。
声帯を失うことで声を出せなくなること。
自分のアイデンティティと、
コミュニケーションの方法を奪われる。
彼はメリットもデメリットも十分に考えて、長年熟考の末出した答えです。
多少の不安はあっても気持ちの揺らぎはなかったと思います。
問題は私の方が深く落ち込んでしまったことでした。
肥大する私の不安
付き合い始めよりは介護もパソコン無しのコミュニケーションも上手くなったけど、声が聞けるからこそ気付いてあげられることがあった。
一切声が出せなくなってしまったら…
私は彼がして欲しいことにどれだけ気付いてあげられるんだろう?
不安にさせたりしんどい思いをさせるんじゃないか。今だって上手くサポートできなくて歯痒い思いをさせることがあるのに。
彼からのサインに気付けずそれが命に直結することになったら?
そう考えると怖くてたまらない。
そんな思いが日を追うごとに心を支配していき、夜も眠れないようになっていきました。
睡眠が取れなくなると身も心もみるみる余裕が無くなっていったけど、それでも日々仕事はあるし、手術や重度訪問介護の準備は私の心を置いて進んでいく。
あらゆることを後ろ向きに捉えて、心配してくれる周りの人のことも信用できず、敵だらけだと感じるようになりました。
彼と結婚したいし、誰よりも力になりたい。
その思いに一点の曇りもなかったけど、不安な気持ちだけがどんどん大きくなって自分を追い詰めてしまっていました。
今振り返ると、心の内を誰かに相談すれば良かったし、一時的に薬に頼って少しでも眠れば良かった。でも、どん底まで落ちるとそんなことも考えられなくなるんですよね。
不調は体にもはっきり出るようになってしまい、顔の皮膚が少しでも刺激を受けると真っ赤に腫れ上がって殴られたような風貌になってしまったり、ストレスからくる耳鳴りや聴力の低下にも悩まされるようになっていました。
一番辛い時期だったかなと思います。
続く